質問事項
税務調査により一部経費が社長の貸付金にするよう指摘を受けました。
社長に対する貸付金にすることはしょうがない部分がありますので修正するつもりですが、
下記の件については納得がいかないので、ご相談させてください。
1.貸付金に対する金銭消費貸借証書の押印義務等
貸付金にするに当たり、税務署が作成した金銭消費貸借証書に押印し、税務署に提出しなさいという
ことが、法律上どうなのか?
尚且つ、取締役会を行っていないのに、税務署が議事録を作成し、押印させることが法律上どうなのか?
2.金銭消費貸借証書に利息を設定することが許されるのか?
消費貸借契約は、原則、無利息の無償契約だと思います。ただ、営業として行うような場合は、利息を
取ることは多々あると思います。会社と社長間ではそれには該当しないと思います。もともと消費貸借
証書がなく、税務署に指摘されて修正する場合、税務署が利息を設定することが許されるのか?
以上、よろしくお願い致します。
>1.貸付金に対する金銭消費貸借証書の押印義務等
>貸付金にするに当たり、税務署が作成した金銭消費貸借証書に押印し、税務署に提出しなさいという
>ことが、法律上どうなのか?
>尚且つ、取締役会を行っていないのに、税務署が議事録を作成し、押印させることが法律上どうなの
>か?
先生のご指摘の通り、修正申告に応じるとしても、税務署が作成した金銭消費貸借契約書や取締役会議事録に押印する義務はありません。
税務署の行っていることは、質問検査権の範囲を明らかに超えています。
問題になれば、税務署としては、あくまでも任意の行政指導的な位置付けである旨説明すると思いますが、
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行政手続法第32条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
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行政指導であったとしても、会社と社長で決めるべき内容の消費貸借契約書を税務署が作成し提出するように指導する行為や会社が作成する議事録を作成し押印するよう指導する行為は、行政手続法32条1項の「当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱」する行為であり、行政手続法違反です。
(なお、税務調査の交渉として、役員賞与認定しないバターとして作成するように求めてきているという側面もあるようには
思いますが、本来は行政手続法違反です。)
2 ご質問②~金銭消費貸借契約に利息をつけることの可否~
>2.金銭消費貸借証書に利息を設定することが許されるのか?
>消費貸借契約は、原則、無利息の無償契約だと思います。
>ただ、営業として行うような場合は、利息を取ることは多々あると思います。
>会社と社長間ではそれには該当しないと思います。もともと消費貸借証書がなく、税務署に指摘されて修正する場合、
>税務署が利息を設定することが許されるのか?
金銭消費貸借契約にする場合でも、民事法上は、利息をつけることも、つけないこともできるので、当事者間(会社と社長)で、パーセンテージも含め自由に決めればよいです。もちろん、税務署が利息を設定した消費貸借契約書の条件のとおりにしなければいけないという義務もありませんし、その金銭消費貸借証書に押印する必要はないことは上記の通りです。
ただし、税法上、営利法人である株式会社からの無利息貸付については、無償取引についての有償取引同視説(無償取引:①有償取引と②受領対価の相手方への贈与等との2段階の取引と見る見解)を前提に、
①について、無利息であることに合理的な経済目的がない限り、その当事者間で通常ありうべき利率相当額分について法人税法22条2項により株式会社の「益金」と認識されると考えられています(清水惣事件_大阪高裁昭和53年3月30日判決)。また、①で益金認識される場合には、②について、寄付金または役員賞与等とされるおそれが強いので、ご留意ください。
一方で、社長の所得税関連では、その部分が給与として課税されるおそれがある点もご留意いただければと存じます。
(参考:https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2606.htm)
全体のお話をお伺いしないとなんとも言えない部分ですが、税務署としては、この「通常ありうべき利率相当額分」という部分を明確にしたいという趣旨で、上記違法な指導をしているのかもしれません。税務署に何を根拠に上記のような違法な指導をしているのか?ということを指摘すべきですし、その際に、税務署の意図もわかるかと存じます。
よろしくお願い申し上げます。