民法

売掛金と未払金との相殺について

売掛金と未払金との相殺について教えてください。

前提

相談者は法人です。
A法人へ売掛金50万円あります。
このA法人は税金も滞納していて他の支払もあるということで半年以上、回収できて
いません。
接触はできています。
そこで仕事をこちらが回して外注として少し利用しました。
仮に30万円分してもらったとします。
A法人の社長は50万円の支払いをしていないのに30万円はお金を支払ってもらわない
と生活ができないと言ってきています。(少し変わった人です)

質問1
売掛金50万円と未払金30万円は勝手に相殺することはできるのでしょうか?
合意は必要なのでしょうか?
相殺する旨の書面を渡せばいいのでしょうか?

質問2
仮に相殺ができるものとして領収書をA法人は発行しなかったとした場合に、どのよ
うな対処で相殺をすることができますでしょうか?

1 ご質問及び回答の結論

(1)ご質問①~相殺の可否~

>質問1
>売掛金50万円と未払金30万円は勝手に相殺することはできるのでしょうか?
>合意は必要なのでしょうか?
>相殺する旨の書面を渡せばいいのでしょうか?

相殺に合意は必要なく一方的に行うことができます。
相殺する旨の書面は、できれば内容証明で送っておく
ことをおすすめします。

(2)ご質問②~領収書の有無~

>質問2
>仮に相殺ができるものとして領収書をA法人は発行しなかったとした場合に、
>どのような対処で
>相殺をすることができますでしょうか?

A法人から領収書を発行してもらう必要はありません。
未払金30万円が相殺により消滅したということを証明するための証拠としては、
・売掛金50万円、未払金30万円が存在したことの証拠(契約書・発注書など)
・相殺の意思表示の書面(相手に郵送したものの控え)
を残しておけばよいでしょう。

2 回答の理由

(1)ご質問①~相殺の可否~

相手との合意なく一方的に相殺するためには、
法律上「相殺適状」(民法505条1項)
にあることが必要です。

今回のケースの場合、「相殺適状」というため
には、

・お互いに金銭債権を有していること
・債務の支払期限が過ぎていること(いわゆる未払いの状態)

という条件を満たす必要がありますが、
いただいた事情からすると満たしている
ものと考えられます。

ですので、相手の同意なく、
こちらから一方的に相殺することが可能です。

相殺の方法としては、
相手に対する意思表示(相手に相殺することを示す)
により行うことになります(民法506条1項)。
通常は、相殺の意思表示をしたということ
が証拠として残るよう、書面で通知します。

また、弁護士が行う場合は、必ずと言っていいほど
内容証明で郵送します。

内容証明は、送った書面の内容や、
相手にいつ届いたかということを郵便局が証明してくれるため、
証拠としての価値が高いからです。

今回も、手間ではありますが、相殺の意思表示は
内容証明で行われるのがよいかと存じます。

内容証明にしないまでも、
少なくとも、相手に送付する前に送る文書のコピーをとっておいて、
特定記録(相手にいつ書面が届いたかをネット上で確認できる郵便)
で郵送するということはしておいた方がよいでしょう。

そうすれば、この文書を送り、いつ相手に届いた、
ということは一応証明することができます。

A法人に対する売掛金50万円と未払金30万円
を相殺するという意思表示をすれば、
30万円の未払金は自動的に消滅し、
相殺後の売掛金20万円のみが残る
ということになります。

(2)ご質問②~領収書の有無~

上記のように、相殺の意思表示をすると、
自動的に相殺の効果が発生し、
未払金30万円は消滅することになります。
この30万円に関して、もともとA法人から
領収書を発行してもらう必要はありません。

未払金30万円が相殺により消滅した
ということを証明するための証拠としては、
・売掛金50万円、未払金30万円があったことの証拠
(契約書・発注書・請求書など)
・相殺の意思表示の書面(相手に郵送したものの控え)
を残しておけばよいでしょう。

よろしくお願い申し上げます。