相続 遺産分割 株式

遺産分割協議書上での代償分割の表示方法

遺産分割協議書を作成する上での代償分割の表示方法についてご教示ください。
遺産を代償分割する場合において、代償金(現金)であれば金額をそのまま表示
できるので問題ありませんが、例えば次のように表示した場合でも問題ないでしょう
か。

≪事例≫
遺産に投資信託が多数あるが換金(売却)したくないため、相続人の一人が全てを
相続して名義変更し、他の相続人に代償金を払うような場合、

遺産分割協議書の表示として、
「甲は投資信託のすべてを相続し、その代償として、相続開始日に所有する投資信託

相続開始日における相続税評価額の4分の1に相当する金額を乙と丙に渡す。」

内容が特定できているので大丈夫ではないかと思っているのですが、
具体的な金額の表示がないと駄目かどうかを、念のためご教示ください。
宜しくお願いいたします。

1 ご質問
>遺産分割協議書の表示として、
>「甲は投資信託のすべてを相続し、その代償として、相続開始日に所有する投資信託の
>相続開始日における相続税評価額の4分の1に相当する金額を乙と丙に渡す。」

>内容が特定できているので大丈夫ではないかと思っているのですが、
>具体的な金額の表示がないと駄目かどうかを、念のためご教示ください。

2 回答
(1)結論
  具体的な金額の表示がなくても、いただいた表示は、遺産分割協議書として有効です。
 ただし、具体的な金額の記載があった方が後々の紛争を防止する効果は強いとはいえます。
 
 また、投資信託の場合の条項の記載例を「(3)記載例」に付け加えておきますので、ご参考にしていただければ幸いです。

(2)理由
 必ずしも、具体的な金額の表示がないと遺産分割の効力が無効ということはありません。
 先生もご指摘のとおり、条項に記載された金額が、相続人の認識として特定できるのであれば法的には有効です。
 表示の「投資信託の相続開始日における相続税評価額の4分の1」は、一定の計算において金額が特定できるものと思われますので、遺産分割協議書の表示としては有効と考えられます。

 ただし、支払いを受ける乙・丙から、相続税「評価」額の金額についてクレームが出る可能性もあり、後々トラブルになることも考えられます。
 現時点で、具体的な金額が記載できるのであれば、記載しておく方が望ましくはあります。

(3)記載例

◯【投資信託が特定できる場合】
第1条 甲は次の投資信託、および、その他被相続人○○が相続開始日において所有する投資信託の全てを取得する。
 1 ○○証券
   ○○支店
   ○○(商品名)
   ○口(数量・口数)
 2 ○○証券
   ○○支店
   ○○(商品名)
   ○口(数量・口数)
 3・・・
第2条 甲は、第1条の投資信託を取得する代償として、乙及び丙それぞれに対し、平成○年○月○日までに、第1条に定める投資信託の相続開始日における相続税評価額の4分の1に相当する金額を支払う。

◯【投資信託が特定できない場合】
第1条 甲は、被相続人○○が相続開始日において所有する投資信託の全てを取得する。
第2条 甲は、第1条の投資信託を取得する代償として、乙及び丙それぞれに対し、平成○年○月○日までに、第1条に定める投資信託の相続開始日における相続税評価額の4分の1に相当する金額を支払う。

◯【記載例の説明】
ア 投資信託の取得と代償金の支払いの条項をわけること

 甲が投資信託を取得するという条項と、甲が乙と丙に代償金を支払うという条項は分けられた方がよいです。
 この2つは、法的に全く別の内容を定めるものなので、別の条項としておいた方が法律関係が明確になるからです。
 ご質問のように、これらを1つの条項に記載しても法的に無効とはなりませんが、記載例のようにしていただいた方がベターです。

イ 取得する投資信託の特定

 遺産分割協議で投資信託の取得を定める場合、取得するのがどの投資信託なのかを具体的に特定するため、①取扱金融機関名、②支店名、③商品名、④口数を記載することが多いです。
これらの情報がわかる場合には、記載例【投資信託が特定できる場合】のように記載していただいた方がよいです。

 これらの情報がわからない場合には、記載例【投資信託が特定できない場合】のように記載してください。
この記載でも、特定として不十分ということはありません。

よろしくお願い申し上げます。