・X社、譲渡制限株式を発行、非上場会社。
・株主Bが離婚し、妻Cに財産分与でX社の株式を譲渡した。
・妻Cは、財産分与で取得した株式を、既存株主Dに譲渡することとした。
・妻Cには、代理人弁護士Eがおり、取引の窓口となっている。
妻Cは一切、表に出てこない。
・弁護士Eと、X社の代表兼筆頭株主Aとは面識があり、
電話で話し合いをし、一連の取引そのものについては、実質承認決定済である。
(株主Bとの財産分与の譲渡承認請求について)
株主Bと妻Cとの財産分与による譲渡承認請求書がX社に届いたが、そこには、
「妻Cの代理人弁護士E」として、弁護士Eの記名押印だけであった。
譲渡承認請求書と併せて、離婚給付等契約公正証書の写しが送付されてきた。
Q1.株主Bからの株式取得後の譲渡承認請求は共同請求が原則かと思いますが、
公正証書の写しが、会社法施行規則24条1項2号にあたるということでしょうか?
(代理人弁護士である旨の証明について)
上記、一連の書類は全て、弁護士Eが用意しており、
「株主Bとの譲渡承認請求書」「株主Dへの譲渡承認請求書」「妻Cと株主Dとの株
式譲渡契約書」と、
送られてきたすべてにおいて、
「妻Cの代理人弁護士E」として、弁護士Eの記名押印だけしかない。
Q2.念のため弁護士Eが妻Cの代理人であるかどうかの証明たる何か(委任状な
ど)が欲しいのですが、
それらを頂くことは可能なのでしょうか?
法律的な義務があるのかないのか?義務が無くとも提供することが通例なのか?な
ど。
もし、証明たるものを頂けない場合、「書類の備え」として、何か代わりの術があれ
ば教えてください。
X社も株主Eも、株主Aの知り合いなので、まあ大丈夫だろう、という感じではいる
のですが、
ただ、一般のビジネスでは委任状もなく代理人を信用する事はないので、いかがなも
のかと。
(実際に依頼を出しているようですが、今現在、弁護士よりスルーされているとの
事。)
よろしくお願い致します。
>Q1.株主Bからの株式取得後の譲渡承認請求は共同請求が原則かと思いますが、
>公正証書の写しが、会社法施行規則24条1項2号にあたるということでしょうか?
公正証書(債務者の執行認諾文言付き)であったとしても、
会社法施行規則24条1項2号にいう
「確定判決と同一の効力を有するもの」とはいえず、
会社法施行規則24条1項2号により取得者の
単独請求が可能ということにはならない
というのが支配的な考え方です。
執行力があったとしても、確定判決の効力
の根幹である既判力(再度、同一の問題を
裁判で争うことができなくなる効力)
を「債務者の執行認諾文言付き公正証書」
は有しないからです。
ただし、
>「株主Dへの譲渡承認請求書」
こちらについては、譲渡人からの
請求として、妻C(またはその代理人E)
一方からの請求で良いです(会社法136条)。
なお、譲渡承認の請求についても、
代理権授与等は可能と考えられています。
公正証書内に、承認請求について、
株主Bが妻C(またはその代理人E)に対して、
承認請求をする権限を
与える旨の記載がある場合には、
単独でも(厳密には、株主Bを本人とする
妻C(またはその代理人E)の代理権
の行使として、共同申請ですが)が可能
ということになりますので、その点は
ご確認いただければと思います。
以下は、補足になります。
得意不得手の一般論として、
会社法のこの辺りの厳密な
理解は、弁護士の中でも
企業法務ではなく、一般
民事を中心に行なわれている
先生の場合、ただ承認請求すれば
良いという認識でおられる方も
相当数いらっしゃいます。
これまで、
取得者からの請求でも、
会社が認めて問題なかった
という経験からあまり厳密に考えずに
されているということもあるという実情も
あるかと思われます。
その弁護士さんがどのような
性格の方かは、測りかねますし、
年齢などにもよりますが、
業界として由々しきことではありますが、
上記の法的な説明を弁護士にされた場合、
頑なになる方が一定数いらっしゃいます。
>電話で話し合いをし、一連の取引そのものについては、
>実質承認決定済である。
ということですので、
単純にまずは、お願いベースとして
会社として、株主Bの印鑑付き
共同請求書をもらえないかという点を
ご確認いただくということも考えられた
方が良いかと思います。
あとは、会社として株主Bに連絡を
とり、譲渡承認請求をするということの
確認を取るという方策も無難な策
かと思われます。
2 Q2について
>Q2.念のため弁護士Eが妻Cの代理人であるかどうかの証明たる何か(委任状な
>ど)が欲しいのですが、
>それらを頂くことは可能なのでしょうか?
>法律的な義務があるのかないのか?義務が無くとも提供することが通例なのか?な
>ど。
単純に会社としては、
妻Cの代理人が本当に
権利行使をしているのか否か
を確認しなければ、承認請求
が適法になされているのかという
点を判断できませんので、
委任状の提出がなければ、
承認請求がなされたとは
判断できないという対応は
当然でしょう。
法律的な義務?という表現が
適切かはさておき、
会社として、委任状
なき承認請求は
譲渡承認請求として扱わない
という対応で、法的には
問題ありません。
先生のおっしゃる通り、
>ただ、一般のビジネスでは委任状もなく代理人を信用する事はないので、いかがなも
>のかと。
と思います。
>実際に依頼を出しているようですが、今現在、弁護士よりスルーされているとの
>事。
これはあくまで推測ですが、
単純に面倒だと思っている
だけの可能性が高いです
(会社が認めてくれるなら
それで済む話だと思っている。)。
会社として、
上記対応をある程度強く
すれば、特段弁護士としても、
委任状を提出することは
難しくないので、
提出されるとは思います。
よろしくお願い申し上げます。