民法 その他

中古車販売業の個人事業者が作成している契約書

【前提】

中古車販売業をしている個人事業者の方(以下Aろする)が、車を分割払で
販売したお客様との間で契約書を交わしています。

【質問】

①下記契約書の内容に問題はないでしょうか。
       
                                       年  月  日
                     契約書

私○○は、中古車○○車台番号○○を購入するにあたり、必ず¥○○全額を売主A
氏に御支払い致します。万一連絡する事無く、支払いが無い場合、もしくは支
払いを拒否または放棄した場合、調査会社・弁護士等による調査を承諾し、
それらに要した費用全額を、私○○がお支払いするとともに、併せて違約金と
して、金五拾萬円を御支払い致します。また、上記に違反した際に中古車○○
の所有権が私○○の名義、またはその他の名義であってもA氏による車体の
回収を承諾致します。
車体回収に要した費用{高速代・ガソリン代・宿泊代・人件費)全額を私○○が
御支払い致します。
購入車両(車台番号○○)を全額支払い終了までは、他人に貸したり、譲渡ま
たは販売致しません。
上記に違反した際にも違約金として金五拾萬円を御支払い致します。
全額支払終了までは常時連絡がとれるように致します。連絡なく電話料金未
払い・電話番号変更・メールアドレス変更等で連絡が取れない場合、1回につ
き5千円違約金を御支払い致します。

                                    ○○  印

②分割払で、返済が遅れると、違約金として2千円とか4千円を徴収している
  ようです。何か法に触れることはないでしょうか。

よろしくお願いいたします。

以下の回答では、契約書の文面から、
法的に問題がありそうな点を列挙させていただきます。

ただし、契約書のレビューにより、
「法的な問題を洗い出す」ためには、

具体的なご事情やお客様のご要望を
ヒアリングした後でなければ基本的に
行うことができません。

ですので、契約書の「法的な問題を
洗い出す」ということを
ご希望の場合は、

特典の無料相談をご利用いただき、
ご事情をお伺いした上で、回答させて
いただきたく存じます。

なお、修正案や契約書の作成などではなく、
無料法律相談の時間の中で、
契約書へのアドバイスを行うこと
も可能ですので、ご活用ください。

以下の回答は、ご事情をお伺いした上でのレビューでは
ないため、問題点を全て網羅したものとは言えない点は
ご了承ください。

1 ご質問および回答の結論
(1)ご質問①~契約書の内容について~
ア 分割金の支払いがない場合に、違約金を支払う旨の条項

>万一連絡する事無く、支払いが無い場合、もしくは支
>払いを拒否または放棄した場合、調査会社・弁護士等による調査を承諾し、
>それらに要した費用全額を、私○○がお支払いするとともに、併せて違約金と
>して、金五拾萬円を御支払い致します。

は、割賦販売法の遅延損害金の上限(年6%)規制に引っかかる
可能性があります。上限を超えて受け取ると、上限を超えた部分
の返還義務が生じます。

イ 消費者契約法の規制

>購入車両(車台番号○○)を全額支払い終了までは、他人に貸したり、譲渡ま
>たは販売致しません。
>上記に違反した際にも違約金として金五拾萬円を御支払い致します。

>全額支払終了までは常時連絡がとれるように致します。連絡なく電話料金未
>払い・電話番号変更・メールアドレス変更等で連絡が取れない場合、1回につ
>き5千円違約金を御支払い致します。

の2つの条項は、消費者契約法10条に違反し、
無効となる可能性があります。

ウ 自動車の所有権留保について

>上記に違反した際に中古車○○
>の所有権が私○○の名義、またはその他の名義であってもA氏による車体の
>回収を承諾致します。

>購入車両(車台番号○○)を全額支払い終了までは、他人に貸したり、譲渡ま
>たは販売致しません。

の条項は、自動車の所有権留保(自動車は売るけど、
代金支払いの担保として、代金完済まで所有権は売主に留保し、
代金完済した時点で所有権が買主に移転するという契約)
の趣旨だと思われ、この規定自体に問題はありませんが、

