お客様が新規に飲食店をオープンするため店舗賃貸契約をした。
店舗の二階以上は住宅
契約書の禁止事項には異臭・騒音・異音・熱風・不衛生・近隣への迷惑や妨害とある。
契約後に近隣住民からの聞き取りで前の飲食店は近隣住民からの苦情で追い出されたことが判明
質問
1、不動産会社は前回の契約解除理由を苦情によるものだと告知する義務はないのでしょうか?
2、上記前提記載の禁止事項が行われ改善できない場合契約解除される可能性はありますか・また可能ですか?
3、禁止事項が抽象的でどの程度かわかりづらいと思うのですが、苦情がでればアウトということでしょうか?
4、その他気をつけることはありますか?
お客様は飲食店なので異臭・騒音はある程度でるであろうし(神経質な人がいればなおさら)、
契約解除されてしまえばば初期投資の損害が数千万円になる。これがわかってるなら契約しなかったといっています。
よろしくお願いいたします。
(1)ご質問①~告知義務の有無~
>1、不動産会社は前回の契約解除理由を苦情によるものだと告知する義務はないのでしょうか?
事情いかんにもよりますが、告知義務を認めるのは難しいと考えられます。
(2)ご質問②~解除の可能性~
>2、上記前提記載の禁止事項が行われ改善できない場合契約解除される可能性はありますか・また可能ですか?
一般的には、解除するのは難しいと考えられます。
(3)ご質問③~苦情を理由とする解除~
>3、禁止事項が抽象的でどの程度かわかりづらいと思うのですが、苦情がでればアウトということでしょうか?
苦情が出たというだけで、即解除になることはないと考えられます。
(4)ご質問④~その他注意点~
>4、その他気をつけることはありますか?
通常の飲食店の営業で生じる程度の騒音等であれば、契約を解除できないと考えられます。
ただ、近隣から、騒音等について苦情が出た場合には、可能な範囲で改善を行ってください。あくまで可能な範囲で構いません。誠実な対応をしていたことが、いざというときに解除を否定する方向の事情になります。そして、改善した点について文書等にしておけば、万が一のトラブルの場合に、証拠として使うことができます。
また、更新時での家賃交渉等にも有利に利用できる場合があります。
2 回答の理由
(1)ご質問①~告知義務の有無~
判例上、借主に重大な不利益をもたらすおそれがあり、契約をするかどうかの判断に影響を及ぼすことが予想される事項については、告知義務が認められる場合があります。
たとえば、賃貸する部屋で自殺があった場合などは、告知義務が認められます。
また、近隣トラブルに関する判例で、以前の借主が、隣人から「子供がうるさい。黙らせろ。」と言われたり、水をかけられたり、泥を投げつけられるなどして、警察に相談していたという事情があった場合に、このようなトラブルがあったことについて、告知義務が認められた事例があります。
このように、借主が建物を利用するのに著しい支障が生じるような事情がある場合には、告知義務が認められる可能性はあります。
ご質問にある「前の飲食店は近隣住民からの苦情で追い出された」というのが、どのような経緯であったかにもよりますが、一般的には、この事情について、告知義務があるとは認められないと考えます。
なお、「前の飲食店は近隣住民からの苦情で追い出された」というのが、近隣住民から営業妨害行為があった結果、営業が続けられなくなって出て行ったというようなことであれば、告知義務が認められる可能性はありますが、ご質問を拝見する限り、このような事情ではなかったのかなと思います。
(2)ご質問②~解除の可能性~
賃貸借契約を解除する場合、契約違反(禁止行為)があったのみでは足りず、その契約違反があったことが、貸主と借主の「信頼関係を破壊する」ような重大なものであることが必要です。解除が認められるためのハードルは相当高いです。
異臭や騒音でいえば、通常の飲食店営業をしていれば発生するようなものについて、そのことで貸主と借主の「信頼関係を破壊する」とは言えませんので、解除は認められないと考えられます。
裁判例では、マンション内でのカラオケ屋の営業による騒音や、24時間営業のライブハウス営業による騒音を理由に、解除が認められたものがありますが、ご質問のケースでは、そこまでの騒音にはならないと考えられます。
(3)ご質問③~苦情を理由とする解除~
近隣から苦情が出ているというのは、解除が認められるかどうかの考慮要素にはなりますが、苦情が出たら即アウトということにはなりません。重要なのは、苦情の理由となっている騒音や異臭などが、どの程度のものなのかという点です。
それほどの大きな音でもないのに、神経質な人が苦情を言って来ることもありますが、それにより、解除ができるということになるわけではありません。
(4)ご質問④~その他注意点~
上記の通り、通常の飲食店の営業で生じる程度の騒音等であれば、契約を解除できないと考えられます。
仮に、貸主から、騒音について近隣から苦情が出ているという話があれば、誠実に対応することをお勧めします。苦情に対して、誠実に対応していたということが、解除を否定する方向の事情として考慮されます。指摘を受けた事項に対して改善した点を文書で残しておくのもよいでしょう。万が一の場合に、証拠として使うことができますので。
また、更新時での家賃交渉等にも有利に利用できる場合があります。
よろしくお願い申し上げます。