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遺言書の文言の解釈

永吉先生

お世話になります。
●●です。
遺言公正証書の文言の解釈についてご教示ください。

≪状況≫
・遺言公正証書に次のように記載されている。
「遺言者は、遺言者の有する財産の全てを、遺言者の長女〇〇〇〇
に相続させる。」
・遺言者の財産は土地・家屋・預金であるが、預金のある金融機関から
家屋建築に係る借入金(約2500万円)があるが、債務に関しては
遺言書に何も記載がない。
・遺言者の法定相続人は長女・次女・長男の3人

≪相談≫
上記のような遺言書なのですが、債務(借入金)も長女が引き受けると
考えて宜しいでしょうか。
それとも、債務は相続人が法定相続割合に応じて引き受けることになる
のでしょうか。
宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>≪状況≫
>・遺言公正証書に次のように記載されている。
>「遺言者は、遺言者の有する財産の全てを、遺言者の長女〇〇〇〇
> に相続させる。」
>・遺言者の財産は土地・家屋・預金であるが、預金のある金融機関から
>家屋建築に係る借入金(約2500万円)があるが、債務に関しては
>遺言書に何も記載がない。
>・遺言者の法定相続人は長女・次女・長男の3人

>≪相談≫
>上記のような遺言書なのですが、債務(借入金)も長女が引き受けると
>考えて宜しいでしょうか。
>それとも、債務は相続人が法定相続割合に応じて引き受けることになる
>のでしょうか。
>宜しくお願い致します。

2 回答

(1)債権者(金融機関)との関係

まず、債権者(金融機関)との関係では、
債権者の承諾がない限り、法定相続分で
承継することとなります。

つまり、金融機関から請求があれば、
各相続人は法定相続分に従って返済する義務を負います。

(2)相続人間の負担割合

一方で、相続人間の関係では、
全部の財産を「相続させる旨の遺言」(特定財産承継遺言)
は、相続分の指定を伴うものであり、特段の事情ない限り、
相続債務もすべて財産の取得者が承継することとなると
解されています(最判平成21年3月24日)。

この特段の事情とは、遺言の趣旨から相続債務を
すべての財産を取得した相続人に負担させないという
ことが明らかである場合をいいますが、これが
認められるケースは極めて稀でしょう。

したがって、相続人間においては、長女が相続債務を
負担することとなります。

例えば、債権者が、次女に法定相続分の
金銭の返還を請求し、次女がそれに応じた場合には、
次女は、その返済金額について、長女に求償をすることが
できるという関係になります。

一方で、長女が金融機関に全額返済したとしても、
次女・長男に対して求償権は発生しません。

よろしくお願い申し上げます。