その後、中国人が個人事業者に中国でラーメン店を出したいのでアドバイスをしてほしいと言ってきた。
ラーメンに関してはFC店の時の作り方をそのまま継続しており、FC本部もそれは了解している。その商品をそのまま中国の店舗で使わないで新たな商品を個人事業者が開発して提供している。
しかし、その中国人はFC店当時から個人事業者を知っており、商品も良く知っており、材料を変えれば同じような味が出来ることを知っている。
そこで、個人事業者は自分に責任(FC店の店名を勝手に使ったり、同じ味の商品を勝手に提供したりする)がこないようにしたいのですが、どのような契約を結び、その内容はどうすればいいですか?
>そこで、個人事業者は自分に責任(FC店の店名を勝手に使ったり、同じ味の商品を勝手
>に提供したりする)がこないようにしたいのですが、どのような契約を結び、その内容は
>どうすればいいですか?
(1)個人事業者の方がFC本部に対して負う責任
まず前提として、個人事業者の方が、中国人の方に
ラーメンの製法を伝えることが、不正競争防止法、
または、個人事業者とFC本部との秘密保持契約に
違反する可能性があり、この点に関して、
FC本部から損害賠償請求をされる可能性があります。
一方、中国人の方が、FC店の店名を勝手に使用したとしても、
特に個人事業者に責任が発生することはないと思います。
また、中国人の方が同じ味の商品を出した場合も同様です。
要は、中国人の方が行った行為による責任というより、
個人事業者が中国人に、ラーメンの製法等のノウハウを
開示することの責任追及がありうるということです。
この責任はFC本部と個人事業者の方との間で
生じるものなので、中国人の方との契約を
どのようにしたとしても、免れるものではありません。
ですので、もっとも安全なのは、現実論としては
困難でしょうが、個人事業者の方が提供している
商品製法のノウハウを中国人に伝えることについて、
FC本部の了承を得ておくことです。
(2)中国人の方との契約書の条項
上記のリスクをヘッジするため、
以下の条項を入れておくとよいと思われます。
・ラーメンの製法を中国人の方に伝えたことにより、
FC店から個人事業者が責任追及をされ金銭的な賠償が生じた
場合には、その金額を中国人が個人事業者に補償すること
ただ、このような条項を定めたとしても、
対FC本部の関係では一時的に責任を負うのは個人事業者で、
その後中国人への補償の請求が奏功しない場合も多いと
思いますので万全ではないという点は、ご留意ください。
2 回答の理由
(1)ラーメンの製法を伝えることによる個人事業者の方のFC本部に対する責任
ア 不正競争防止法違反
FC本部が個人事業者に伝えたラーメンの製法は、
「営業秘密」として、不正競争防止法上保護される可能性があります。
仮に、「営業秘密」を不正の利益を得る目的で、
又はその保有者に損害を加える目的で、
第三者に開示する行為は、不正競争行為
(不正競争防止法2条1項7号)として、
損害賠償請求や差止請求の対象となります。
今回は、
・FC本部から個人事業者に伝えられた
ラーメンの製法等がそもそも「営業秘密」にあたらない
・個人事業者は、商品に改良を加えているため、
個人事業者から中国人に伝えるラーメンのの製法の中には、
「営業秘密」は含まれていない
という可能性もあり、不正競争防止法違反にはならない
ということも大いにありえます。
特に「営業秘密」といえるためには、
厳重な秘密管理性(FC本部が、ラーメンの製法などの情報を
秘密として管理していること)が求められており、
このハードルは一般的に結構高いので、そもそも
「営業秘密」にあたらないという可能性も高いです。
ただ、このあたりは、製法の内容やどの程度の改良が
加えられているかなどの具体的な事情によるところですので、
裁判にならなければはっきりしない部分ではあります。
一応、不正競争防止法違反のリスクも
一定程度はあるかと思われます。
イ 秘密保持契約の違反による責任
FC本部と個人事業者とのFC契約に付随して
秘密保持契約が結ばれており(もしくは、FC契約の中に
秘密保持義務が規定されている)、その中で、
FC本部が個人事業者に開示する機密情報の
第三者への開示を禁止していると考えられます。
個人事業者が中国人にラーメンの製法を
伝えることが、この秘密保持契約に違反する可能性があります。
実際に違反するかどうかについては、
契約書の内容や周辺事情をお伺いしないと判断できませんが、
一般的には、秘密保持契約で定める範囲は、
不正競争防止法の「営業秘密」より広いので、
違反の可能性も上記よりは高いです。
契約違反となった場合には、
これによりFC本部が被った損害について、
賠償請求を受ける可能性があります。
ウ 不正競争防止法違反・秘密保持契約違反を避ける方法
上記のとおり、中国人の方にラーメンの製法を開示することが、
不正競争防止法違反、または秘密保持契約違反になるかどうか
定かではありませんが、これらの違反を確実に避ける方法としては、
個人事業者から中国人にラーメンの製法を伝えることについて、
FC本部の同意をとることです。
ただ、FC本部からすれば、自己のノウハウが
開示される可能性があるものを承諾するというのは、
現実的にはあまりないのかなと思われます。
(2)中国人がFC店の名前を勝手に使ったり、同じ味の商品を提供した場合
中国人の方がこのようなことを行ったとしても、
基本的には、勝手にやったことであり、
個人事業者の方が責任を負うものではないと考えられます。
ただ、上記のとおり、そもそも中国人にラーメンの
製法を伝えたこと自体の責任を問われる可能性はあります。
(3)対中国人との契約書の内容
上記のとおり、中国人との契約書の内容いかんにかかわらず、
ラーメンの製法を開示すること自体について、
対FC本部との関係では不正競争防止法違反、
または、秘密保持契約違反になる可能性があります。
この責任は、対中国人との契約書にどのような定めを
したとしても免れるものではありません。
ただ、仮に責任を問われた場合に備えて、
以下のような条項をさだめておくとよいかと思います。
・ラーメンの製法を中国人の方に伝えたことにより、
FC店から個人事業者が責任追及をされ金銭的な賠償が生じた
場合には、その金額を中国人が個人事業者に補償すること
ただ、このような条項を定めたとしても、
対FC本部の関係で一時的に責任を負うのは個人事業者であり、
その後中国人への補償の請求が奏功しない場合も多いと
思いますので万全ではありません。
やはり重要なのは、ラーメンの製法を伝えることが、
不正競争防止法上の「営業秘密」の漏洩、または、
秘密保持契約違反にならないかどうかです。
よろしくお願い申し上げます。