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相続分の譲渡について

永吉先生

いつもご教授いただきまして誠にありがとうございます。

続けての質問になり、大変恐縮ですが、下記についてご指導の程よろしくお願い申し上げます。

【内容】

───┬──(父)───────────┬───母──┬───
┏━━━━━━━━┿━━━━━━━━━━━━━━━━┿━━━━━━┿━━┓
┃┏━━━━━━━┿━━━━━━━━━━━━━━━━┿━━━━━┓│ ┃
┃┃ ┌─────┴┬──────┬─────┐ │ ┃│ ┃
┃┃ │ │ │ │ │ ┃ ┃
┃┃被相続人A姉 B姉(死亡) C弟←譲渡←D弟 E半血 ┃妹F ┃
┃┃令2/12/1没 平10/5/1没 平20/6/30没 ┃ ┃
┃┃ ③ ① ② ┃ ┃
┃┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

現在Aの相続税の申告をご依頼いただいています。
そこで問題なのが、Bの未分割の不動産があり、Aの申告期限前にBの遺産分割を全てCが相続する
という分割協議でまとめたかったのですが、Eの相続人にあたるFが認知症を患っており遺産分割が
できない状況です。

Fはまだ若く、後見人をつけて遺産分割をせずに亡くなるのを待ちたいという相続人の希望があり
Cが将来相続することになる不動産をAの法定相続分で計上するのではなく、相続分の譲渡を利用して
Eの分だけを未分割なものとして計上しようかと考えています。

下記相続関係図は簡略化したものであり、実際にはEの相続人はもっとたくさん複雑にいます。

そこで、Aの相続分もAの相続人であるC及びDがCに譲渡するということにした場合、Aの相続分は
なくなったと考えて相続税の申告書に計上しないことは可能なのでしょうか?

決まった後の更正の請求を進めたのですが、後見人をつけるのが嫌というのと、Fが5年以内に
亡くなることが考えられないとのことで、このような面倒な状況になっております。

以上、どうぞよろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>そこで、Aの相続分もAの相続人であるC及びDがCに譲渡するということにした場合、
>Aの相続分はなくなったと考えて相続税の申告書に計上しないことは可能なのでしょう>か?

こちらは、「Bの相続におけるAが取得している相続分」について、
Aの相続発生後、Aの相続人であるC及びDの合意により、Cに譲渡するため、
Aの相続税申告の相続財産には、Bの相続におけるAが取得していた相続分
のうちC及びDの相続した部分が含まれなくなるかという趣旨でよろしいでしょうか。

その前提で回答します。

2 回答

「Bの相続におけるAが取得している相続分」について、
Aの相続開始時にAが保有している以上、相続財産に含まれますので、
計上しないことはできないものと考えられます。

仮にBの相続に関して、遺産分割をすれば、
Aは、当初より相続分を取得してないこととなるのは、
あくまでも、Bの相続に関する遺産分割の効果が、Bの相続時に遡って
生じるからです(民法909条)。

相続分を譲渡した前提でBの相続について遺産分割が完了すれば、
Bの相続時よりAの相続分はなかったものと扱われますが、
相続分の譲渡自体に遡及効はありません。

最判平成13年7月10日は、以下のように判示して
いますが、あくまでも遡及的に財産の帰属するのは
遺産分割がされた時とされています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、
積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時に遡って被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

したがって、Aが生前に相続分の譲渡をしていた
ということであれば話は違ってきますが、

Aの相続開始後に「Bの相続におけるAが取得している相続分」
譲渡する以上、Bの相続の遺産分割なしに、
Aの相続税申告で、この相続分を除外することはできないと
考えられます。

よろしくお願い申し上げます。

永吉先生

下記、ご教示いただきまして誠にありがとうございました。
更に経緯を確認していったら新たな事項が発生しご指導いただきたいです。

【内容】

───┬──(父)───────────┬───母──┬───
┏━━━━━━━━┿━━━━━━━━━━━━━━━━┿━━━━━━┿━━┓
┃┏━━━━━━━┿━━━━━━━━━━━━━━━━┿━━━━━┓│ ┃
┃┃ ┌─────┴┬──────┬─────┐ │ ┃│ ┃
┃┃ │ │ │ │ │ ┃ ┃
┃┃被相続人A姉 B姉(死亡) C弟 D弟 E半血 ┃妹F ┃
┃┃令2/12/1没 平10/5/1没 平20/6/30没 ┃ ┃
┃┃ ③ ① ② ┃ ┃
┃┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃
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現在Aの相続税の申告をご依頼いただいています。
そこで問題なのが、Bの未分割の不動産があり、Aの申告期限前にBの遺産分割を全てCが相続する
という分割協議でまとめたかったのですが、Eの相続人にあたるFが認知症を患っており遺産分割が
できない状況です。
下記相続関係図は簡略化したものであり、実際にはEの相続人はもっとたくさん複雑にいます。

