【前提条件】
顧問先の会長が、癌であると診断されました。
今後に備えて、役員退職金規定を作成したいと思っています。
現時点では、長男Aが、後継者として、社長に就任しており、会社の株式は、
会長と社長である長男Aが、50%づつ所有しています。
相続人は、長男A、次男B、長女Cの3名です。
次男Bは、個人事業主で会社の外注先となっており、長女Cは、事業に関係ありません。
退職金は、後継者である長男Aに支給できるようにしたいと考えています。
【質問】
(1)役員退職金規定では、
『1.死亡した役員に対する死亡退職金等は、
遺族の中で役員の指定した者に支給する。
2.指定がない場合、または指定した遺族が死亡している場合、
または遺族以外の者を指定している場合は次の順位とする。
第一順位:配偶者
第二順位:子
第三順位:父母、以降、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。』
とし、1の規定により、長男のみに支給するということは、法律上問題ないでしょうか?
相続人の一人が退職金の受給権者である場合、他の相続人に対し、
不公平になる可能性があり、「特別受益」にあたるとされるのではないか?と
気になっています。
(3人とも、別生計の子供であるため)
そうならないために、気を付けたほうがよいことはございますか?
(過去の判例では、特別受益になる場合とならない場合があり、個別に判断であることは、
認識しています。)
(2)生前に会長の株式をすべて長男Aに贈与をしておき、死亡後には長男Aのみの株主総会の決議で、
退職金を支給したいと思っています。
他に、何か気を付けた方がいいことがございましたら、ご教授いただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
1 ご質問①~死亡退職金の規定等について~
>(1)役員退職金規定では、
>『1.死亡した役員に対する死亡退職金等は、
>遺族の中で役員の指定した者に支給する。
>2.指定がない場合、または指定した遺族が死亡している場合、
>または遺族以外の者を指定している場合は次の順位とする。
>第一順位:配偶者
>第二順位:子
>第三順位:父母、以降、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。』
この規定についての法律上の問題としては
(1)死亡退職金が、長男Aの固有財産ではなく、相続財産(遺産)とされてしまわないか
ー相続財産(遺産)該当性
(2)相続財産ではないとしても、「特別受益」に当たらないか
ー特別受益該当性
(3)規定の文言の使い方
という3点があります。以下、(1)〜(3)について、考えうる対策を含めて回答いたします。
なお、どのような対策をすべきかは、その他の相続財産の規模や種類、各相続人間の関係、依頼者さまのご意向、税務との兼ね合い等を総合考慮した上で、決定しなければなりませんので、直接お会いしなければ、明確にどの方法が良いか申し上げられませんが、下記の対策をご参考にしていただけましたら幸いです。
(1)相続財産(遺産)該当性
ア 一般的な実務基準
死亡退職金が支払われた場合、その死亡退職金は相続財産(遺産)となる(相続人全員のものになる)のか、受給者として受け取った人の固有財産となるのかという点について争いがあります。なお、ここにいう「相続財産」は、相続税法3条の「みなし相続財産」ではなく、民法上の相続財産です。
一般的な実務の現場感覚ですと、今回のように会社に支給基準が定められており、その支給基準に則って決議がされて受給者が決定した場合、死亡退職金は受給者として受け取った人の固有財産になり、相続財産(遺産)には該当しないことを前提とされているケースが多いかと思われます。
イ 死亡退職金に関する裁判例
参考になる裁判例の要約は、長くなりますので、文末に掲載をさせていただいておりますが、
結論のみここに記載しますと
【東京地裁判決平成26年5月22日】結論:半分は相続財産(遺産)になり、半分はならない
【大阪地裁判決平成22年9月10日】結論:相続財産(遺産)になる
【最高裁昭和55年11月27日】 結論:相続財産(遺産)にならない
【最高裁昭和62年3月3日】 結論:相続財産(遺産)にならない
となっています。
従来は、死亡退職金支給の趣旨が、規定の仕方等も勘案し、受給者の生活保障を目的とされるようなものや受給者の内助の功を考慮してなされたものであれば、受給者の固有財産となるという方向性で考えれば良かったのですが、上の平成20年代以降の裁判例を見ているとこれも絶対ではないような形になってきており、規定自体の対策としてはなんともいえない形になってきております。ついには、半分は遺産で、半分は固有財産という裁判例も登場してきてしまっています。
