前提
B社の100%株主のAがすべての株式をB社に買い取ってほしいと希望しています。
なお、AはB社の取締役ではありません。
質問
すべての株式をB社が買い取ることは可能なのでしょうか。
また、買取が可能であった場合、想定される問題がありましたらご教示ください。
宜しくお願い致します
>すべての株式をB社が買い取ることは可能なのでしょうか。
>また、買取が可能であった場合、想定される問題がありましたらご教示ください。
現状で、すべての株式を
B社が買い取ると、発行済み株式の
全てがB社の自己株式になってしまいます。
このような株式の取得について、
会社法上は特に禁止する規定はありませんが、
実務上は100%減資をするなどの
例外的な場合を除いては、
認められないという解釈が有力です。
また、分配可能額の範囲内でしか
自己株式の取得は認められていませんので、
この点もご注意ください。
理論的に、すべての株式を取得できるにしろ、できないにしろ、
自己株式には議決権がなく、
株式のすべてが自己株式になると
議決権を行使する株主がおらず、
会社の運営に支障をきたすことになります。
ですので、Aの株式をすべてB社が買い取るのであれば、
あらかじめ、他の人に新株1株でも発行し、
他に株主がいる状態(現在の取締役など
今後会社運営をしていく方が良いかと
思います。)にしてからにするか、
または、Aの株式の1株については、
Aと他の人の売買等にした方が良いでしょう。
2 回答の理由
(1)すべての株式をB社が買い取ることは可能なのでしょうか。
現状で、すべての株式をB社が買い取ることとすると、
発行済み株式のすべてがB社の自己株式となってしまいます。
この点について、
会社法上、これを明確に禁止する規定はありませんので、
このような取得も可能とする解釈もあり得ます。
もっとも、自己株式には議決権がなく(会社法308条2項)、
すべてが自己株式になると、
議決権を行使する者がいなくなってしまい、
会社の運営に支障をきたすことになります。
ですので、100%減資をする場合などに、一時的にすべての株式を
取得するというような例外的な場合を除いては、
すべての株式を会社が取得することはできないという解釈が有力です。
(2)分配可能額(財源規制)について
自己株式の取得の際に制限となるのが、財源規制です。
会社は、「分配可能額」(会社法461条2項)の範囲内でしか、
自己株式を取得することができません(会社法461条1項。なお、無償での取得など
財源規制が問題とならない取得方法もあります。)
今回取得するAの株式の対価がこの分配可能額を超える場合には、
これを超える部分について、自己株式を取得することはできませんので、
ご注意ください。
(3)想定される実務上の問題
仮に、すべての株式をB社が取得したとすると、
上記(1)のとおり、議決権を行使する株主がいなくなってしまい、
会社運営に支障をきたす(株主総会決議ができない)ことになるため、
会社としては、全てが自己株式となるという状況は避けるべきでしょう。
ですので、Aの株式を買い取るのであれば、
その前提として、A以外の人に新株を発行しておき
(1株でも構いません)、Aからすべての株式を買い
取っても、他に株主がいる状態にしておく
または
Aの株式のうち一部については、
Aと他の人の売買等にしておく
のどちらかにしておいた方が良いでしょう。
現在の取締役など
今後会社運営をしていく方に発行または譲渡
された方が良いかと思います。
株式の発行をする場合には、事情をAに説明し、株主総会の
承認の下、新株発行手続きをするという流れになる
かと存じます。
よろしくお願い申し上げます。