社内ネットワークサーバーの設定を行ったA社に対して、
下記の費用(損失)を請求できるかどうかご教示ください。
①サーバーのCDドライブの再設定費用
②ソフトのサーバーへの再インストール費用
③再インストール期間に業務を停止することに対する損失
(1~2日間システムが使用できないため業務停止となる)
■詳細の経緯
ネットワークサーバーのハードディスク内のCドライブとDドライブの
容量が、Cドライブが少なく(40GB)Dドライブが多い(1.77TB)設定
になっていた。
A社の当初の説明では、動画等のような容量が大きいデータを
保存しない限り問題は出ない。(口頭説明)
しかし、平成27年10月に、Cドライブの使用が96%に達し、新たな
ソフトウェアのバージョンアップができないことが発覚した。
直接の原因は、平成27年10月に行った、A社の新ソフトウェアを
Dドライブにインストールした際、そのSQLデータベースソフトを
Cドライブにインストールしなければならなかったことが原因である。
(SQLは、Dドライブにインストールできないものである。)
A社の説明では、『OSソフトwindowsのバージョンアップが頻繁に
行われたことが原因で、Cドライブの使用量が増加した。』
『直接の原因は、今回のSQLのインストールだが、windowsのバージ
ョンアップがこれほど頻繁にあるとは予想できなかった。』
とのことであった。
windowsのバージョンアップが行われることは、システムベンダーとして
サーバー導入(平成25年)当初に予測すべきことであると考えられ、
当初のA社の『画像等のように容量が大きいデータを保存しない限り
問題は出ない。』という見込の間違いから生じていると考えられる。
以上、このような場合の法的解釈についてご教示ください。
よろしくお願いいたします。
1 ご質問
>社内ネットワークサーバーの設定を行ったA社に対して、
>下記の費用(損失)を請求できるかどうかご教示ください。
>①サーバーのCDドライブの再設定費用
>②ソフトのサーバーへの再インストール費用
>③再インストール期間に業務を停止することに対する損失
>(1~2日間システムが使用できないため業務停止となる)
2 回答
(1)請求の根拠
本件において、
①サーバーのCDドライブの再設定費用②ソフトのサーバーへの再インストール費用③再インストール期間に業務を停止することに対する損失を請求する場合、法律的な構成としては、
「債務不履行」に基づく損害賠償請求(民法415条)となります。
法律的な要件としては、
ア 債務不履行があったこと(契約上行うべきであった義務を怠ったこと)
イ 損害が発生したこと
ウ 債務不履行と損害の発生との間に因果関係があること
が必要です。
(2)本件での争点
今回の損害(イ)は、
①サーバーのCDドライブの再設定費用②ソフトのサーバーへの再インストール費用③再インストール期間に業務を停止することに対する損失
ですので、この損害の賠償を請求するには、これと因果関係(ウ)のある債務不履行の事実(ア)を主張しなければなりません。
本件で言えば、システムの導入当初に「SQLデータベースソフトをインストール可能なCドライブを40GBと設定したこと」が債務不履行にあたる(ア)と主張することになると考えられます。
「債務不履行」というのは、相手方が、契約上行うべきであった義務を怠ったことであり、ここで問題となるのは、A社がシステム導入時にSQLデータベースソフトをインストール可能なCドライブにどの程度の容量を設定すべき義務があったか(Cドライブを40GBと設定したことが不当であったか否か)が大きな争点になるものと考えます。
(3)争点についての判断
この点は
windowsのバージョンアップの頻度予測も含めて、XとA社との契約内容(契約上A社がどのようなことを行う義務を負っていたか)、システム導入時のXとA社とのやりとり(CドライブとDドライブのデータ振り分け方法の指示等の有無)、復元ポイント(PC状態のウィンドウズによるバックアップシステム)の上限設定などを総合した事実認定となりますので、いただいた情報のみで確実な答えを出すというのは難しいですが、
平成25年当時にSQRデータベースソフトをインストール可能なドライブが40GBというのは常識的に少ないと考えられますし、全体(C+Dドライブ)に占める割合としても少ないと評価はできるかと思われます。
ただし、下記の通り、立証がどこまできるのかという問題(特にXとAとのやりとり)は残ります。
実際裁判になれば、A社はCドライブとDドライブの振り分けについて、Xに十分説明し、振り分けたと主張してくることが想定されます。
(4)今後の対応等について
債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合、請求する側が債務不履行の事実を立証しなければなりません。
つまり、X側において、上記債務不履行を基礎付ける事実を証拠により立証しなければなりませんので、そういう意味でのハードルはあります。
裁判をするとなると費用や時間も取られますので、「損害」がいくらと算定できるのかにもよってきます(①②は固定されているとして、③再インストール期間に業務を停止することに対する損失について「実損」がどれだけでているのかがポイントになるかと思われます。)。
ただし、A社に対して、①②③の損害の支払いについて交渉する等はして良い事案かと考えられます。
以上で、回答になっていますでしょうか。追加でお聞きになりたいこと等があれば、メーリングリストでも良いですし、下記個別相談をご利用いただければ幸いです。