ウ このように、死亡退職金は、相続財産(遺産)には含まれないというのが、現場レベルの実務では一般的な認識ですが、裁判レベルですと、これに反する裁判例もあり、事案に応じた事実認定により判断が分かれるというのが現状です。
本件でも、規定を根拠として、長男に死亡退職金を全額支給することを決議したとしても、裁判例上、必ず長男の固有財産になると判断されるとは言い難い状況になってきてしまっています。明確なことが言えず申し訳ないです。
ただ、規定を作っておくことで、規定に基づき株主総会決議で長男に支給すること決めておくに越したことはありませんので、法務的には、このような対応はされておいた方がよいと存じます。
なお、仮に、相続財産(遺産)に含まれるとされた場合は、会社から長男Aが相続人を代表し金銭を受け取り、その他の相続人の法定相続分については、彼らのために預かっているという法律関係になるかと思われます。
エ 対策
(ア)遺言
対策としては、遺産と認定された場合に備えて、「仮に死亡退職金が(相続財産)遺産に入ると裁判所で認定された場合には、死亡退職金を長男に相続させる」というような趣旨の遺言を残しておくことが考えられます。
ただし、このような遺言があることにより、死亡退職金が遺産に入る可能性があるということに相手方が気づくきっかけを与えてしまうおそれもあります。弁護士の間でさえも、死亡退職金は遺産にはならないという一般論が広まっている状況なので、何もなければ遺産にならないとしてスルーしてもらえる可能性もあり、遺言により逆に不利になってしまう可能性があります。
仮に、遺言を作成される場合には、このあたりのリスクをお客さんに説明された方がよいと思います。
なお、遺言で上記のような対処をしたとしても、残りの財産の金額次第では、相手方に遺留分が発生する可能性はあります。
(イ)死因贈与
もう一つの対策として、「仮に死亡退職金が(相続財産)遺産に入ると裁判所で認定された場合には、死亡退職金を長男に贈与する」旨の停止条件付き贈与契約を締結しておくという方法も考えられるところです。
こちらであれば、会長と長男Aのみの間で締結しておくことで、遺言よりは他の相続人に知られるリスクは小さくなります。ただし、こちらも会長が話してしまえば、他の相続人が知ってしまうおそれがありますので、やはり注意は必要かと思われます。
(2)特別受益該当性
ア 判断基準
死亡退職金が相続財産(遺産)の範囲には入らず、長男Aが取得するものだとしても、先生もご指摘のとおり、「特別受益」となる可能性があります。
【最高裁判例平成16年10月29日】は、本件とは異なり、死亡保険金の受け取りが特別受益にあたるかが問題となった事案ですが、同様の基準が死亡退職金の場合にも当てはまるものと考えます。以下のような内容です。
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死亡保険金の受け取ったことにより、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条(特別受益の規定)の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、特別受益にあたるとし、原則として特別受益にあたらないが、「特段の事情」がある場合には、特別受益にあたることがある。
そして、「特段の事情」の有無については、
○保険金の額
○この額の遺産の総額に対する比率のほか、
○同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の
諸般の事情を総合考慮して判断」
するとされています。
この判例は、保険金の金額は600万円弱、遺産の総額は6000万円程度という事案でしたが、保険金が特別受益にあたることを否定しています。
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また、こちらも死亡保険金の事例ですが、
以下のような比率で特別受益にあたることを肯定した事例、否定した事例がありますのでご参考になさってください。
【東京高裁決定平成17年10月27日】
相続財産の総額:1億134万円
生命保険金の額:1億129万円
結論:特別受益にあたる
【大阪家裁堺支部審判平成18年3月22日】
相続財産の総額:6963万円
生命保険金の額:428万円
結論:特別受益にあたらない。
【名古屋高裁決定平成18年3月27日】
相続財産の総額:8423万円
生命保険金の額:5154万円
結論:特別受益にあたる。
このように、死亡退職金が特別受益にあたるかどうかについては、上記の考慮要素に基づき、「特段の事情」が認められるかどうかにより判断されることになります。もちろん他の事情も考慮されますが、相続財産の総額と死亡退職金の金額が判断の基本になるものと考えられますので、上記裁判例も相場もご参考になさってください。
絶対ではありませんが、総相続財産の半分程度であれば、まず大丈夫かと考えていただいても良いかと思われます。
