(前提)
・遺言者に相続は開始していません。
・遺言者には配偶者がいますが、子はおりません。
・遺言者は土地を甥に対して特定遺贈する旨を記載しています。
・現状、その土地の上で甥は事業をしています。
・この遺言は信託銀行の遺言信託で作成されており、遺言執行者は銀行です。
・甥はこの土地の特定遺贈を放棄したいと考えています。
(質問)
・遺言者に相続が発生した場合、甥はどのタイミングで遺贈の放棄の意思を表示すればいい のでしょうか。
・相続が開始した時点では、甥はこの土地を自己の事業のために使用しているわけですが、
そのことをもって、遺贈を承認したことになってしまいますか。
よろしくお願いします。
> ・遺言者に相続が発生した場合、甥はどのタイミングで遺贈の放棄の意思を表示すれば
>いいのでしょうか。
被相続人死亡後、いつでも特定遺贈を放棄をすることができます(民法986条1項)。特に期間制限はありません。
遺贈の放棄は、相続人(複数いる場合はいずれか1人にすればよいです)、または、遺言執行者に対する意思表示により行うことになります。
放棄したことを証拠として残しておくため、相続発生後に、遺贈を放棄するという内容証明郵便を送った方がよいでしょう。
大きな注意点としては、
相続人は、受遺者に対して、相当の期間を定めて、遺贈の承認か放棄のどちらかを行うことを催告をすることができ、
この期間内に受遺者が返答しない場合には、遺贈を承認したものとみなされてしまいます(民法987条)。
ですので、万が一、相続人からの催告を受けた場合には、指定された期日までに必ず放棄するようにしてください。
2 ご質問②
>・相続が開始した時点では、甥はこの土地を自己の事業のために使用しているわけですが、
> そのことをもって、遺贈を承認したことになってしまいますか。
特定遺贈については、相続の承認のように、相続財産を使用・処分すると承認したことになって
しまうというような法定の承認事由(民法921条)はありません。
ですので、今回、従前の通り、土地を使用しているという事情のみで、
遺贈を承認した(放棄ができなくなる)ということにはならないものと考えられます。
よろしくお願い申し上げます。