民法 贈与税

慰謝料と養育費について

相談者Aと愛人Xとの間に子Y(非嫡出子)が生まれた場合の相談です。
宜しくお願いします。

1. 慰謝料について

AとXとは揉めているわけではなく、現在も関係は継続しているのですが、
XとY(非嫡出子)の今後の生活のために、Xに対して慰謝料等の非課税と
なる名目で一時金(例えば2千万円位)を渡すことは可能でしょうか?
このような場合、子を認知した場合と認知していない場合とでは、
法律上の取り扱いの違いはあるのでしょうか?

2.扶養義務者の範囲

民法上、及び相続税法上、直系血族は扶養義務者となりますが、本件の場合、
AはYの扶養義務者となるでしょうか?
認知こそしてませんが、AはYの父親であることを認識しています。

3.財産分与について

Aとその妻Bとが、それぞれ次のような財産を所有していた場合において、
Aに原因があって協議離婚したときの財産分与はどのように考えるものでしょうか?
≪所有財産≫
・夫A  非上場株式5億円(時価)、預金や不動産は殆どなし。
・妻B  現預金2億円、不動産1億円(時価)

また、原因をあえて問わず円満に協議離婚した時の財産分与はどのように
考えるものなのでしょうか?

以上、宜しくご教示の程お願いいたします。

1 ご質問及び回答の結論

(1)ご質問事項1について
>慰謝料について
>AとXとは揉めているわけではなく、現在も関係は継続しているのですが、
>XとY(非嫡出子)の今後の生活のために、Xに対して慰謝料等の非課税と
>なる名目で一時金(例えば2千万円位)を渡すことは可能でしょうか?
>このような場合、子を認知した場合と認知していない場合とでは、
>法律上の取り扱いの違いはあるのでしょうか?

XはAから慰謝料を受け取る権利がないため、慰謝料名目で一時金を渡すことは難しいです。

また、非課税となる養育費として、AからXに継続的に金銭を渡すことも考えられますが、後述(ご質問②)するとおり、認知をしていない現状では、AがYを扶養する義務はないため、これもできません。
仮に、認知をすれば、養育費として支払うことは可能でしょう。

(2)ご質問事項2について
>扶養義務者の範囲
>民法上、及び相続税法上、直系血族は扶養義務者となりますが、本件の場合、
>AはYの扶養義務者となるでしょうか?
>認知こそしてませんが、AはYの父親であることを認識しています。

AにYの扶養義務はありません。

(3)ご質問事項3について
>財産分与について
>Aとその妻Bとが、それぞれ次のような財産を所有していた場合において、
>Aに原因があって協議離婚したときの財産分与はどのように考えるものでしょうか?
>≪所有財産≫
>・夫A  非上場株式5億円(時価)、預金や不動産は殆どなし。
>・妻B  現預金2億円、不動産1億円(時価)

>また、原因をあえて問わず円満に協議離婚した時の財産分与はどのように
>考えるものなのでしょうか?

 法律の考え方のみからすると、財産分与の割合は夫・妻ともに約2分の1ずつと考えるのが一般的です。ただし、一方に離婚の原因がある場合には、慰謝料の意味も含め、原因を作った方の取り分を少なくすることがよく行われます。
 協議離婚をする際は、上記の考え方を基本としつつ、お互いの今後の生活のことなどを考慮して、個々の財産をどのように、どのような割合で分けるかは、ケースバイケースです。

2 ご回答の理由

(1)ご質問事項1について

 慰謝料は、民法上、不法行為に基づく損害賠償請求権です。

 XがAに対して、慰謝料を請求する(受け取る権利を有する)ためには、AがXの法律上の利益(権利)を侵害していることが要件となります。
 しかし、AがXを愛人としていること自体は、Xの法律上の利益(権利)を侵害していると、法律上は評価されません。

 Aが、他の女性と結婚している事実を隠してXと交際していたなどの事情があれば別ですが、そうでもない限り、XがAに対して慰謝料請求をする理由はありません。
 ご質問を拝見する限り、Aが結婚している事実をXに隠していたというような事実はないものと思われますので、Xには慰謝料を受け取る権利はないと考えられます。

 また、非課税である養育費として支払うことも考えられますが、AがYを認知していない現状では、AにYの扶養義務はない(ご質問②参照)ため、養育費として支払うこともできません。
 認知をすれば、Aは父親として、Aを扶養する義務が生じますので、Xに養育費として支払うことは可能です。

