【前提】
・A社のX年度末B/Sにはのれん300、借入金250、資本金50が計上されている。
その他の資産・負債及び剰余金はゼロである。
・のれんは償却しない方針である。
・1年後に利益剰余金が140積上がったため、当該140の利益配当及び50の出資払戻(有償減資)を行いたい。
【ご質問】
会社計算規則158条が定める分配に係る財源規制の中に、のれん等調整額があります。
これによれば、利益配当140と出資払戻50をどの順序で行うかによって、以下の通り結果が変わってしまうように思えました。
誤りがあればご指摘頂けませんでしょうか。
ケース1.利益配当140を行った後に出資払戻50を行う場合
①利益配当に係る分配可能額の算出
・のれん等調整額150(=300÷2)が資本金等50及びその他資本剰余金ゼロを超えているため、その他資本剰余金の額を控除
→分配可能額:利益剰余金140 – のれん等調整額(= その他資本剰余金ゼロ) = 140
②出資の払戻(減資とそれに伴って増加するその他資本剰余金の分配)に係る分配可能額の算出
・のれん等調整額150(=300÷2)が資本金等ゼロ及びその他資本剰余金50を超えているため、その他資本剰余金の額を控除
その他資本剰余金50 – のれん等調整額(= その他資本剰余金50) = ゼロ
実際に分配できる金額:①+②=140
ケース2.出資払戻50を行った後に利益配当140を行う場合
①出資の払戻(減資とそれに伴って増加するその他資本剰余金の分配)に係る分配可能額の算出
・のれん等調整額150(=300÷2)が減資後資本金等ゼロ及びその他資本剰余金50を超えているため、その他資本剰余金の額を控除
その他資本剰余金50 + 利益剰余金140 – のれん等調整額(= その他資本剰余金50) = 140
∴その他資本剰余金50の全額を分配可能
②利益配当に係る分配可能額の算出
・のれん等調整額150(=300÷2)が減資後資本金等ゼロ及びその他資本剰余金ゼロを超えているため、その他資本剰余金の額を控除
→分配可能額:利益剰余金140 – のれん等調整額(= その他資本剰余金ゼロ) = 140
実際に分配できる金額:①+②=190
のれん等調整額や有償減資について理解不足があるかと思い恐縮ですが、ご指導宜しくお願い申し上げます。
>剰余金の分配可能額算出にあたり、のれん等調整額について
利益剰余金の配当と有償減資の順番の違いで、実際に分配
できる金額に違いが生じるか。
2 結論と理由
(1)結論
実際の細かい計算部分に関しては、私も会計士さんに
お願いすることも多いのですが、
改めて、のれん等調整額の規定である
会社法計算規則158条1号をいただいた事例に
当てはめたところ、下記のようにケース1及びケース2により
実際に分配できる額(190)に違いは生じないと考えられます。
(2)理由
今回は、のれんは償却しない方針で、かつ「のれん300」・「資本金50」
ということですで、ケース1とケース2、利益配当と有償減資の計算の組み合わせ
4パターン(ご質問の①②③④)について、会社法計算規則158条1号ハ(2)
に従い計算することになります。
そして、会社法計算規則158条1号ハ(2)の計算方法は、
「最終事業年度の末日におけるのれんの額を二で除して得た額が資本等金額及び最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額の合計額を超えている場合
最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額及び繰延資産の部に計上した額の合計額」
とされています。
先生と私の計算に違いが生じたのは、条文上の「【最終事業年度の末日における】その他資本剰余金の額〜の合計額」
【】の部分だと思われます。
以下、具体的に
ア ケース1〜利益配当140を行った後に出資払戻50を行う場合〜
①利益配当に係る分配可能額の算出
>のれん等調整額150(=300÷2)が、のれん等調整額150(=300÷2)が資本金等50及びその他資
>本剰余金ゼロを超えているため、その他資本剰余金の額を控除
>→分配可能額:利益剰余金140 – のれん等調整額(= その他資本剰余金ゼロ) = 140
こちらの計算に違いは生じません。
②出資の払戻(減資とそれに伴って増加するその他資本剰余金の分配)に係る分配可能額の算出
>・のれん等調整額150(=300÷2)が資本金等ゼロ及びその他資本剰余金50を超えているため、
>その他資本剰余金の額を控除
>その他資本剰余金50 – のれん等調整額(= その他資本剰余金50) = ゼロ
こちらの計算について、先生と私の計算に違いが生じます。
こちらで、先生と異なる部分に【】をつけます(以下、同じ)。
「・のれん等調整額150(=300÷2)が資本金等ゼロ及び【最終事業年度末日における】その他資本剰余金【0】を超えているため、その他資本剰余金の額を控除
その他資本剰余金50 – のれん等調整額(=【最終事業年度末日における】 その他資本剰余金【0】) = 50」
したがって、
>実際に分配できる金額:①+②=140
ではなく、
◯実際に分配できる金額:①+②=190
イ ケース2〜出資払戻50を行った後に利益配当140を行う場合〜
①出資の払戻(減資とそれに伴って増加するその他資本剰余金の分配)に係る分配可能額の算出
>・のれん等調整額150(=300÷2)が減資後資本金等ゼロ及び【最終事業年度末日における】そ
>の他資本剰余金【0】を超えているため、その他資本剰余金の額を控除
>その他資本剰余金50 + 利益剰余金140 – のれん等調整額(= 【最終事業年度末日における】そ
>の他資本剰余金【0】) = 190
>∴その他資本剰余金50の全額を分配可能
②出資の払戻(減資とそれに伴って増加するその他資本剰余金の分配)に係る分配可能額の算出
>・のれん等調整額150(=300÷2)が減資後資本金等ゼロ及び【最終事業年度末日における】そ
>の他資本剰余金ゼロを超えているため、その他資本剰余金の額を控除
>→分配可能額:利益剰余金140 – のれん等調整額(= その他資本剰余金ゼロ) = 140
以上より、
先生のおっしゃる通り、
>実際に分配できる金額:①+②=190
ウ まとめ
以上より、
利益配当と有償減資の順番により、実際に分配できる金額は異ならないと考えられます。
よろしくお願い申し上げます。