ご教示ください。
未成年の子に贈与する場合、受贈者である子の親権者が受諾
すれば未成年者本人の受諾がなくても贈与契約は成立すると
されております。
祖父母から孫への贈与であれば、親権者であるその子の両親が
受諾して贈与契約書に署名捺印すればよい話しですが、例えば、
夫と死別したシングルマザーが自分の子(未成年)に贈与する
場合の贈与契約書はどのように作成すれば宜しいでしょうか。
参考になるサンプル等がありましたら助かります。
どうぞ宜しくお願いいたします。
1 ご質問および回答の結論
今回のケースでは、
贈与者(贈与する人):母親
受贈者(贈与を受ける人):子(子の法定代理人である母親が代理)
として契約をすることができます。
この場合の贈与契約書の書き方については、サンプルを一番最後に載せていますので、ご参照ください。
または、今回はメール表示の関係で利用し難くなる可能性も高いので、
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http://pct-law.jp/download/002
PW:zouyo
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こちらからワードファイルをダウンロード下さい(下記のサンプルと同一にものになりますので、ご了承下さい。)。
2 回答の理由
(1)未成年者の親の権限
未成年者の子の親には、子を代理して契約をする権限があります(民法824条)。
ですので、原則として、母親は、子を代理して契約をすることができます。
(2)自己契約の禁止(民法108条)
AとBの契約で、AがBを代理してAと契約すること(法律的には「自己契約」といいます。)は禁止されています(民法108条)。
これは、Aが自分の利益を優先して、Bにとって不利な内容の契約をするおそれがあるからです。
今回は、母親が子を代理して、母親との間で契約をすることになるので、このケースに該当します。
もっとも、単純な贈与で子が何の債務を負わないのであれば、子は利益を得るのみで不利な契約がされるおそれはありません。
このような場合には、上記のような規制の趣旨はあてはまりませんので、上記の規制の対象にはならないものと解釈されており、母親が代理することは禁止されません。
(3)利益相反取引の禁止(民法826条1項)
また、契約内容が、親と子の利益が相反するような内容である場合、親は子を代理することはできないものとされています(民法826条1項)。
子が贈与を受ける代わりに、親に対して何らかの債務を負う場合(たとえば、母親が子に建物を贈与するかわりに、その建物から得られる賃料の3割を子が母親に支払うなど)には、親が代理することはできません。
これは、親が自分の利益を優先して、子にとって不利な契約をしてしまうおそれがあるからです。
もっとも、この規定も、子にとって不利な契約がされることを防ぐことを目的としたものなので、子が何の債務を負わないという契約であれば、この規定の対象にはなりません。
ですので、今回の契約が、単純な贈与で子が何の債務も負わないという内容であれば、原則どおり、母親が子を代理して、母親自身との間で贈与契約を行うことが可能です。
よろしくお願い申し上げます。
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贈与契約書
贈与者○○【※母親の氏名を記載してください。】(以下、「甲」という)と受贈者○○【※子の氏名を記載して下さい。】(以下、「乙」という。)は、次のとおり贈与契約(以下、「本契約」という。)を締結する。
第1条(贈与の合意)
甲は、乙に対し、甲の所有する○○【※贈与する物を記載してください。】を贈与することを約し、乙はこれを受諾する。
・【※その他の条項があれば記載してください。】
・
・
・
以上のとおり、本契約の成立を証するため、本契約書を2通作成し、甲・乙各自署名押印の上、各1通を保有する。
平成○年○月○日
(甲)【※母親の住所・氏名を記載し、押印してください。】
住所
氏名 印
(乙)【※子の住所・氏名を記載してください。子の自署でなくても大丈夫です。】
住所
氏名
(乙法定代理人)【※母親の住所・氏名を記載し、押印してください。】
住所
氏名 印
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未成年者への贈与が負担付き贈与の場合には
利益相反取引になって、贈与者が代理人になることは
出来ないことになりますね。
その場合には、どのような人が代理人として認められ、
どのような手続きが必要になるのでしょうか。
シングルマザーと未成年の子を前提としてご教示下さい。
どうぞ宜しくお願い致します。
>未成年者への贈与が負担付き贈与の場合には
>利益相反取引になって、贈与者が代理人になることは
>出来ないことになりますね。
>その場合には、どのような人が代理人として認められ、
>どのような手続きが必要になるのでしょうか。
>シングルマザーと未成年の子を前提としてご教示下さい。
その場合、裁判所に特別代理人の選任申立てを行い、代理人に選任された方が子を代理して、母親と契約をすることになります。
代理人に特別な資格は必要なく、親族の方でも大丈夫です。
ただし、今回の契約で利益を受ける関係にある方は、適正に職務を行うことはできないとして、不適格とされる可能性があります。
申立ての具体的な手続きは、回答の理由をご参照ください。
2 回答の理由
(1)必要な手続き
服部先生もご指摘のとおり、母親と子との契約が負担付贈与の場合、利益相反取引にあたり、母親が子を代理して契約することはできません(民法826条1項)。
この場合、特別代理人を選任し、母親と子(特別代理人が代理)との間で契約をすることになります。
(2)特別代理人選任の手続き
ア 申立先
子の住所地を管轄する家庭裁判所
イ 申立てができる人
親権者、および、利害関係がある人(子の契約の相手方など)
今回の場合、母親が申立てをすることになります。
ウ 必要書類
・特別代理人選任の申立書
・子の戸籍謄本
・母親の戸籍謄本
・特別代理人候補者の住民票、または、戸籍の附票
・利益相反に関する資料(今回の場合、負担付贈与の契約書案)
※その他、場合によっては書類の追加提出を求められることもあります。
申立書のひな形・記載例は、下記裁判所のHPに掲載されていますので、ご参照ください。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html
エ 費用
・申立手数料 800円
・連絡用の郵便切手 1000円程度(申し立てをする裁判所によって異なります。)
オ 特別代理人になれる方
特に資格は必要ありません。一般の方でも大丈夫です。
通常は、親族などの関係者の方か、弁護士等の専門家が特別代理人になることが多いです。
ただし、特別代理人の制度は、子の利益を保護するためのものですので、職務を公正・適切に行えることが必要になります。
最終的には、裁判所が、特別代理人としての適格性を判断します。
たとえば、今回の契約により利益を受ける関係にある方は、不適格と判断される可能性が高いでしょう。
このような関係がなければ、基本的に不適格とされることは実務上あまりないです。
カ 一般的な手続きの流れ
①特別代理人選任の申立て
②裁判所から申立人・特別代理人候補者に対して、書面で照会事項の問い合わせ
③それに対して、裁判所に回答
④特別代理人選任の決定(もしくは却下の決定)
①~④までで、通常1ヵ月程度です。
よろしくお願い申し上げます。