お世話になります、●●です。
医療法人の増資についてお伺いします。
【前提】
平成10年設立の社団医療法人A(以下、A)は、平成18年医療法改正前に設立された
出資持分ありの経過措置医療法人です。
【ご質問】
この度、Aの増資を計画しております。
平成18年医療法改正により、出資持分ありの医療法人設立は現在認められておりませ
ん。
Aは改正前設立なので、経過措置医療法人として出資持分を保有した状態を保ってお
ります。
医療法人は会社法ではなく医療法に基づき設立された法人ですが、医療法には出資金
に
関する規定がなく、登記事項でもありません。
以上を踏まえ、定款変更・登記変更を行うことなく、社員総会の決議により増資を行
えると
考えておりますがいかがでしょうか?
以上、よろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問と回答の結論
>Aは改正前設立なので、経過措置医療法人として出資持分を保有した状態を保ってお
>ります。
>医療法人は会社法ではなく医療法に基づき設立された法人ですが、医療法には出資金
>に関する規定がなく、登記事項でもありません。
>以上を踏まえ、定款変更・登記変更を行うことなく、社員総会の決議により増資を行
>えると
>考えておりますがいかがでしょうか?
結論としては、先生のご理解で、問題ないものと存じます。
念のため注意事項がございますので、
以下の回答の理由の(2)、(3)はご確認ください。
なお、医療法自体には、あまり詳細な規定がなく
定款自治により、理事会が必要な事項等が
定められていたりしますので、念のため、Aの定款もご確認ください。
(疑義がありそうな定款規定の場合は、理事会の決議もとっておいた方が無難です。)
2 回答の理由
(1)増資の可否
まず、前提として、
平成18年医療法改正以前は、医療法上に規定は
ありませんが、持分ありの医療法人についての増資は
認められていました。税務訴訟などでもそれを当然の前提とされています。
そして、平成18年の医療法改正にあたり、
経過措置医療法人については、
改正附則10条関連で、国が新医療法人への
移行が促進させる必要な施策を推進するように
努力することなどが定められるのみですから、
改正前後で出資ができなくなった
と考えることは法的には難しいものと考えられます。
したがって、経過措置医療法人の持分あり法人で、
増資をすることは可能と考えられます。
(2)手続きについて
ア 定款変更について
増資に伴う定款変更の要否について、
昭和30年と非常に古い通達で以下のようなものが存在します。
なお、医療法44条第2項5号の定めは現状も当時と同様のものです。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta0823&dataType=1&pageNo=1
しかし、そもそも平成以降に設立された医療法人で、
設立認可を受けた定款に出資金額に関する規定は存在している
ものを私は見たことがありません。
そもそも、変更前の定款規定がない以上、
変更のしようがありません(変更の対象がない)ので、
Aの定款に出資金額に関する規定がないか念のため
ご確認いただき、規定がないようであれば不要と判断して良いでしょう。
行政が設立段階で、そのような出資金額に
ついての定款の定めを不要と解している以上、
上記の通達当時とは行政の解釈としても、
変更があったものと考えざる負えません。
(正直、医療法は立法担当者がちゃんと考えて
作成しているのか?と思えるくらいお粗末な点が
多いのですが・・・)
イ 登記について
増資があったからといって、
登記をする必要はありません。
なお、医療法人は、「資産の総額」を
毎事業年度末日より3ヶ月以内にする必要が
あります(組合等登記令第3条3項)。
よろしくお願い申し上げます。