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二次相続における未請求の保険金請求権の相続財産性

保険金請求権は、相続人固有の財産として、
遺産分割協議の対象にならないと理解しています。

この点を踏まえ、以下のようなケースについて、この
考え方で正しいか確認させてください。

1 一次相続の被相続人Aが死亡し、
受取人であるBとCが保険金を受領することに
なった

2 BとCは、保険金を受領する前に死亡した

3 Bの相続人D・Eの遺産分割において、
Bが取得することになる保険金は遺産分割
の対象になる

4 Cの相続人F・Gのの遺産分割において、
Cが取得することになる保険金は遺産分割
の対象になる

疑義があるのは、D~Gの協議によって、仮に
D一人がAの保険金を取得することになっても、
それぞれの遺産分割の対象になるかです。

税務的には、私の考えで行けば、結果としてBと
Cの相続においては、Aの保険金を取得しないと
しても、それぞれにおいて相続税の対象として
見たうえで、Dに対してはE~Gから贈与税が
かかることになります。

よろしくお願いいたします。

回答の便宜上、本件における法律上の扱いについて説明した後、最後に、税務上の扱いをご説明いたします。

1 被相続人Aの相続について
被相続人:A
相続人:B・C

 先生のご指摘のとおり、保険金請求権は、相続財産ではなく、遺産分割協議の対象にもなりません。
 受取人として指定されたB・Cそれぞれが、指定された分の保険金請求権を取得します。
 これは、相続とは関係なく、Aが死亡したことにより、生命保険の受取人として指定されたB・Cが保険金を受け取ることになった、と考えていただければわかりやすいかと思います。

 以下、Bが取得した保険金請求権を「B保険金」、Cが取得した保険金請求権を「C保険金」といいます。

2 被相続人Bの相続について
被相続人:B
相続人:D・E

 上記のとおり、Aの死亡により、BはB保険金という金銭債権を取得しています。これは、被相続人Bの相続において、相続財産に含まれます。
 Bの預金債権などと同様のものと考えていただければわかりやすいかと思います。

 金銭債権は、法律上、法定相続分に応じて、相続人であるD・Eに当然に分割して帰属するものとされており、原則としては遺産分割協議の対象とはなりません。
 ただし、実務上、相続人全員の同意がある場合には、遺産分割の対象とすることができるものとされており、金銭債権も含めて遺産分割協議を行うことが一般的です。
 今回のケースでは、相続人D・Eの同意があれば、B保険金を遺産分割の対象とすることが可能です。

3 被相続人Cの相続について
被相続人:C
相続人:F・G

 2と同様に、Cは、Aの死亡により、C保険金という金銭債権を取得しており、相続財産に含まれます。
そして、C保険金は、相続人であるF・Gに分割して帰属することになります。
 ただし、F・Gの同意があれば、遺産分割の対象とすることも可能です。

4 先生のご質問にある、「D~Gの協議によってなされた、D一人がAの保険金(B保険金・C保険金)を取得する」という合意の法的性質

 以下の①・②の合意があわさったものと考えられます。
①D・Eの間で、B保険金を、相続人Dが取得するという遺産分割協議
②D・F・Gの間で、相続人F・Gに帰属したC保険金を、F・GからDに贈与するという合意

①については、被相続人Bの相続人であるD・Eが、相続財産であるB保険金を相続人の1人であるDに取得させるという合意なので、遺産分割協議といえます。

②については、①と異なり、C保険金を取得するDは、被相続人Cの相続人ではありません。
ですので、被相続人Cの相続により、F・Gにそれぞれ帰属したC保険金を、D・F・Gの合意により、相続人ではないDに対して贈与したものと解釈されます。

5 税務上の扱い
 被相続人Bの相続に際しては、D・Eの遺産分割協議により、DがB保険金を取得したとして、相続税が計算されることになります。贈与税の対象にはなりません。

 被相続人Cの相続に際しては、F・Gが相続により、それぞれC保険金を取得したとして相続税の対象になり、その後、F・GがC保険金をDに贈与したとして、贈与税の対象になると考えられます。

よろしくお願い申し上げます。