民法 労働法

労災と交通経路

本日お聞きしたいのは、飲食店のアルバイトについて
 事故が起こった時に労災が認められるかを質問させてください。

 学生アルバイトは、学校の近くで勤務をし
 定期券をつかって通います。

 しかし、学校がない時は別のルートで通うほうが
 時間が短縮できることがあります。

 このように、都度、通勤ルートが変わるようなケースで
 事故が発生した時は、労災はどのように扱うのでしょうか。

 夜に若い女性を勤務させるので、
 注意しておきたくて質問させていただきました。

 よろしくお願いいたします。

1 ご質問及び回答の結論

>学生アルバイトは、学校の近くで勤務をし
>定期券をつかって通います。
>しかし、学校がない時は別のルートで通うほうが
>時間が短縮できることがあります。
>このように、都度、通勤ルートが変わるようなケースで
>事故が発生した時は、労災はどのように扱うのでしょうか。

ご質問の中で想定されるケースを例に言えば、通勤経路の中で交通事故にあった場合、

【出勤時】
自宅→学校→勤務先の場合の交通事故は、労災認められない
自宅→勤務先の場合の交通事故は、労災認められる
【退勤時】
勤務先→自宅の場合の交通事故は、労災認められる

という結論になると考えられます。

なお、ご質問の中で懸念されているように、「通勤ルートが都度変わる」という点や「定期券を使っているかどうか」は、労災の認定にはあまり関係ありません。
あくまで、個々の出勤または退勤が、以下の回答の理由にある「通勤災害」の要件を満たすかどうかという観点から判断されることになります。

2 回答の理由
(1)「通勤災害」とは

交通事故が起こった場合に労災が認められるのは、労災保険法7条1項2号に定める、いわゆる「通勤災害」にあたると判断される場合です。

【7条1項2号】
労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

この「通勤」とは何かというのが、労災保険法7条2項1号に定められています。

【7条2項1号】
前項第二号の「通勤」とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一  住居と就業の場所との間の往復

(2)「通勤」に当たるための要件

大まかに言うと、「通勤」に当たるための要件は以下の2つです。
①就業に関し
②住居と就業場所との間を合理的な経路及び方法により往復すること

(3)①就業に関し

「就業に関し」とは、業務に就くため、または、業務を終了したことにより行われるものであることをいうものとされています。

就業時刻を目途に、自宅から勤務先に直接向かう場合や、就業終了後ただちに自宅に向かう場合が典型例です。

たとえば、午後からの出勤であるにもかかわらず、午前中に別の用事を済ませてから午後出勤する目的で、自宅を出る場合、その外出は、業務に就くために行われるものとはいえないため、「就業に関し」にはあたりません。

ご質問の中で、自宅→学校→勤務先というルートで出勤される場合、
上記の例と同様に、業務に就くために、自宅から外出しているものとはいえず、「就業に関し」という要件を満たさない可能性が高いと考えられます。

逆に、学校がない日に、学校に寄ることなく、自宅から勤務先に直接向かうのであれば、「就業に関し」にあたるものといえます。

(4)②住居と就業場所との間を合理的な経路及び方法により往復すること

ここにいう「合理的な経路及び方法」とは、自宅と勤務先を往復するのに、一般に使われるであろう経路や方法をいいます。

自宅と勤務先を結ぶ最短距離や最適な交通手段ということまでが求められているわけではありません。
明らかな大回りや迂回などをしていなければ、「合理的な経路及び方法」といえるものと考えていただければよいかと思います。

ご質問のケースで、
出勤時:自宅→勤務先
退勤時:勤務先→自宅
というふうにどこにも寄り道をせず、電車で通うのであれば、「合理的な経路及び方法」で、住居と就業場所を往復するものと言えます。
また、「①就業に関し」の要件も満たしますので、その途中に交通事故にあったとすれば、「通勤災害」と認められるものと考えられます。

(5)まとめ

ご質問の中で想定されるケースを例に言えば、通勤経路の中で交通事故にあった場合

【出勤時】
自宅→学校→勤務先の場合は、労災は認められない
自宅→勤務先の場合は、労災は認められる
【退勤時】
勤務先→自宅の場合は、労災は認められる

という結論になると考えられます。

なお、ご質問の中で懸念されているように、「通勤ルートが都度変わる」という点や「定期券を使っているかどうか」は、労災の認定にはあまり関係ありません。
あくまで、個々の出勤または退勤が、「通勤災害」の要件を満たすかどうかという観点から判断されることになります。

よろしくお願い申し上げます。