相続 遺産分割 株式 所得税

分割協議前の配当金の取扱いについて

相続により取得した株式で相続開始後に確定した配当金について
相続人間で分割協議が行われていない間誰が配当をもらえるのでしょうか。
家賃収入などの法定果実との違いについて教えて下さい。
宜しくお願い致します。
1 ご質問
>相続により取得した株式で相続開始後に確定した配当金について
>相続人間で分割協議が行われていない間誰が配当をもらえるのでしょうか。
>家賃収入などの法定果実との違いについて教えて下さい。

2 回答

(1)結論
 法律上は、家賃収入等の法定果実と同様に、各相続人が法定相続分の割合に応じて配当金を請求する権利を有することになります。
 ただし、実務上の取扱いとして、上場企業の株式等では、株式についての手続代行を行っている証券会社に対して配当金の手続きを行うことになります。その場合、手続上、相続人全員の同意が必要等の扱いがなされている(約款や規則等に定めがある)ことも多いかと思います。
 そうすると、法律上、請求する権利はありますが、証券会社との契約の効力等として、配当が受けられないということもありえます。
 
(2)理由
 法律上、相続開始後、遺産分割協議前の不動産から生じた家賃収入等の法定果実(賃料請求権)は、法定相続分の割合に応じて各相続人に分割されます。
 これは、金銭債権は、相続開始後、当然に法定相続分に応じて、それぞれの相続人に分割して帰属するという理由によります(最高裁平成17年9月8月)。
 配当金を受け取る権利も金銭債権ですので、法定相続分にしたがってそれぞれの相続人に分割されており、その割合に応じて相続人が請求する権利があります。
 
 なお、家賃収入等の法定果実と異なるようにみえる点としては、会社法106条の存在があります。
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会社法106条
 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
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 しかし、同条は、民法の「共有」に関する特別規定であると解されており、権利確定後の配当金請求権は株主の地位(株式)とは別個独立の具体的権利となりますので、その適用はないと考えられます。
 
 以上より、法律的な請求権としては、家賃収入等の法定果実と同様に、各相続人に帰属するということになります。

よろしくお願い申し上げます。

解答ありがとうございます。

未分割時の配当金の実務上の見解として、「かがやき法律事務所」の見解がありました。
次のとおりです。

 これらは、相続が開始したときに存在していたものではありませんので、
厳密には遺産ではありませんので、遺産分割協議の対象とすべきでないという見解
もあります。
 しかしながら、このような法定果実を全く除外して遺産分割をすることは、
結局、別個に法定果実について再び共有物の分割協議をするということになり、
二度手間となって煩雑ですし、遺産全体の問題を一挙に解決すべきという要請
にも反することになります。
 したがって、実務上は、共同相続人の間で合意があるときは、賃料や配当収入、
預金利息等の法定果実も遺産と一括して遺産分割の対象とすることが一般的です。

補足情報のご共有ありがとうございます。

①当初ご質問いただいた「遺産分割前の配当金請求権が誰に帰属するか」

②「遺産分割協議の対象にできるか」
は、別の問題ですのでご注意下さい。

下記の情報の通り、

遺産分割前の配当金請求権が各法定相続人に帰属しても、
相続人全員の同意の下、遺産分割協議の対象に含め、あらためて誰にどの程度、配当金請求権を帰属させるかを決めることは可能です。

①が実質的に問題となるのは、その後の遺産分割協議がまとまらなかった場合や所得税の収入金額の帰属の問題となります。

よろしくお願い申し上げます。