相続 遺言 贈与 遺留分

遺留分の減殺請求の時効

遺留分の減殺請求の時効のうち
相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時の意味を教えてください。

これは単純に被相続人が死亡してから1年を渡過したのみでは時効にはならないのでしょうか。
遺言書があった場合に、その遺言書の開示をして遺留分を侵害していることを相手に知らさないと起算されないのでしょうか。
つまり葬儀には出席していて被相続人が亡くなったことは知っているけど、遺言書の開示をしないまま1年を超えた場合は、
遺留分の減殺請求は相手はできないと考えていいいものでしょうか。

よろしくお願いします。

【民法 第1042条】
減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,
時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも,同様とする。

http://www.souzoku-yotsubasougou.com/201qa/20115/cat187/
遺留分侵害の事実を知ってから1年以内に遺留分減殺請求権を行使しないと,遺留分減殺請求権は時効により消滅してしまいます。
遺留分侵害の事実を知ってから1年という意味は裁判所での解釈の争いがいろいろありますが,
「遺贈の事実及び遺贈が減殺できるものであることを知った時」
の両方の条件を満たした場合が計算のスタートの期間とされています。
ただし,遺贈の事実を知ったかどうかや,遺贈が減殺できるものであることを知ったかどうかという判断自体が裁判所で争いになりますので,
故人がお亡くなりになってから1年が期間と考えておいた方が安心です。

1 ご質問及び回答の結論

>遺留分の減殺請求の時効のうち
>相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時の意味を教えてください。
>これは単純に被相続人が死亡してから1年を渡過したのみでは時効にはならないのでしょうか。
>遺言書があった場合に、その遺言書の開示をして遺留分を侵害していることを相手に知>らさないと起算されないのでしょうか。
>つまり葬儀には出席していて被相続人が亡くなったことは知っているけど、遺言書の開>示をしないまま1年を超えた場合は、
>遺留分の減殺請求は相手はできないと考えていいいものでしょうか。

 「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った」というためには、被相続人が死亡したことを知ったことに加え、贈与又は遺贈がなされ、それが遺留分を侵害することを知ったことが必要です。
 遺言書の開示がなされていないのであれば、少なくとも、遺言書があることやその中で遺贈がなされていることを遺留分権利者に伝えていたというような事情がない限りは、「減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った」とは認められず、時効期間は進んでいないと考えられます。

2 回答の理由
(1)遺留分減殺請求の時効の起算点
 遺留分減殺請求権は、遺留分権利者(遺留分を請求する側)が、
 ①相続の開始
 ②減殺すべき贈与又は遺贈があったこと
 の両方を知った時から1年間が経過したときは、時効により消滅します(民法1042条)。

 「①相続の開始を知った時」とは、被相続人が死亡したことを知った時です。
 「②減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、判例上、贈与または遺贈があった事実に加え、その贈与または遺贈が、自己の遺留分を侵害することを知ることが必要とされています。

(2)立証責任
 「②減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った」かどうかは、最終的には裁判所での事実認定の問題になりますが、その立証責任は、遺留分減殺請求をされる側(時効を主張する側)にあります。遺留分減殺請求をされる側がこの事実を立証できない場合には、時効の主張は認められず、遺留分減殺請求が認められることになります。

(3)ご質問のケースについて
 たしかに、添付いただいた記事のように、上記の事実が認められるかどうかは、裁判所で争いになる場合もあります。ただ、遺言書を開示していないということだと、遺留分権利者が遺贈の事実を知ったことを立証するのはなかなか難しいかと思います。
 遺言書を開示しないまでも、少なくとも、遺言書があることやその中で遺贈がなされていることを、遺留分権利者に伝えていたというような事情がない限りは、遺留分権利者が、遺贈があったことを知っていたとは認められないと考えられます。
 ですので、このような事実もないとすれば、時効は進行しておらず、今も遺留分減殺請求は可能と考えられます。

 よろしくお願い申し上げます。