不動産 民法 借地借家法 その他

保証人に対する家賃の請求

前提

平成12年に建物をAに貸し、Bが保証人になっています。
当初の契約期間は2年間で、その後ずっと更新されています。
平成25年頃から家賃の滞納が始まり、遅れながらもちょっとずつ払われていたのですが、現在平成27年1月分以降の家賃が未払いになっています。
Aとは長い付き合いもあったので、立退きは求めていなかったのですが、家賃1年分が滞納になったので、区切りをつけて出て行ってもらいたいということで話がまとまりました。
Aが滞納した家賃を支払うのは難しいので、保証人のBに連絡して、滞納の家賃を払ってくれるよう請求したのですが、Bは、保証人になったのは15年も前のことで、もう賃貸は終わっているものと思っていた。当初の契約期間である2年間のみの保証と思っていたなどと言って、賃料を支払おうとしません。

質問

この場合、Bの保証期間は2年間になるのでしょうか。
Bに家賃を支払ってもらうことはできますか。

よろしくお願いいたします。

1 ご質問および回答の結論
>この場合、Bの保証期間は2年間になるのでしょうか。
>Bに家賃を支払ってもらうことはできますか。

 Bの保証の責任は、賃貸借契約が更新された後の期間についても及んでおり、Bに家賃の支払いを請求することは可能です。

2 回答の理由

(1)賃貸借の保証期間

建物の賃貸借契約において保証人となった者は、更新後の期間については保証しないことを明示していたような場合でない限り、当初の契約期間のみではなく、更新後の期間についても保証の責任を負うものとされています(最高裁判所平成9年11月13日)。

 賃貸借は、借地借家法上、更新されることが原則とされており(貸主は、正当な理由がない限り、更新を拒絶できないこととされています。)、長期間にわたることが予定されています。保証人となる人は、これを想定した上で、保証していることが前提とされているため、更新後の期間についても責任を負うものとされているのです。

 今回のケースでも、Bが更新後の期間については保証しないことを明示していたというような事情がなければ、更新後の期間についても保証人の責任を免れません。
契約書を確認していただき、更新後は保証しないというような条項がなければ、Bは更新後の契約についても保証債務を負っているものと考えられます(通常、そのような条項は入れませんので、大丈夫だと思われます。)。

(2)保証人の責任が否定される場合

 上記の場合でも、賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させている場合など、「保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合」には、保証人の責任が否定されることがあり得るものとされています(最高裁判所平成9年11月13日)。
借主から賃料が支払われる余地がないのに更新を継続した場合、保証人の負う支払金額が無制限に増加してしまうため、保証人の責任を一定限度に制限すべきという考え方が根底にあります。

 実際の裁判例で、「信義則に反すると認められる場合」として、保証人の責任を一定限度で否定したものがあります。
・借主が、昭和63年11月以降、賃料を支払っていなかったにもかかわらず、平成2年4月、平成4年4月の2回にわたり契約が更新された事案において、平成4年4月以降の賃料については、支払義務を負わないとしたもの(東京地裁平成6年6月21日)
・借主が平成16年9月に行方不明になり賃料の支払いがなされていなかったにもかかわらず、7年間も契約が更新していたという事案において、借主が行方不明になってから2回目の更新がなされた平成19年5月以降の賃料については、支払義務を負わないとしたもの(大阪地裁平成25年1月31日)

(3)今回のケースで責任が否定されるか
 今回のケースでは、滞納となっているのは、平成27年1月以降の1年分です。
 また、借主が家賃を滞納し始めた平成25年以降、遅れながらも断続的に家賃の支払いはなされていたものと思われます。

 裁判例で責任が否定された事案と比べると、滞納が始まった後も断続的に賃料が支払われており、未払いの合計期間も短いことから、Bに対して賃料の支払いを求めることが「信義則に反する」とは認められないものと考えられます。

 ですので、Bに対して、合計1年分の賃料の支払いを請求することは可能でしょう。