Eが平成20年6月30日に亡くなった際、平成21年7月30日にEの遺産分割協議書を作成しています。
協議書には「今後、被相続人Eの遺産が判明した場合には、全て相続人Dが取得する」と記載されています。

そこで質問なのですが、上記の協議書によりBの未分割の不動産のEの持分はDが取得し、
その他のBの不動産の持分のみCとDで遺産分割協議書を作成することで
協議が成立し今回のAの相続税申告書に計上しないことは可能でしょうか。

また、この場合、Bの遺産分割協議書の書き方はどのようになりますでしょうか?
C、Dのみの署名捺印で、Eについては“〇年〇月〇日付の遺産分割協議書よりDが取得することを
C、Dが確認した”等の文章を入れるべきでしょうか?

なお、法務局からはEの遺産分割協議書及び当時の相続人の印鑑登録証明書と、
CとDのみが署名押印したBの遺産分割協議書及びCとD印鑑登録証明書その他相続書類で
登記可能との回答がありました。
ただ、当時の相続人の印鑑登録証明書がないため登記はできていません。

以上、どうぞよろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①

>Eが平成20年6月30日に亡くなった際、平成21年7月30日にEの遺産分割協議書を
>作成しています。
>協議書には「今後、被相続人Eの遺産が判明した場合には、
>全て相続人Dが取得する」と
>記載されています。
>そこで質問なのですが、上記の協議書によりBの未分割の不動産のEの持分は
>Dが取得し、
>その他のBの不動産の持分のみCとDで遺産分割協議書を作成することで
>協議が成立し今回のAの相続税申告書に計上しないことは可能でしょうか。

そうですね。
相続分のない者が遺産分割協議の当事者にだけは
ならないといけないかは一部反対説があるところですが、
ご指摘の法務局の見解のように、この場合、CとDで遺産分割可能である
との考え方が有力ですので、
その前提で考えて良いものと思います。

なお、
>実際にはEの相続人はもっとたくさん複雑にいます。

とのことで、おそらく妹FがEの相続人になっているという
ことで問題はないかと思いますが、Eに「子」がいる場合には、
Bの相続におけるAの持分の一部を代襲相続しますので、Eの
子が遺産分割に参加する必要があります。

そうすると、CとDのみで遺産分割が可能で、
その対象不動産をDの単独相続にするという
ことであれば、民事上は、Bの死亡時より対象不動産は、
その者に帰属していることとなります。

税務上は、遺産分割の遡及効を民事と別で考える
という考え方が理論上ないではないですが、
基本的に実務的には、Bの相続について遺産分割があれば、
民事上、Bの相続開始時に遡るため、
Aの相続財産に計上しないことが可能となると考えて良いでしょう。

直接的なところではありませんが、
相基通19の2-5などもその理解が前提にあるものと考えられます。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm
(なお、死亡した者に財産が帰属していたという合意が
できるのかは、民事上は問題があるので納税者に有利解釈
しているところはありますが、少なくとも遺産分割の遡及効が
前提となっていることは間違いないという趣旨です。)

2 ご質問②

>また、この場合、Bの遺産分割協議書の書き方はどのようになりますでしょうか?
>C、Dのみの署名捺印で、Eについては“〇年〇月〇日付の遺産分割協議書よりDが取
>得することをC、Dが確認した”等の文章を入れるべきでしょうか?

基本的に、Eの遺産分割協議書がある以上、
法的に必要な事項でありませんが、
相互の確認のため、記載しておいても良いでしょう。

よろしくお願い申し上げます。

なお、いただいた相続関係図ですが、
受信側ですと、きれいに見ることができませんでした。
今後は、言葉でご説明いただけますと助かります。

よろしくお願い申し上げます。