役員報酬の金額は、株主総会の決議で決めるものであり、取締役会設置会社では、総額を株主総会で決めれば、取締役会に個別の金額を定めることができると理解しています。
このため、株主=役員の同族会社では、総額を決めなくても何も問題がないと考えています。株主総会=取締役会と解されるからです。実際のところ、私のお客様ではこのような総額は決めておりません。
このような場合でも、総額は決めておく必要がありますか?
よろしくお願いいたします。
(役員報酬において、法律上「総額」について株主総会決議することが必要か?)
>役員報酬の金額は、株主総会の決議で決めるものであり、取締役会設置会社では、総額を株主総会で決めれば、
>取締役会に個別の金額を定めることができると理解しています。
>このため、株主=役員の同族会社では、総額を決めなくても何も問題がないと考えています。
>株主総会=取締役会と解されるからです。実際のところ、私のお客様ではこのような総額は決めておりません。
>このような場合でも、総額は決めておく必要がありますか?
2 回答
(1)会社法上の回答
「会社法上」の回答としては、
総額の定めが必要なので、株主総会で、
総額を決めておくべきということになります。
先生のご指摘のとおり、
判例上、株主総会で総額(の上限)のみを定めて、
個別の取締役の報酬額の決定は、取締役会に一任することもできる
とされています(最高裁昭和60年3月26日判決)。
ただ、あくまで、株主総会で総額を定めることは必要で、
総額を決めないで取締役会に一任することはできない
とされています(最高裁昭和39年12月11日判決)。
株主総会と取締役会は、法的には別の機関であって、
たとえ、株主と取締役が全く同じであったとしても、
株主総会として開催されていれば株主総会ですし、
取締役会として開催されていれば取締役会です。
(議決権数や開催要件も異なるものですし)
「株主総会=取締役会」となるわけではありません。
(2)実務上の回答
ただ、今回のようなケース(取締役会への全株主の出席及び議決)
で、仮に株主総会で総額の決定がなかったとしても、
その後の取締役会で取締役(=株主)全員の同意をとれているのであれば、
実務上、問題になることは少ないと思いますし、
全株主が同意(取締役会で、反対の意思表示をしていない。)しているので
あれば、裁判上も救済される可能性が高いでしょう(有効な役員報酬として扱われる。)。
ただし、この裁判所の判断は、あくまでも事例に応じた
救済判断ということになりますので、2つ(株主総会と取締役会)の
議決が面倒ということであれば、
むしろ、株主総会を開催(取締役会ではなく)して、
全員の個別報酬を定めるというルートが法律上の王道か
と思います。
よろしくお願い申し上げます。
すいません、私が質問の趣旨を間違えていました。役員報酬の「総額」ではなく、「総額の上限」を株主総会で決める必要があるか、です。
取締役会設置会社なら上限を株主総会で決めて、個別報酬は委任するという流れになりますが、同族会社なら、株主総会で個別に報酬を決めますので、取締役会設置会社であっても、敢えて総額の上限は決めなくていいと思いますが、如何でしょうか?
例えば、役員が二人の会社で、役員Aが1000万、役員B1500万円と毎年株主総会で決議しておけば問題なく、敢えて役員が増えた場合などに備えて、「役員報酬の総額の上限は1億円とする」、こんな決議は要らないと考えています。
> むしろ、株主総会を開催(取締役会ではなく)して、
> 全員の個別報酬を定めるというルートが法律上の王道か
> と思います。
このご見解なら、個別報酬決めれば上限の定めは要らないと思いますが、如何でしょうか?
繰り返しのご質問で失礼します。
よろしくお願い致します。
>取締役会設置会社なら上限を株主総会で決めて、個別報酬は委任するという流れになります
>が、同族会社なら、株主総会で個別に報酬を決めますので、取締役会設置会社であっても、敢
>えて総額の上限は決めなくていいと思いますが、如何でしょうか?
2 回答
はい。ご理解のとおりです。
会社法上は、あくまでも、
株主総会で個別に取締役の報酬を決めるのが原則(会社法361条1項1号)です。
総額(の上限)を定めて、個別の報酬額の決定は取締役会に委任する、
というのはあくまで、判例上、認められている例外的な扱いになります。
実務上、株主総会で個別の報酬を決めると株主全員に対して、
個人の給与額がわかってしまうという日本の慣行的な理由や
総額(または上限)を定めておいて、のちに役員への何らかの経済的利益の
供与があった場合に総会を開催しなくとも決定できるようにする理由で、
報酬よりも少し高めにしておくという運用がなされている
ケースが多くあります。
ただ、同族会社であれば、日本的な慣習の要請もない(取締役会でどのみち
明らかになる)ですし、
追加の経済的利益の供与が生じる場合でも、
その都度株主総会を開くことが難しくないので、その都度
総会決議で決めれば会社法上も問題ありません。
ですので、株主総会で個別の報酬を決められるということであれば、
あえて総額の上限を決めること(及び取締役会で個別報酬を決めること)は
必要ありません。
よろしくお願い申し上げます。