会社の就業規則では、3か月前までに退職願を提出するよう定めていますが、
一般的には、2週間前までに告げればOKということを聞きます。
従業員が、「1か月後にやめたい」と言ってきた時、
「3か月引継ぎをしてからやめてほしい」旨の主張は
どこまでできるものでしょうか?
>会社の就業規則では、3か月前までに退職願を提出するよう定めていますが、
>一般的には、2週間前までに告げればOKということを聞きます。
>従業員が、「1か月後にやめたい」と言ってきた時、3か月引継ぎをしてからやめてほしい」旨の主張は
>どこまでできるものでしょうか?
2 回答
(1)結論
①雇用期間を限定していない労働者(いわゆる正社員)の場合、3か月前に退職願を提出するよう定めた就業規則は無効とされる可能性が高く、3か月引継ぎをしてからやめてほしいという主張は法的には難しいです。
ただし、会社側が「就業規則にも記載があるので、3ヶ月間引き継ぎをして欲しい」旨は積極的に伝え、説得すること自体に問題はありません。
②雇用期間を限定している労働者(例えば、6か月契約の契約社員など)の場合、契約期間の途中で退職することは基本的にはできませんので、契約期間の満了まで働くよう主張することができます。
(2)理由
・①雇用期間を限定していない労働者の場合
民法上、2週間前までに申し出れば退職が認められることとされており(民法627条1項)、この期間を就業規則で延長できるかが問題となります。
この点について、裁判例(東京地方裁判所昭和51年10月29日)は、2週間の期間は延長できないと判断しています。裁判例は、労働基準法が、労働者の退職の自由を保障するため、その制限となり得るものを極力排除しようとしていることから、退職の申出期間を延長することは、その趣旨に反することを理由として挙げています。
一方で、期間を延長できるという立場も有力に主張されていますが、この立場も、その期間を無制限とするわけではなく、1ヵ月程度とするものが多いので、それ以上の期間を就業規則で定めても無効となる可能性が高いです。
ですので、3か月前に退職願を提出するよう就業規則で定めた場合には、どちらの立場に立ったとしても無効となる可能性が高く、ご質問のような主張は法的には難しいと考えられます。
ただし、あくまでもこれは裁判になった場合の結論に過ぎず、対策としては、「就業規則にも書いてあることだし、3ヶ月働いてもらいたい」旨は積極的に伝え、説得することになると思います。
・②雇用期間を限定している労働者の場合
契約期間途中での退職をする場合には、「やむを得ない事由」が必要とされており(民法628条)、病気によりこれ以上勤務することが困難であるというような理由がなければ、期間途中での退職は認められません。