相続 株式 会社法

相続人に対する株式売却請求

代表取締役が亡くなり、他取締役が2名在任中(いずれも血縁関係なし)
以上の状況で、代取の持ち株を承継した相続人から買い取る際、
定款の記載が以下の場合、

(株式の譲渡制限)
第9条 当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
(相続人等に対する株式の売渡し請求)
第10条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対
し、当該株武を当会社に売り渡すことを請求することができる。

株主総会の決議が必要ということでしょうか?
その場合、相続人も決議に参加することになりますか?

1 ご質問および回答の結論
(1)ご質問①~株主総会決議の要否~
>株主総会の決議が必要ということでしょうか?

 株主総会の決議が必要となります。

(2)ご質問②~相続人の参加の可否~
>その場合、相続人も決議に参加することになりますか?

 株主が相続人以外にもいる場合には、売渡請求の相手方となっている相続人はその決議には参加することはできません。
 なお、売渡請求の期限は、会社が相続があったことを知った日から1年ですので、ご注意ください。

2 回答の理由
(1)ご質問①~株主総会決議の要否~

ア 定款第10条の意味
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(相続人等に対する株式の売渡し請求)
第10条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対
し、当該株武を当会社に売り渡すことを請求することができる。
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 会社法は、株式の譲渡制限をつけるのみでは、相続は「譲渡」ではないため、相続による株式の分散等を防ぐことができないことから、
 譲渡制限株式に限定して、定款に定めた場合に限り、特別に相続により株式を承継した相続人に対し、株式の売渡請求をすることができる(会社法174条)としています。
 ご指摘の定款第10条はこれを受けた規定になります。

イ 株主総会の要否

 会社法上、売渡請求をする場合には、株主総会の決議により、売渡請求の対象となる株式の数、および、その株式を有する者の氏名を決定する必要があります(会社法175条1項)。
 定款第10条には株主総会が必要との記載はありませんが、会社法上定款に定めた場合に特別に認められるものですので、株主総会が不要ということにはなりません。

(2)ご質問②~相続人の参加の可否~
 上記のように、会社は、株主総会により、売渡請求の対象とする相続人とその持株数(持株の一部を対象とすることも可能です。)を、決議することになりますが、売渡請求の対象となる相続人は、原則として、その決議に参加することはできません(会社法175条2項本文、175条1項2号)。

 ただし、売渡請求の対象となる相続人の他に、議決権を行使することができる株主がいない場合には、例外的に決議に参加することができます(会社法175条2項ただし書)。当然ですが、この場合にまで決議に参加することができないとすると、株主総会の決議自体ができなくなってしまうからです。
 今回のケースでは、相続人以外にも株主がいたということを前提にされているようですので、その場合には、相続人は決議に参加することはできません。

 なお、売渡請求の期限は、会社が相続があったことを知った日から1年(会社法176条1項ただし書)ですので、ご注意ください。

 よろしくお願い申し上げます。

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☆参照条文
会社法
(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
第174条  株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。
(売渡しの請求の決定)
第175条  株式会社は、前条の規定による定款の定めがある場合において、次条第一項の規定による請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  次条第一項の規定による請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二  前号の株式を有する者の氏名又は名称
2  前項第二号の者は、同項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、同号の者以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
(売渡しの請求)
第176条  株式会社は、前条第一項各号に掲げる事項を定めたときは、同項第二号の者に対し、同項第一号の株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる。ただし、当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から一年を経過したときは、この限りでない。
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