イ 対策
上記のとおり、特別受益にあたるかどうかは、全体を後から見た上で総合的な判断がなされるものなので、身も蓋もない話ですが、「特別受益」にあたるかどうかの結論をこれからの対応により左右することはなかなか難しいかと思います。
対策としては、死亡退職金が特別受益にあたるとされた場合に備えて、「持戻免除の意思表示」(民法903条)を行っておくのがよいかと存じます。「持戻免除の意思表示」とは、本来、特別受益があった分を考慮して長男・次男・長女の相続分を計算するところ、これをしなくていいよということを、被相続人である父親が生前に意思表示しておくことです。
具体的な方法としては、父親が、仮に長男への死亡退職金が特別受益となった場合には、これを持ち戻す必要はないということを記載し、書面にしておくことが考えられます。
なお、死亡退職金について、持ち戻しの免除の意思表示ができるかどうかはあまり議論されておらず、結論として認められない可能性もありますが、やっておくに越したことはないかと思います。
ただし、他の相続人から遺留分減殺請求がなされた場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度において無効となります。ですので、持戻し免除も、完全な対策にはならないという点はご留意ください。
(3)規定の文言の使い方
全体のバランス等もあるかと思いますが、
「1.死亡した役員に対する死亡退職金等は、遺族の中で役員の指定した者に支給する。」の中の「役員」が、死亡した役員を指すのか、他の役員を指すのか明確ではないので、以下のように修正された方がよいと存じます。
「1.死亡した役員に対する死亡退職金等は、遺族の中で『当該』役員の指定した者に支給する。」
また、死亡した役員(父親)が、長男を死亡退職金の受取人として指定したという事実を明確にしておくため、父親から長男を指定する旨の書面を会社宛に作成(実印を押す)し、会社で保管しておいた方がよいでしょう(もちろん可能であれば、長男としておいても良いと思います。)。
2 ご質問②~株式の生前贈与に関する留意点~
株式の生前贈与に関する留意点としては、
(1)特別受益該当性
(2)遺留分に関する注意点と対策
があると考えられます。
(1)特別受益該当性
株式の金額や遺産の総額等の事情によっては、贈与が特別受益となる可能性があります(民法903条1項)。こちらについても、上記のように持ち戻しの免除の意思表示を行っておくという対策があります。
また、他の相続人から遺留分減殺請求がなされた場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度において無効となることも上記のとおりですが、やっておくに越したことはないと思います。
(2)遺留分に関する注意点と対策
ア 遺留分に関する注意点
株式の生前贈与に対して遺留分減殺請求がなされ、株式の価値を価額弁償(金銭での返還)する場合には、その株式の価値は、価額弁償をするとき(相続の開始時ではない)の価額を基準に決めることになります。つまり、長男Aが会社に貢献し、業績が良くなっていった場合には、莫大な価額弁償を求められるおそれもあります。
イ 対策
ー事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第4条以下)の活用
株式の生前贈与をめぐる遺留分に関する争いを避けるためには、以下の方法がとれますので、他の相続人との関係にもよるところですが、ご検討いただければと存じます。
(ア)制度の概要
この特例では、一定の要件を満たす会社の後継者が、遺留分権利者全員との合意、および、所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることで、生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産から除外することができます。また、生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎の財産に算入する際の評価額をあらかじめ固定することもできます。
(イ)制度を利用して行うことができること
①生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産から除外する(いわゆる除外合意)
②生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産に算入する際の評価額をあらかじめ固定する(いわゆる固定合意)
(ウ)要件
①贈与の対象となる株式の会社が、中小企業(定義がややこしいですが、下記に「中小企業」にあたるための条件を記載しています。)であって、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場会社であること
