会社法 法人税

会社法における役員の職務執行開始日

役員の職務執行開始日についてですが、以前から大いに疑問に思っていたことがありまして、確認させて下さい。

役員給与のルールなのですが、下記の見解が国税庁から出されています。

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http://www.yagasaki.co.jp/pdf/zdb_pdf_33.pdf
会社法においては、役員の選任やその職務執行の対価の決定が株主総会の決議により行われること(会社法
329①、332①、361①)、取締役は計算書類を定時株主総会に提出しその承認を受けなければならないこと(会社法438)などと規定されているところです。これらの規定からすれば、一般的には、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価と解するのが相当です。
事前確定届出給与も役員の職務執行の対価であることに変わりはありませんから、一般的には、事前確定届出給与に係る職務の執行も定時株主総会終結の時から開始されることとなります。したがって、「職務の執行を開始する日」とは、定時株主総会の開催日ということになります。
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国税庁は、一般的にと言いながらも、役員の職務執行開始日=定時株主総会と言っているのですが、会社法ではここにあるように厳格に解釈する必要はあるのでしょうか。例えば、定時株主総会の一か月後から、役員の職務執行がスタートする、といった定めは会社法上問題あるのでしょうか。

個人的には、役員の職務執行開始日=定時株主総会というルールには非常に違和感があります。会社法でそう考えなければならないのであれば、その法的根拠についても教えてください。

宜しくお願い致します。

1 ご質問と回答の結論

>国税庁は、一般的にと言いながらも、役員の職務執行開始日=定時株主総会と言っているのですが、会
>社法ではここにあるように厳格に解釈する必要はあるのでしょうか。例えば、定時株主総会の一か月後
>から、役員の職務執行がスタートする、といった定めは会社法上問題あるのでしょうか。
>個人的には、役員の職務執行開始日=定時株主総会というルールには非常に違和感があります。会社法
>でそう考えなければならないのであれば、その法的根拠についても教えてください。

 役員の就任時期を、株主総会の決議の後にすることについて、会社法上、制限はありません。
 もっとも、「職務執行開始日」というのは、会社法上の概念ではなく、税法令上の概念ですので、「職務執行開始日」が、「役員の就任時期」と必ずしも一致するものではなく、実態等の個別事情を考慮して、判断されるものと考えられます。

2 回答の理由

 会社法上、会社と役員との関係は委任契約であり、契約上の就任時期に職務も開始されることになります。

 役員の選任には、株主総会決議が必要とされていますが(会社法329条)、選任決議の効力発生時点を、株主総会の決議時より後にすることは禁止されていません。
 たとえば、株主総会決議で、選任の効力発生時点を、役員の「就任時」と定めて、本人から就任の承諾をもらった時(委任契約の締結時)に、役員の地位につくという扱いもできます。

このように、会社法上、「役員の就任日」を、株式会社の決議時より後にすることは可能です。
(ただし、実務上は、決議に先立って就任の承諾を得ていることがほとんどだと思いますので、選任決議と同時に、役員に就任することになるのが通常だと考えられます。)

 もっとも、「役員の職務執行の開始日」というのは、会社法上の概念ではなく、税法令上の概念ですので、必ずしも「役員の就任日」とリンクするものではなく、実態等の個別事情を考慮して、判断されるものと考えられます。

 先生に引用していただいたQ&Aにも、
 「事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日がいつであるかについては、基本的には、その役員がいつから就任する者であるかなど、個別の事情に応じて判断することになります。」
 との記載があり、このような趣旨で書かれているものと考えられます。

 なお、事前確定届出給与の届出期限は、
 ①給与を支給する旨の株主総会決議等の決議の日から1か月以内
 ②職務の執行を開始する日から1か月以内
 (③事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から4か月以内)
 のいずれか早い日までに届け出をしなければならないとされています(法人税法34条1項2号、法人税法施行令69条2項1号)。

 ですので、役員の選任決議と、給与の決定の決議を同一の総会で行なったとすると、「②職務の執行を開始する日」が総会の日より後だとしても、「①給与を支給する旨の株主総会決議等の決議の日から1か月以内」が届出期限となります。

 よろしくお願い申し上げます。