いつもお世話になっております。
標題の件につき、ご教示ください。
現在、空家税制について、相続登記を錯誤として登記し直すことで
空家税制を適用したいというお客様がいらっしゃり、それは贈与にな
るのでできないとお答えしたのですが、念のため先生にも確認させて
下さい。
【経緯】
被相続人:父(居住用不動産所有者) 令和3年2月死亡
被相続人:母 令和3年5月死亡
相続人: 長男、二男の二名
父が亡くなった後、父の財産について遺産分割協議がなされないまま
母が亡くなりました。
司法書士から、いったん母に法定相続分を登記する必要があると言われ
父、母が住んでいた居住用不動産について法定相続分で相続登記をして
二段階で母の持分を長男、二男半々で相続登記をした。
その後、不動産を売却することになり、父の不動産をいったん母が全
て相続すれば、全持分に空家税制が適用できると知った。
上記経緯で、長男が司法書士の誤指導によるものなのに、空家税制が
適用できないことに納得ができず相談にいらしました。
詳細お聞きすると、法定相続分の登記なので、遺産分割協議書は作成
しらおらず、長男の単独申請により登記されいているようです。
このような状況でもいったん相続登記を錯誤として、登記をやり直し
たとしても、税務上は贈与とみなされると判断せざるを得ないでしょう
か?空家税制は適用不可能でしょうか。
税務署に個別相談する余地はございますでしょうか?
ご指導いただきますようお願い申し上げます
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>その後、不動産を売却することになり、父の不動産をいったん母が全
>て相続すれば、全持分に空家税制が適用できると知った。
>上記経緯で、長男が司法書士の誤指導によるものなのに、空家税制が
>適用できないことに納得ができず相談にいらしました。
>詳細お聞きすると、法定相続分の登記なので、遺産分割協議書は作成
>しらおらず、長男の単独申請により登記されいているようです。
>このような状況でもいったん相続登記を錯誤として、登記をやり直し
>たとしても、税務上は贈与とみなされると判断せざるを得ないでしょう
>か?空家税制は適用不可能でしょうか。
>税務署に個別相談する余地はございますでしょうか?
2 回答
まだ売却はしていないという前提で回答します。
まず、そもそも遺産分割前に
法定相続分の登記があったとしても、
遺産分割に基づくものではない以上、
遺産分割をすれば、相続開始時に遡って効力が発生します(909条)。
したがって、法定相続分の登記後に遺産分割を
したからといって、遺産分割のやり直しの事案と
異なり、贈与税の問題は生じません。
(登記の入れ方は様々ですが、いずれにしても、
最初の相続登記は、遺産分割によらない単独
申請によるものであることの証拠は残しておいてください。)
別の問題として、
今回は数次相続のケースで、
母親が死亡した後の父の相続に関する遺産分割により
死亡した母親の単独所有とすることは、
民法上は、既に死亡している母親に権利能力がないため、
認められないとも考えられますが、
登記及び税務実務上はそのように扱うものとされています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm#a-19_2_5
上記の相続税法の基本通達では、可能なように規定されていますが、
これは、配偶者等の死亡という偶然の事情による
納税者の間の不公平を是正するために通達で認めている
ものと解されています(相続税法基本通達逐条解説等)。
相続税に関しては上記通達があるため問題はないですが、
同様に所得税の適用に関して認められるのかは、理論上は不明です。
ただし、先生もご指摘のとおり、実務上は、
相続税法と同様に認められる前提で考えている実務家が多いでしょう。
したがって、税務署に個別相談する余地があるかという
ことですと、余地があるということになります。
よろしくお願い申し上げます。