②株式の贈与をする人が、過去または合意時点において会社の代表者であること
③株式の贈与を受ける人が、合意時点において会社の代表者であること
④株式の贈与により株式を取得したことにより、贈与を受けた人が議決権の過半数を保有することになること(すでに、過半数を保有している場合には使えません。)
→現状の長男の議決権数が50パーセントであればギリギリ使えます。
(エ)手続
①特例を利用するためには、贈与をする経営者(父親)の推定相続人全員(長男・次男・長女)と後継者(長男)で合意をし、合意書を作成することが必要です(兄弟間に争いがある状況であれば、この部分がもっともハードルが高いかもしれません。)。
②合意をしてから1ヶ月以内に、経済産業大臣に申請し、確認を受けなければなりません。
③経済産業大臣の「確認書」の交付を受けたら、確認から1か月以内に、家庭裁判所に申立書を提出し、許可を受ける必要があります。
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中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
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3 死亡退職金の相続財産(遺産)該当性についての裁判例
【東京地裁判決平成26年5月22日】結論:半分は遺産になり、半分はならない
本件と同様に、同族会社の代表取締役が亡くなり、現代表取締役兼大株主(ほぼ100%)である被相続人の妻が、死亡退職金を妻に支給することを株主総会からの委任を受けた取締役会にて決定したという事案において、
死亡退職金が遺産にあたるかどうかは、「死亡退職金の支給の根拠や経緯、支給基準の内容等の事情を総合考慮して判断する」とした上、
「本件退職金の支給は、会社の大株主であり代表取締役でもある被告(被相続人の妻)の提案により
本件総会において議決され、承認されたものであり、支給の可否や支給額について被告の意向が大きく影響していることに加え、その全額が被告に支給されていることからすれば、会社は、本件退職金を被告固有の財産として被告に支給することを決定したものであることが推認できる。もっとも、本件総会において確認されているとおり、本件退職金の支給は被相続人の功績に報いるためのものであり、その金額についても被相続人の勤続年数や創立者としての功績等を考慮して算定されていることからすれば、これが遺産としての性質を有していることも否定できない。」
として、支給された死亡退職金の半分については、妻固有の権利として妻が取得し遺産にはならないとしたのに対し、残りの半分については遺産の性質を有すると判断されています。
【大阪地裁判決平成22年9月10日】結論:遺産になる
本件とは異なり、退職金規定で、受取人に特定の人を定めず「遺族に対して支給する」との記載のみがあった事案ですが、
死亡退職金には労働者の功績に応じて、当該労働者に支払われる後払いの賃金の性質を有する(本来、被相続人である当該労働者が受け取るべきものである)ことを考慮し、「遺族」とは「相続人」のことを指すという解釈をして、死亡退職金が遺産に含まれるという判断をしました。
一方、以下のように、死亡退職金は遺産には含まれず、指定された受給者に受け取る権利があるとした最高裁の判例もあります。
【最高裁昭和55年11月27日】結論:遺産にならない
退職金規定に基づき、死亡退職金が支給された事例で、退職金規定の趣旨から解釈をして、遺産であることを否定しました。
退職金規定において、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは子は全く支給を受けないこと、直系血族間でも親等の近い父母が孫より先順位となり、嫡出子と非嫡出子が平等に扱われ、父母や養父母については養方が実方に優先すること、死亡した者の収入によつて生計を維持していたか否かにより順位に差異を生ずることなど、受給権者の範囲及び順位につき民法に規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なつた定め方がされているというのであり、右規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得するものと解する。
【最高裁昭和62年3月3日】結論:遺産にならない
退職金支給規定は存在しておらず、財団法人の決議によって支給された理事長の妻への死亡退職金の事例で、遺産であることを否定しました。
社団法人の理事会において退職金支給の相手方を被相続人である理事の妻と決議したのは、妻が、被相続人が運営する社団法人の運営その他を支えたという内助の功に報いるためであり、死亡退職金は、相続財産として相続人の代表者としての妻に支結されたものではなく、相続という関係を離れて妻個人に対して支給されたものである。