相続税の申告について基礎控除以下のため期限内に申告をしなかった。
改めて調べたら、相続財産が基礎控除を超えることとなり期限後申告を
行う(小規模宅地等の特例を適用すれば納税は0円)
質問1
期限内に分割見込書の提出をしていなくても、小規模宅地等の特例を適用できるか。
質問2
遺産分割が期限内に確定していた場合、期限後に確定した場合で適用の可否に違いはあるのか
期限後申告(当初申告)をした場合を想定しています。
1 ご質問と回答の結論
(1)ご質問①
>期限内に分割見込書の提出をしていなくても、小規模宅地等の特例を適用できるか。
実務上、反対の解説をされている方も多い
ところですが、
税法の条文解釈上は、
期限内に分割見込書の提出がなかったからといって、
特例が適用できなくなるとは言えないと考えます。
(2)ご質問②
>遺産分割が期限内に確定していた場合、期限後に確定した場合で適用の可否に違いはあるのか
条件分岐がありますが、法適用上、遺産分割が期限内
に確定していたか否かによって、結論が異なる部分があります。
(条件分岐は下記の理由をご参照ください。)
2 回答の理由
条件分岐が多いため、
回答の便宜上、質問1と質問2の区別
をせず、説明の中で回答します。
(1)期限後申告における小規模宅地等の適用について
これは前提になりますが、ご存知の通り、
小規模宅地等の特例の根拠条文である
「特措法69条の4」の第6項は、
相続税の申告書において、この特例の適用を
受けようとする旨の記載及び、計算に関する
明細書その他財務省令(措規23条の2第8項)
で定める書類の添付がある限り、適用させる
とされています。
そして、この相続税の申告書には、期限後申告書
も含まれると明確に規定されていますので、
期限後申告であっても、適用条件を満たしていれば、
期限後申告時に
特例の適用を受けようとする旨の記載及び、計算に関する
明細書その他財務省令で定める書類の添付
があれば、適用を受けることができると
考えられます。
なお、この「その他財務省令」にいう書類のうち、
未分割の場合には、措置法規則23条の2第8項
で、ご指摘の「分割見込書」の提出が求められます。
(2) 条件分岐
ア 申告期限前に遺産分割が確定していた場合
まず、小規模宅地等の特例の根拠条文である
「特措法69条の4」の第4項は、その本文で、
申告書の提出期限までに分割されていない特例対象
の宅地等については、適用しない旨定められています。
ですので、
申告期限前に遺産分割が確定していたという事案では、
期限後申告であったとしても、
この適用除外の適用がなく、小規模宅地の適用は
できると考えられます。
この場合、そもそも分割見込書なるものも存在するものでは
ありませんので、適用可能と考えて良いでしょう。
イ 申告期限内に遺産分割が確定していない場合
(ア) 申告期限から3年以内に遺産分割が確定した場合
上記の「特措法69条の4」の第4項は、
本文で期限内に分割が確定していることを定めていますが、
その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から
3年以内に分割された場合には、その適用を認める
としています。
その場合に、分割見込書が申告期限内に提出されている
必要があるか否かについては、必要があると
解説されている方も多いようです。
しかし、純粋な税法条文の建付けや読み方から
判断すると、
措置法規則23条の2第8項は、申告書を提出
する際に添付するように求められているもので
あって、期限後申告(当初申告)をする場合に、
申告期限内に見込書を提出していないから
という理由で、期限後申告による小規模宅地等
の特例の適用ができなくなるというようには
読めません。
つまり、条文上は、
一度申告した後に適用することは
条文上もできないが、当初申告としての期限後申告の場合
には、小規模宅地等の特例の適用は可能と考えられます。
ただし、反対のご意見もあるところですので、
実務で適用される際には、念のため依頼者様に
そのような考えがあるというリスクを説明
した上でということもご検討された
方がよいでしょう。(または税務署の事前確認)
(イ)申告期限から3年を超えて遺産分割が確定した場合
期限後申告時に遺産分割が確定
していない場合には、
その期限後申告書に分割見込書を添付し、
申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに
遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認
申請書を提出し、その承認を税務署から受けた場合には、
遺産分割確定後に修正申告や更正の請求をすることにより
特例の適用が可能となると考えられます。
なお、遺産分割確定後(3年超え)に期限後申告をするという場合には、
特例適用の余地はありません。
よろしくお願い申し上げます。