自動車の所有者名義を売主Aにしておかないと
(買主は、自動車の使用者として登録)、
買主が第三者に自動車を譲渡した場合に、
売主Aは、譲渡を受けた第三者に自動車の返還を
求めることができなくなりますので、ご注意ください。

(2)ご質問②~違約金の徴収~

>②分割払で、返済が遅れると、違約金として2千円とか4千円を徴収している
>  ようです。何か法に触れることはないでしょうか。

割賦販売法の違約金(遅延損害金)の
上限年6%に違反し、これを超えて受け取った部分
について返還義務が生じる可能性があります。

2 回答の理由

(1)ご質問①~契約書の内容について~
ア 分割金の支払いがない場合に、違約金を支払う旨の条項

自動車の代金を、2か月以上の期間にわたり、
3回払い以上の分割払いで支払うという契約を
する場合は、割賦販売法の対象になります
(割賦販売法2条1項1号)。

ご質問のケースでは、分割払いとのことなので、
おそらく割賦販売法の対象になるのではないか
と思われます。

なお、割賦販売法の対象となる商品は
限定されており、自動車は対象になりますが、
分割払いとしても
割賦販売法の適用を受けない商品もあります。

分割金の支払いが遅れた場合の遅延損害金の額は、
年6%が上限とされており(割賦販売法6条2項)、
これを超える部分は無効になります。

仮にこれ以上受け取っている場合は、
上限を超える金額について、返還義務が発生します。

>万一連絡する事無く、支払いが無い場合、もしくは支
>払いを拒否または放棄した場合、調査会社・弁護士等による調査を承諾し、
>それらに要した費用全額を、私○○がお支払いするとともに、併せて違約金と
>して、金五拾萬円を御支払い致します。

の条項は、分割金額によりますが、
この割賦販売法の規制に引っかかる
可能性があります。

イ 消費者契約法の規制

お客さんが「消費者」
(個人の方。個人事業主が事業のために契約をする場合を除く。)
の場合は、
消費者契約法が適用されることになります。
消費者契約では、消費者の利益を一方的に害する条項は
無効とされます(消費者契約法10条)。

利益を一方的に害するかどうかは、
様々な事情を考慮して決められるので、
明確な判断基準というのは、
確立されていませんが、
今回の契約にある下記の2つの条項は、
この規定に反し無効となる可能性があると思われます。

>購入車両(車台番号○○)を全額支払い終了までは、他人に貸したり、譲渡ま
>たは販売致しません。
>上記に違反した際にも違約金として金五拾萬円を御支払い致します。

>全額支払終了までは常時連絡がとれるように致します。連絡なく電話料金未
>払い・電話番号変更・メールアドレス変更等で連絡が取れない場合、1回につ
>き5千円違約金を御支払い致します。

ウ 自動車の所有権留保について

>上記に違反した際に中古車○○
>の所有権が私○○の名義、またはその他の名義であってもA氏による車体の
>回収を承諾致します。

>購入車両(車台番号○○)を全額支払い終了までは、他人に貸したり、譲渡ま
>たは販売致しません。

の条項は、自動車の所有権留保(自動車は売るけど、
代金支払いの担保として、
代金完済まで所有権は売主に留保し、
代金完済した時点で所有権が買主に移転するという契約)
の趣旨だと思われ、この規定自体に問題はありませんが、

自動車の所有者名義を売主Aにしておかないと
(買主は、自動車の使用者として登録)、
買主が第三者に自動車を譲渡した場合に、
売主Aは、譲渡を受けた第三者に自動車の返還を
求めることができなくなりますので、ご注意ください。

(2)ご質問②~違約金の徴収~

ご質問①のとおり、自動車を、
2か月以上の期間にわたり
3回払い以上で分割払いとしている場合には、
割賦販売法の規制の対象となります。

返済が遅れた場合の遅延損害金(違約金)の
上限は年6%で、これを超える部分は無効となります。

ですので、受け取られている2千円や4千円という額が、
もともとの分割金の額に年6%の利率を超えているようであれば、
その超えている部分は無効となり、返還義務が発生します。

よろしくお願い申し上げます。