(2)ご質問事項2について

 結婚していない男女の間に子が生まれた場合、認知することではじめて、父親と子の間に法律上の親子関係が発生します(民法779条)。
 仮に、生物学上(DNA的には)、男性と子の間に親子関係があっても、認知するまでは、法律上の親子とは認められません。
 父親が自分の子であると事実上認めていたとしても、結論は左右されません。

 ですので、認知していない現状では、法律上、AはYの父親ではなく、AにYの扶養義務はありません。

(3)ご質問事項3について

 離婚に伴う金銭的給付としては、財産分与と慰謝料の2種類があり、それぞれは異なる性質のものです。

 財産分与は、結婚中に夫婦で築いた財産の清算であり、結婚中に築いた財産を(結婚前に夫・妻が独自に有していた財産は、財産分与の対象には含まれません。)夫・妻にそれぞれに分けます。
 財産分与の割合は、財産の形成や維持に、夫婦それぞれがどの程度貢献したのかという点を考慮して決められますが、夫・妻で2分の1ずつとするのが法律上の一般的な扱いです。
 この割合は、一方に離婚の原因があるか否かで違いはありません。

 慰謝料は、一方に離婚の原因がある場合(不倫、DVなどが典型的です。)に、原因を作った方が相手方に支払うものです。
 これは、一方に原因がある場合でなければ支払う義務はありません。

 協議離婚をする際には、これらを踏まえ、財産をどのように分けるかを話し合うことになります。
 一方に離婚の原因がある場合には、財産分与と慰謝料の支払いを別にするのではなく、財産分与の割合で調整する(離婚の原因を作った方が、取り分を少なくする。)のが一般的でしょう。

 法律上は、財産分与の割合は2分の1とするのが一般的ですが、協議離婚の際の財産分与では、割合をきっちりと2分の1とするケースは少ないように思います。
 たとえば、妻が専業主婦の場合、妻の今後の生活のために、多くを妻に分与するというケースが多いです。

 いずれにしても、法律上の取り分の割合を念頭に、お互いの合意できる条件を探ることになります。
 個々の財産をどのように分けるかはケースバイケースです。

 よろしくお願い申し上げます。

明確なご回答をありがとうございました。

(3)の財産分与につきまして、念のため確認させてください。
例えば次のような分け方をした場合に、贈与と認定されことは
ないと考えて宜しいでしょうか?

≪現在の所有財産≫
・夫A  非上場株式5億円(時価)、預金や不動産は殆どなし。
・妻B  現預金2億円、不動産1億円(時価)

≪財産分与後≫
・夫A  非上場株式3億円 現預金1億円
・妻B  現預金1億円、不動産1億円、非上場株式2億円

お忙し中、恐縮ですが、どうぞ宜しくお願いいたします。

1 ご質問

>例えば次のような分け方をした場合に、贈与と認定されことは
>ないと考えて宜しいでしょうか?
>≪現在の所有財産≫
>・夫A  非上場株式5億円(時価)、預金や不動産は殆どなし。
>・妻B  現預金2億円、不動産1億円(時価)
>≪財産分与後≫
>・夫A  非上場株式3億円 現預金1億円
>・妻B  現預金1億円、不動産1億円、非上場株式2億円

2 回答

※ご質問にある財産が、夫婦で協力して築いた財産であり財産分与の対象となる(結婚前から夫もしくは妻が独自に所有していた財産ではないこと、及び、結婚後に取得したとしてもどちらか一方が相続で取得したなど夫婦が協力して築いた財産ではない)ことを前提として回答します。

基本的に、離婚に伴う財産分与による財産の移転は、贈与にはあたりません。
ただし、一般の財産分与として与えられるべき金額を大幅に超えるような場合は、例外的に、財産分与として適正な金額を超えた部分は贈与とみなされる可能性があります。

ご質問のケースでは、財産を2分の1ずつで分けられていますので、贈与とみなされることはないでしょう。

なお、ないとは思いますが、贈与税を免れるために、離婚に伴う財産分与を装って財産を移転した場合(離婚の実態がない場合)には、金額の多寡を問わず、贈与として課税対象になる場合があります。

よろしくお願い申し上げます。