医療法 贈与税

医療法人の資本取引の可否

持分ありの医療法人の相談なのですが、経過措置として残っている持分あり
医療法人について、出資金が大きいため節税の観点から減資等をしたいというニーズ
があります。なお、持分ありの医療法人のままでいたい、というニーズもあります。

この場合の取扱いですが、株式会社を前提とすると、以下のような方策がざっと
浮かびますが、医療法人でも問題ないでしょうか?

1 医療法人の有償減資

2 自己株式の取得と消却に準じ、持分の一部放棄する
→医療法人は自己出資はできないと聞いたことがあります

3 退社の払い戻しであれば持分無し医療法人になるリスクがあるため、
追加出資を受け、その後均等に有償減資する

よろしくお願いいたします。

1 ご質問及び回答の結論
(1)ご質問①~有償減資~
>医療法人の有償減資

会社法の場合と異なり、
いわゆる有償減資なる手続きを
利用することはできません。

(2)ご質問②~持分の一部放棄~
>自己株式の取得と消却に準じ、持分の一部放棄する

持分の一部放棄は、定款に反しない限り、可能と考えられます。
ただ、医療法人側の一存でできることではなく、
出資者の意思表示(同意)が必要になります。

なお、
今回のケースでは、比率均等で放棄することに
なるのかとも思いますが、

一部の出資者の持分放棄等、比率が変化する場合には、
他の出資者に贈与税がかかる場合がありますので、
ご留意ください。

(3)ご質問③~追加出資と有償原資~
>退社の払い戻しであれば持分無し医療法人になるリスクがあるため、
>追加出資を受け、その後均等に有償減資する

追加出資は可能ですが、有償減資はできません。

2 回答の理由
(1)ご質問①~有償減資~

ご承知のとおり、有償減資は会社法上は、
①資本金額の減少手続+②剰余金の配当
を意味します。

これを医療法人に引き直した場合、
①について、そもそも法律上は、
「資本金」という概念がないので、
資本金額の減少手続という概念もありません。

また、②について、医療法人においては、
剰余金の配当が禁止されています(医療法54条)。

したがって、医療法人では、有償減資はできません。

(2)ご質問②~持分の一部放棄~

医療法人において、持分の全部放棄に関する
法律上の制限は特にないので、
これを行うことは可能と考えられます。

また、持分の一部放棄についても特に法律上の制限はなく、
定款に反しないのであれば、可能と考えられます。

ただ、持分の放棄は、出資者が、自分の意思により行うものなので、
医療法人側の一存で決められるものではありません。

持分の放棄を行う場合には、出資者本人から、
持分の一部(また全部)を放棄するということについて、
意思表示をしてもらう(書面にしておく)ということが
必要になります。

なお、蛇足ですが、
出資者の一部が持分を放棄した場合には、
他の残っている出資者に対して、
放棄した持分の権利の消滅に伴って生じる
経済的利益について、贈与税(相続税法9条)が課税される可能性が
ありますので、ご留意ください。

(3)ご質問③~追加出資と有償減資~

追加での出資を受けることは
特に法律上制限されていません
ので、定款に違反しない限りは、
行うことができるとされています。

有償減資については、
ご質問①のとおり、できません。

よろしくお願い申し上げます。