お世話になります。
税理士の●●です。
会社倒産に伴う代表者の自己破産について教えてください。
<経緯>
A氏は2014年4月に勤務先の会社の代表となりました。
その時すでに会社は先々代からの金融機関からの借入金が多額にありました。
2018年、2019年、2020年と企業努力を続けながら、会社所有の不動産を本社を含め売
却しながら返済を続けてきましたが2021年9月に会社倒産に至りました。
引継時金融機関からの借入金は392,928,921円ですが、2021年9月末では72,186,792円
です。
また、A氏よりの借入金は200万円あります。
この度の会社倒産に伴い弁護士から、保証人として個人破産を言われています。
<質問>
1.上記の状況のなかで、自己破産した場合に、以下の個人資産についてどのように
扱われるのか教えてください。
①.2017年12月に住宅の建物を妻に贈与しました。
住宅底地はA氏の母名義です。
2021年の固定資産税評価額は2,024,337円です。
贈与した家屋はA氏の所有としてみられ、売却等の対象になりますか?
②.既に保険料払い込み済みの生命保険があります。
そのまま持っていれますか?
③.現在継続して支払いをしているガン保険について
このまま継続して支払い続けていけるのか?
2.経営者保証ガイドラインの制度があり、このような場合にその利用が可能なのか
教えてください。
よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>①.2017年12月に住宅の建物を妻に贈与しました。
>住宅底地はA氏の母名義です。
>2021年の固定資産税評価額は2,024,337円です。
>贈与した家屋はA氏の所有としてみられ、売却等の対象になりますか?
可能性としては、この贈与が、
A氏が債権者を害することを知ってした行為で
かつ、妻(受贈者)も債権者を害することを知っていた
場合には、破産管財人の否認権の行使により、
贈与をなかったこととされることがあります。
当時のAの財産状況や法人の金融機関への
返済状況などにも依存しますが、
約4年前ということだと、否認の対象とは
ならない可能性が高いかと思います。
ただ、この辺りは、申立代理人の弁護士と
管財人の交渉などに依存するところですので、
弁護士さんが申立代理人となるのであれば、
どのようなことを想定しているのかを
その弁護士さんと協議した方が良いです。
2 ご質問②
>②.既に保険料払い込み済みの生命保険があります。
>そのまま持っていれますか?
解約返戻金の請求権がある保険契約の場合、
法的には、破産財団に組み込まれます
(つまり持っていかれます)。
ただし、東京地裁等多くの地裁の運用では、
解約返戻金が20万円以下である場合には、
換価・配当の対象とはしない運用とされています。
20万を超える金額でも、維持したい場合には、
相当額を財団に組み入れることや自由財産の
拡張等、色々と方法が
ないわけではありませんが、こちらは、
具体的に事案に応じた管財人との交渉となります。
3 ご質問③
>③.現在継続して支払いをしているガン保険について
>このまま継続して支払い続けていけるのか?
基本的には、破産手続きが開始した場合、
一部の者への支払いはできなくなりますので、
支払いを継続することができません。
ただし、実務上は、
例えば、破産したとしても、
99万円(自由財産)の範囲は、
自由財産として認められるところ、
その範囲あれば、
で支払いを継続できるでしょう。
この辺りも、申立代理人となる弁護士と
協議の上、管財人と交渉することとなります。
4 ご質問④
>2.経営者保証ガイドラインの制度があり、このような場合にその利用が可能なのか
>教えてください。
Aの債務状況や法人のこれまでの返済状況(の銀行等のやり取り含む)
などにもよりますが、利用できる可能性はあります。
ただし、いただいた事情からすると
金融機関(債権者)に個人破産されるよりも経済的合理性が見込まれる
かというガイドラインを利用する要素が、厳しいようには思います。
(ここは、Aの財産状況にもよるところです。)
経緯として、A氏は血の繋がりもない先先代が作った
借入金であることや3年にわたりかなりの金額を
返済していることからすると、金融機関と交渉できる
可能性もあるように思います。
法人破産を担当される弁護士さんに提案して、
協議した方がよろしいかと存じます。
よろしくお願い申し上げます。