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元代表取締役の責任

永吉先生

お世話になります。
●●です。
株式会社の元代表取締役の責任の範囲についてご教示ください。

株式会社の税務調査において否認指摘(経費否認・追徴課税)があった場合、
当該調査期間に取締役・代表取締役であった個人(現在は辞任して会社とは
無関係)には何らかの責任は及ぶものでしょうか。
否認指摘の内容としては、当時の代表取締役個人には関連しない外注費等の
損金不算入(過大計上等)などを憂慮しています。
もし責任が及ぶ場合にはどのようなものが考えられ、それを回避するために
今やっておくことはありましたらご教示ください。
どうぞ宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>株式会社の元代表取締役の責任の範囲についてご教示ください。
>株式会社の税務調査において否認指摘(経費否認・追徴課税)があった場合、
>当該調査期間に取締役・代表取締役であった個人(現在は辞任して会社とは
>無関係)には何らかの責任は及ぶものでしょうか。
>否認指摘の内容としては、当時の代表取締役個人には関連しない外注費等の
>損金不算入(過大計上等)などを憂慮しています。
>もし責任が及ぶ場合にはどのようなものが考えられ、それを回避するために
>今やっておくことはありましたらご教示ください。
>どうぞ宜しくお願い致します。

2 回答

必ずしも、税務の損金性の判断と、
民事の問題が連動するわけではありませんが、

会社にとって不要な(一定程度の合理的理由のない)金銭を
利用していたということであれば、
会社に対して、その流出額について、損害賠償
責任を負う可能性自体はあります(訴えるとすれば、株主でしょう)。

なお、その当時のその他の取締役も、
会社にとって不要であることを認識しつつ
放置していたということであれば、連帯して
責任を負う可能性があります。

回避するために行うこととすれば、

①総株主の同意による全責任の免除(会社法424条)

②株主総会における特別決議による一部免除(会社法425条)
※この場合、免除される役員について、対象の行為について、
善意かつ重過失がない場合に、監査役の同意の下、
以下を超える金額部分についてのみ免除できるとされています。
○ 代表取締役・代表執行役 年間報酬額の6倍
○ 代表取締役以外の取締役・代表執行役以外の執行役 年間報酬額の4倍
○ その他の取締役、会計参与、監査役、会計監査人 年間報酬額の2倍

③定款の定めに基づく取締役(会)の決定による一部免除(会社法426条)
※定款に定めがある場合に利用できる手続きです。
基本的には、定款の定めがあり、取締役2名以上かつ監査役設置会社
であることの他に、②と同様の要件及び金額の範囲内で認められます。
ただし、取締役会決議(取締役会がない場合は、取締役の過半数の決定)を
行った場合には、全ての株主に通知をした上で、議決権3%以上を持つ
株主が異議を述べた場合には、この責任の免除はできません。

上記のとおり、訴えを受けるという
ことだとすると、株主からというケースが
多く、上記、どの手続きによるにしても、株主に
どのような行為で、どのような損害賠償責任を
免除するのかを明確にしなければなりませんので、

やぶへびになる可能性の方が高い上、
税務上の指摘への対応も、でていない状況で行うような
ものではないように思います。

なお、あくまでも会社が役員の責任を
免除するという手続きですので、
会社との契約がある場合にそのような
アドバイスを行うという点については、
潜在的な利益相反になり得ますので、注意が必要です。
(紛争に巻き込まれるリスクがあるという意味です。)

よろしくお願い申し上げます。

永吉先生

お世話になります。
ご回答ありがとうございました。

> 〉訴えるとすれば、株主でしょう。

問題の外注費の支払い先が株主自身(株式会社Z社とします)だった場合はどうなるでしょうか。
登場人物を整理すると次のようになります。
・相談対象の会社・・A社
・相談対象A社の社長・・甲
・問題の外注費の支払い先・・Z社
・Z社の社長・・乙
・A社の株主・・乙とZ社
・A社の取締役・・甲、乙、その他第三者の丙

どうぞ宜しくお願い致します。

●●先生

追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>問題の外注費の支払い先が株主自身(株式会社Z社とします)だった場合はどうな
>るでしょうか。
>登場人物を整理すると次のようになります。
>・相談対象の会社・・A社
>・相談対象A社の社長・・甲
>・問題の外注費の支払い先・・Z社
>・Z社の社長・・乙
>・A社の株主・・乙とZ社
>・A社の取締役・・甲、乙、その他第三者の丙
>どうぞ宜しくお願い致します。

2 回答

どのような行為があったのかは定かでない
ところがありますが、

通常、支払いを受けた乙及びZ社が、
株主として、損害賠償をするかというと
会社の実質的所有者としての乙及びZ社も
理解して行っていた行為とされる可能性が極めて高く、
損害賠償が認められる可能性が低いため、
株主がそこまでするというケースが
あまり想定できないところがあります。
(先生の中でこの事案について気になったところがあったので
ご質問いただいたとは思うのですが。)

気になるようであれば、
乙とZ社が同意する前提ですが、
> ①総株主の同意による全責任の免除(会社法424条)
という方法をとることはありかと思います。

よろしくお願い申し上げます。