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民事訴訟法の形式的証拠力

事情があって民事訴訟法について調べているのですが、以下の点について
教えてください。

民事訴訟法上、形式的証拠力と実質的証拠力の二つがあるとされています。

形式的証拠力については、書証が偽造でないことを意味するとwikipediaで
解説されていますが、ここで偽造でないこととは、「特定人の意思に基づいて
作成されたこと」と解説されています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%B8%E8%A8%BC#.E5.BD.A2.E5.BC.8F.E7.9A.84.E8.A8.BC.E6.8B.A0.E5.8A.9B

ここで問題になるのが、税務調査で作成される質問応答記録書(他省庁(警察・検察等)にて、作成された供述調書等を参考にして、作成されます)という書類と、確認書(いわゆる一筆。納税者が完全な任意で税務署に出す書類です)という書類の相違です。

前者は公文書として扱われますので、形式的証拠力を有し、後者は私文書として扱われますので、納税者の押印がない限り、形式的証拠力を有しないと推定されないとされています。

両者の相違は、別紙をご参照下さい。

上記を踏まえて疑問に思っているのが、押印の性格です。確認書は押印するなと
よく言われるのですが、それは押印しなければ形式的証拠力が推定されませんので、
よく分かります。

一方で、質問応答記録書については、押印しなくとも形式的証拠力に変わりはありませんから、実質的証拠力という観点からは、押印があった方が裁判官の心証を得やすいという性格があるにせよ、押印を拒否してもそこまで大きな違いがないかと思っています。

先に申しました通り、形式的証拠力がある以上、特定人の意思(納税者の意思になる
という理解で問題ないでしょうか)に基づいて作成されたことと推定されるわけです
から。

なお、質問応答記録書の押印を拒否する場合、公務員である調査官は、「内容には
誤りがない旨認めたが、~の理由により、署名押印を拒否した」と付記することに
なっています。このような文言があれば、全く押印は関係ない気がするのですが…

となると、納税者にとって不利にならないためには、質問応答記録書の内容を細かく
確認するか、もしくは作成そのものを拒否するしかないような気もするのですが、
この認識で合ってますか?

分かりづらい質問で失礼いたしますが、よろしくお願いいたします。

結論と理由を分けがたいため、インラインで失礼します。

>上記を踏まえて疑問に思っているのが、押印の性格です。確認書は押印するなと
>よく言われるのですが、それは押印しなければ形式的証拠力が推定されませんので、
>よく分かります。

 おっしゃる通りです。

>一方で、質問応答記録書については、押印しなくとも形式的証拠力に変わりはありませんか
>ら、実質的証拠力という観点からは、押印があった方が裁判官の心証を得やすいという性格が
>あるにせよ、押印を拒否してもそこまで大きな違いがないかと思っています。
>先に申しました通り、形式的証拠力がある以上、特定人の意思(納税者の意思になる
>という理解で問題ないでしょうか)に基づいて作成されたことと推定されるわけですから。

 この場合の「特定人の意思」とは、作成者の意思、つまり「調査担当者の意思で作成されたもの」ということです。納税者の意思ではありません。

 ですので、形式的証拠力が認められたとしても、納税者の署名または押印がない場合には、その納税者が質問応答記録書に記載された内容のとおりの回答をしたという事実を認定するための実質的証拠力はかなり弱いです。
 証拠としては、担当調査官が、「納税者が、質問応答記録書に記載された内容のとおりの回答をした」と一方的に言っているのと何ら変わりません。

 納税者の署名または押印がない質問応答記録書のみしか証拠がない場合には、納税者が質問応答記録書に記載された内容のとおりの回答をしたという事実が認定される可能性は、ゼロに近いと考えていただいて問題ないかと思います。

 その他にも証拠があり、それと整合性がある場合に補充的に利用できるという程度の意味しかもたないと考えられます。

>なお、質問応答記録書の押印を拒否する場合、公務員である調査官は、「内容には
>誤りがない旨認めたが、~の理由により、署名押印を拒否した」と付記することになっていま
>す。このような文言があれば、全く押印は関係ない気がするのですが…
>となると、納税者にとって不利にならないためには、質問応答記録書の内容を細かく
>確認するか、もしくは作成そのものを拒否するしかないような気もするのですが、
>この認識で合ってますか?

 「内容には誤りがない旨認めたが、~の理由により、署名押印を拒否した」という文言が記載されていたとしても、結局は、質問応答記録書を記載した担当調査官が、そのように言っているという以上の意味は持ちません。
 結局この部分についても、実質的証拠力は弱いということです。

 もっとも、「内容には誤りがない旨認めた」というような記載はされないに越したことはことはありませんので、「内容に誤りがある」または「内容について短時間に確認できない。」という理由で、署名・押印を拒否すると記載してもらうようにした方がよいでしょう。
 仮にそのような対応をしてもらえない場合には、そのやりとり自体を秘密録音しておくという方法が、良いかと存じますが、いかがでしょうか。

 よろしくお願い申し上げます。