(前提)
・甲社は取締役会設置会社です。
・近いうちに代表者が退職しますので、規定の制定が必要となりました。
(質問)
・退職金を実際に支給する決議については、株主総会で決議します(会社法361条)が、
その金額の算定根拠となる役員退職金規程について、取締役会で決議すればよい、とする参考書がありますが、そうすると、役員のお手盛りで都合のよい規程が作られる可能性があると考えますが、実際、取締役会で決議すればいいのでしょうか。
(私見)
・役員に都合が良い規程が作られる可能性があることから、株主総会での決議事項になると 考えますが、一方で、実際支給する際には、株主総会で「規程に基づき、○○円の退職金 を支給する」とする議案について、賛否を問うのですから、規程制定そのものの決議は、取締役会でもよい、とも考えています。
・甲社は株主の数が多いので、取締役会で決議できれば、と考えています。
よろしくお願いします。
> ・退職金を実際に支給する決議については、株主総会で決議します(会社法361条)が、
> その金額の算定根拠となる役員退職金規程について、取締役会で決議すればよい、と
>する参考書がありますが、そうすると、役員のお手盛りで都合のよい規程が作られる
>可能性があると考えますが、実際、取締役会で決議すればいいのでしょうか。
2 回答
(1)役員退職金規程の決議機関
役員退職基金規程の制定は、「その他の重要な業務執行の決定」(会社法362条4項柱書)として、取締役会にて決議すればよく、実務上もそのようにされています。
今回も、取締役会で決議していただければ大丈夫です。
(2)会社法361条との関係
取締役の報酬額を、株主総会で決議することを求める会社法361条1項1号との関係については、先生ご指摘の(私見)のうち後者(下記)の理解で大丈夫です。
>実際支給する際には、株主総会で「規程に基づき、○○円の退職金を支給する」とする
>議案について、賛否を問うのですから、規程制定そのものの決議は、取締役会でもよ
>い、とも考えています。
取締役の退職金については、取締役に実際に支給する段階でその金額について、株主総会で決議すれば足ります。
退職金規程の制定自体は、株主総会の決議事項ではありません。退職金規程が制定されたとしても、
株主総会で実際に支給する金額等について決議が成立しなければ、退職金の支給はできませんから、
退職金規程を取締役会で定めたとしてもお手盛りのおそれはありません。
なお、退職金支給の株主総会決議について、具体的な金額(上限を含む)を株主総会では定めず、その金額の決定を取締役会に一任するという決議を行うことも、実務上行われています。
判例上も、
①会社の内規により一定の支給基準が確立されていること(退職金規程の制定)
②その支給基準を株主が知りうる状態にあること
③株主総会決議で当該支給基準の範囲内において相当な金額を支給すべきことを決議すること
という要件を満たしていれば、金額の決定を取締役会に一任することも認められるとされています。
ご参考になさっていただければと存じます。
よろしくお願い申し上げます。