民法 その他

お隣からのクレーム

【前提】

現在、自宅兼事務所として自宅の一部を事務所としていて、今年の4月から
職員2名が働いてくれています。
自宅は26年前に建てており、5メートル離れた隣に15年前に家が建ちま
した。
お隣の住人から、事務所を網戸にされると職員の声がうるさくて迷惑していると
言われました。
事務所の職員の机は、隣の家に近い位置にあり、お隣の家の居間の窓がこち
らの家に向いている状態です。また、お隣は窓を網戸にしてカーテンをしてい
るようです。また、お隣のその窓は大きく人の背丈ほどあります。そこに縁側
を設けて人と話したりしているようです。
お隣からは、隣同士で喧嘩をしたくないし、お隣側の窓を閉めて障子も閉め
て欲しいと言われています。
隣で商売始めるなんて思ってなかったとも言われています。個人的には、確
かに職員の声は比較的高いほうなのかもしれません。しかし、会計事務所なの
で、頻繁に喋っているわけでもありません。また、職員も基本的に午後から夕
方までの出勤で、勤務日は月平均15日程度です。お客様も週に平均1,2人
来る程度なのですが、商売というレベルでもないかと思っています。

【質問】

窓と障子は閉めるつもりですが、お隣は網戸にして窓を自由に開けられ、こ
ちら側は窓も障子も閉めないといけないものでしょうか。

1 ご質問と回答

>窓と障子は閉めるつもりですが、お隣は網戸にして窓を自由に開けられ、こ
>ちら側は窓も障子も閉めないといけないものでしょうか。

 法律的には、閉める義務はないものと考えられます。

2 ご質問に対する回答
(1)解決の方向性

 ご質問の事情からすれば、相手の家まで届いている音量はそこまで大きなものではないと思いますが、お隣さんは、ちょっと神経質な方なのかもしれませんね。
 この程度の音量なら、基本的に窓を閉めなくても問題ない(少なくとも法的に問題になることはない)ので、対応されるかどうかは、お隣さんとの関係性も含めてご判断いただければよいと思います。
 いずれにしても、法的な義務ではないので、お隣さんとの関係性も踏まえて、お互いの納得できるところで話をつけてもらえればよいと思います。

 以下、本件ではあまり関係しないと思われますが、一応、騒音に関する法的な問題を記載しておきます。

(2)騒音に基づく損害賠償等

 騒音に関しては、法律上、不法行為に基づく損害賠償請求、もしくは、差止請求が可能です。
 請求が認められるのは、騒音が、社会生活を行う上で、「受任すべき限度を超える場合」です。
 「受忍すべき限度を超える」かどうかは、いろいろと考慮要素はありますが、基本は、音量の大きさ、その頻度、音が聞こえる時間帯、地域などが基準になります。専ら住居の用に供される地域であったとしても、昼間であれば、少なくとも、55デシベル以上の音量(相手の家の中まで聞こえている音)が常態的に発生しているぐらいでないと認められないでしょう。
 参考までに50デジベルの例を挙げますと

 50デシベルのイメージ:家庭用エアコンの室外機の真横にいる程度

 です。

 本件でいうと、
 音量・・・多少声が大きいとしても、5mも離れている上、職員様の人数も2名ということですので、50デシベル以上の音が相手の家の中で聞こえているとは思えません。
 頻度・・・「職員様:月平均15日程度 お客様:週に平均1,2人来る程度
ということですので、頻度としても、高くありません。また会計事務所さまなので、特別に騒音が発生する事情もないかと思います。
 時間帯・・・職員も基本的に午後から夕方までの出勤ということですので、時間帯という点からも、問題はないでしょう。

 以上の点から、判断すると、御事務所からでている音は、通常の生活において生じる会話音とほとんど変わらない状況と評価できるので、「受忍すべき限度を超える」とは言えないと思われます。

 今回は御事務所が、法的に何らかの義務を負うということはないでしょう。

 よろしくお願い申し上げます。