相続開始日:平成27年9月
被相続人:甲
相続人:乙(甲の配偶者)、丙(甲の子)の2人
甲は生前、A(甲の友人)とB(Aの配偶者)に対し
金銭の貸付をしておりましたが、平成24年1月付で裁判所より
2名分の「再生計画案」と「再生計画による返済計画表」が
届きました。
返済計画表の記載は以下になります。
①Aの返済計画表
確定再生債権額 : 7,000,000円
再生計画による返済総額: 1,050,000円
各回の返済額 : 29,170円
最終回の額 : 29,050円
②Bの返済計画表
確定再生債権額 : 3,000,000円
再生計画による返済総額: 450,000円
各回の返済額 : 12,500円
甲の預金通帳には、平成24年5月からAの名前で毎月
41,670円の入金があります。(AとBの返済金額の合計)
入金は
平成24年5月~平成27年4月:41,670円×36回=1,050,120円
平成27年5月~平成27年8月:50,000円×4回=200,000円
合計:1,250,120円
となっております。
この場合、甲の相続財産として申告すべき貸付金の金額は
どう考えれば宜しいのでしょうか。
①返済計画表による返済総額は支払済みのため、貸付金は無しと
考えて宜しいのか、
②確定再生債権額から返済された金額を控除した金額となるのか、
③あるいは異なる解釈となるのか、
法的な取扱いに関しご教示頂けますよう宜しくお願い致します。
>この場合、甲の相続財産として申告すべき貸付金の金額は
>どう考えれば宜しいのでしょうか。
>①返済計画表による返済総額は支払済みのため、貸付金は無しと
>考えて宜しいのか、
>②確定再生債権額から返済された金額を控除した金額となるのか、
>③あるいは異なる解釈となるのか、
>法的な取扱いに関しご教示頂けますよう宜しくお願い致します。
①返済計画表による返済総額は支払済みのため、貸付金は無し
になると考えられます。
2 回答の理由
ご質問のケースでは、債務者について個人再生手続が行われ、債務の総額を、「再生計画による返済総額」の金額に減額するという決定がなされています。
ですので、「再生計画による返済総額」が支払済みであれば、貸付金は残っていないという扱いになるものと考えられます。
なお、個人再生が行われた場合、減額された金額(「確定再生債権額」と「再生計画による返済総額」との差額)の債権は、厳密にいえば、法律上完全に消滅するわけではなく、いわゆる「自然債務」というものになります。
「自然債務」とは、裁判で相手に請求することはできないが、相手が任意に弁済した場合には、弁済は有効になる(弁済してもらったものを返す必要はない。)という債務のことです。
ちょっとわかりにくいですが、弁済を強制できないけど、弁済してもらったら返さなくてよいというふうに考えていただければよいと思います。
このような不完全な債権なので、貸付金として、相続財産に計上する必要はないものと考えられます。
なお、「財産評価課税通達205(貸付金債権等の元本価額の範囲)(2)」においても、個人再生において減額された部分は、貸付金の金額から控除するものとされています。
よろしくお願い申し上げます。
(引用)財産評価基本通達
(貸付金債権の評価)
204 貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は、次に掲げる元本の価額と利息の価額との合計額によって評価する。
(1) 貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額
(2) 貸付金債権等に係る利息(208≪未収法定果実の評価≫に定める貸付金等の利子を除く。)の価額は、課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額
(貸付金債権等の元本価額の範囲)
205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。
(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額
イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額
ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額