●前提
私のお客様(売主)は、ネット通販専門業(個人事業者)で
ホームページやオークションサイトで物販(主にCDや中古レコード等)の売買を
行っており、
10日ほど前にオークションでレコードプレイヤーを販売しました。
買い手がつき一旦は売買成立しましたが、キャンセル依頼がありました。
●状況説明
以下、売主(私と表現)と買主(先方と表現)の状況説明及びやりとりです。
先方)本日セッティングしてレコードを回したら回転速度が可笑しいとのこと。(⇒
因みに既に1週間経過してます)
因みに誤差は4分47秒の曲が、5分02秒程度
私)
商品記述に
出品前に全ての機能をチェックしており、通常使用で問題ありませんでした。(但し
回転精度等の精密テストは行っておりません)
返品の可否:不可
と記載されてます。
私)レコードプレイヤーの底を開けてネジで調整すれば速度を正常に戻せる事を伝え
た。
因みに商品自体は30年ほど前のヴィンテージプレイヤーです。取り扱い説明書はあ
りません。速度調整はネットで調べて知った方法です。
先方)ずぶの素人なのでそんな事は出来ない。以下ご本人のメッセージ内容
ご承知のように、当方、ずぶの素人ですので、回転精度云々の詳しいことはわかりま
せんが、速度調整等難しいことはとてもできそうにありません。
なによりも、音楽が正常に再生できないと言うことは(耳で聞いてわかるほど)私に
とっては、欠陥商品と言わざるを得ません。
「ヴィンテージ・ベルトドライブ式レコードプレイヤーだと良くある事」かもしれま
せんが、レストアが必要なら、その旨明記しておいて欲しかったです。
したがって、今回は、申し訳ありませんが、縁が無かったと言うことで、キャンセル
させていただきたいと思います。
インターネット取引は、信用取引です。また縁があったら、よろしくお願いします。
品物の送付が終了したら、この取引ナビで連絡します。
私)レストアと云う大袈裟な事ではなく、ヴィンテージオーディオで楽しむならその
程度の調整は範囲内と思われます。
「回転速度の精密テストは行ってない」+「調整の効く部分」いずれにしても返品返
金対象にはならないと思っています。
●質問
このケースどういう対処方法が良いと思われますか?
もう先方は既に返品返金の頭になっているみたいなんですが、
売主として納得いかないみたいです。
宜しくお願い致します。
>このケースどういう対処方法が良いと思われますか?
>もう先方は既に返品返金の頭になっているみたいなんですが、
>売主として納得いかないみたいです。
2 回答の結論
今回のケースでは、相手方の返品・返金の請求が認められる可能性は乏しいものと考えられます。
その上で、返品・返金は認めないというスタンスをとることで問題はないかと思われます。
ただし、この後の先方とのやりとりの精神的負担等の対応コストもかかりますので、この時点で返品を認めるというのも、お客様のご希望があれば、あり得るところです。
このあたりは、売買代金額が大きいのかどうかも考慮して、ご判断いただくことになるかと思います。
3 回答の理由
(1)クーリングオフの適用について
クーリングオフとは、一定期間内であれば「無条件」で、一方的に契約を解除できる制度ですが、通信販売には、基本的にクーリングオフ制度は適用されません。
通信販売には、クーリングオフと似て非なる制度として、「法定返品権」(特商法15条の2)という制度の適用があります。
この制度は、「商品」の引き渡しがあった時点から8日間、買主が返品を要求できるというクーリング・オフのような制度です。
しかし、クーリングオフとの決定的な違いとして、特約等で、買主の返品する権利を排除(返品は認めない。)又は制限(たとえば、返品は商品を受け取った時から3日以内)をすることが可能です。
>商品記述に
>返品の可否:不可
>と記載されてます。
とのことですので、特約で排除しており、今回は、法定返品権の適用もないと考えられます。
ですので、無条件に返品を認めなければならない、法的根拠はありません。
(2)瑕疵担保責任(民法570条・566条)
以下の場合、買主は、瑕疵担保責任による契約の解除をし、売買代金額の返還を求めることが可能です。
①売買契約の目的物に「瑕疵」があること
②「瑕疵」があることにより、契約の目的を達成できないこと
・①について
「瑕疵」があるとは目的物に欠陥がある場合ですが、その欠陥が「瑕疵」にあたるか否かは、その欠陥があることにより通常想定される品質のレベルを下回っているかどうかにより判断されます。
その際は、中古品であるということや、買主・売主間での合意の内容、欠陥の重大性などの事情を総合して判断します。
今回でいえば
>商品記述に
>出品前に全ての機能をチェックしており、通常使用で問題ありませんでした。(但し回転精度等の精密テストは行っておりません)
と記述されていることや、回転精度に問題があったことが、どれほど重大なことなのかというあたりがポイントになるものと考えられます。
これ以上は、より具体的な事情をお伺いしないと、正確な回答はできかねますが、少なくとも「瑕疵」にあたると言い切れるケースではありません。
・②について
速度調整などにより回転精度の問題を解決できるのであれば、回転精度に問題があったことにより、契約の目的を達成することができないとは言えないと考えられます。
ですので、お伺いした事情の限りでは、瑕疵担保責任に基づく解除というのも考え難いです。
(3)今後の対応
上記のように、今回、相手方が返品・返金(法律的には、契約の解除・売買代金の返還)を求める根拠は乏しいものと考えられます。
返品・返金について
>売主として納得いかない
ということであれば、返品・返金は認めないというスタンスで対応することで問題はないかと思います。
その場合、「返品・返金は認めない」ということを、すぐに相手方に伝えておいた方がよいでしょう。
ただし、今後トラブルに発展する可能性もあり、そうすると対応コストもある程度かかることを考慮すると、この時点で返品・返金に応じるということも企業判断としては、あり得るところです。
このあたりは、代金額がいくら程度かということも考慮して、決定していただければと思います。
代金の返還請求などのより大きな紛争に発展するようでしたら、下記の無料相談をご利用いただければと存じます。
よろしくお願い申し上げます。