年金そのものを差押えができないことはわかりますが、
年金が振り込まれた口座残高は、
それが年金かどうかはわかりません。
その場合、年金生活者の口座を差し押さえられるでしょうか。
仮にできるとしても、年金相当額程度の残高しか無いか否かで
判断が変わる可能性があるのかも教えてください。
また、バレにくい口座にお金を移す等以外で、
法律的に正当に年金生活者を守る手続きが
があれば教えてください。
よろしくお願いします。
(1)ご質問①〜年金口座差押えの可否〜
>年金生活者の口座を差し押さえられるでしょうか。
結論としては、年金が振り込まれた口座を差し押さえることは可能です。
(2)ご質問②〜法律的に正当に年金生活者を守る手続き〜
>また、バレにくい口座にお金を移す等以外で、
>法律的に正当に年金生活者を守る手続きが
>があれば教えてください。
口座が差押えられた場合でも、
年金生活者の救済は全くされないのかというと、
そうではありません。
実務上、年金生活者が、差押禁止債権の
範囲変更の申立て(民事執行法153条)という
手続きをすることにより、救済される可能性が
あります。
なお、
>年金相当額程度の残高しか無いか否かで判断が変わる可能性があるのか
>も教えてください。
というご質問についてですが、
この手続きの中で、年金生活者に有利な
事実として考慮されることになります。
2 回答の理由
(1)ご質問①〜年金口座差押えの可否〜
ご存知の通り、法律上年金の受給権は差押えが禁止されています
(国民年金法24条、厚生年金保険法41条)。
年金は、その全部が日々の生活の費用として使われる
趣旨のもので、差押えを認めると最低限の生活費が
不足するという側面があります。
差押えが禁止されるのはこのような年金の趣旨からになります。
しかし、
年金受給権等の差押禁止債権についても、
実際の金額が、
いったん受給権者の預金口座に振り込まれた場合には、
形式的には、通常の金融機関に対する預金債権に変わります。
預金債権は、差押えが禁止されるわけではない
ので、その原資が差押禁止債権から生じたとしても、
原則として、差押え可能と考えられています。
(最高裁判決平成10年2月10日)
(2)ご質問②〜法律的に正当に年金生活者を守る手続き〜
では、年金しか入金されていない口座である場合
などに債務者の救済は全くされないのかというと、
そうではありません。
上記の差押禁止の趣旨、つまり
最低限の生活費が不足することを
防止するため、
年金生活者が、差押禁止債権の範囲変更の申立て
(民事執行法153条)
をするという個別的な手続きがあります。
具体的な事情によっては、
その差押範囲を制限することが妥当な場合もあることから、
いったん認められた差押命令の全部または一部の取消を求める
ことができる制度です。
この差押禁止債権の範囲変更の申立てをして、
裁判所が範囲の変更を認めるか否かは、
①口座内の預金債権が、入金された給付金
である(年金が原資である)こと
②差押えにより、年金生活者の生活に支障が生じること
が証明できるかによるところになります。
>年金相当額程度の残高しか無いか否か
という点は、①の年金が原資であることを基礎付ける証拠になりますので、
結論に影響を及ぼすものです。
このように、年金のみが振り込まれている口座について
いったん差押えは認められますが、
その後、差押禁止債権の範囲変更の申立てにより、
その差押えは、全部または一部が取り消される可能性が
あります。
よろしくお願い申し上げます。