お客様で、私募債を発行されている方がいるのですが、最近の金利水準などを
踏まえて利率を変えたいというニーズがあります。
個人的には、下記規定に基づき社債権者集会の決議があれば、利害に関する事項として問題ないと考えますが、この解釈で正しいでしょうか。
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会社法716条(社債権者集会の権限)
社債権者集会は、この法律に規定する事項及び社債権者の利害に関する事項について決議をすることができる。
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よろしくお願いいたします。
>お客様で、私募債を発行されている方がいるのですが、最近の金利水準などを
>踏まえて利率を変えたいというニーズがあります。
>個人的には、下記規定に基づき社債権者集会の決議があれば、利害に関する事項として問
>題ないと考えますが、この解釈で正しいでしょうか。
>——
>会社法716条(社債権者集会の権限)
>社債権者集会は、この法律に規定する事項及び社債権者の利害に関する事項について決>議をすることができる。
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社債権者集会の決議により、社債の利率を変更することは可能と考えられます。
なお、社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けて初めて効力を生じますので、認可が得られなければ効力は生じません。問題はないかとも思いますが、下記「回答の理由(3)」のような不認可の事由があると、認可が受けられないこともありますので、ご注意ください。
2 回答の理由
(1)社債権者集会における決議の可否
先生のおっしゃるとおり、社債の利率の変更は、会社法716条の「社債権者の利害に関する事項」として、社債権者集会で決議することが可能と考えられます。
(2)社債権者集会の決議に関する裁判所の認可
社債権者集会の決議は、それのみでは効力がなく、裁判所の認可を受けることにより効力を生じます(会社法734条1項)。
認可の申立ては、当該決議があった日から1週間以内にする必要があります(会社法732条)。
(3)不認可となる場合
社債権者集会の決議について、会社法733条で、不認可となる場合が定められています。
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(社債権者集会の決議の不認可)
第七百三十三条 裁判所は、次のいずれかに該当する場合には、社債権者集会の決議の認可をすることができない。
一 社債権者集会の招集の手続又はその決議の方法が法令又は第六百七十六条の募集のための当該社債発行会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料に記載され、若しくは記録された事項に違反するとき。
二 決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
三 決議が著しく不公正であるとき。
四 決議が社債権者の一般の利益に反するとき。
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ア 招集手続等の法令違反(733条1号)
例としては、債権者集会の招集通知がなされなかった場合などが考えられます。
イ 決議が不正な方法によって成立した場合(733条2号)
債権者集会の議決権の行使に際して、賄賂の授受や詐欺・脅迫があった場合などが考えられます。
ウ 決議が著しく不公正であるとき(733条3号)
例としては、一部の社債権者にのみ有利・不利な内容の決議がなされた場合が想定されます。社債権者の間においては利害の均一性が求められており、多数決の決議により、一部の社債権者についてのみ不利・有利に扱うことは、一般的に不公正な決議にあたると考えられています。
エ 決議が社債権者の一般の利益に反するとき(733条4号)
たとえば、社債権者の有する債権を大幅に減額(放棄)するような決議がなされた場合にはこれにあたる可能性があります。
以上のように、733条各号に定める事由にあたる場合には、認可が受けられず、決議の効力が生じないことになりますので、ご注意ください。
よろしくお願い申し上げます。