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相続の分割時の不動産価額と家賃相当特別受益、遺留分放棄文書

永吉先生、いつもありがとうございます。
●●です。

前提で、遺言書があり、ほとんどは同居相続人三女への遺贈になり、
長女、次女には数百万円の遺贈の内容でした。
不動産がたくさんあり、借入金付の賃貸アパートもあるため、
仮に財産5億、債務4億で、財産5億のうち4.2億が不動産です。

確認1

長女の子供が弁護士みたいです。
遺言書は開示はしています。
相続税評価上でも遺留部分は満たしていない遺言書の内容でした。
すでに不動産は相続税評価額は安いので、修正が必要と言われています。
一般的な話ですが、
弁護士さんが入った場合や、調停時に、不動産の価額を相続税評価額
以外ですることは多いのでしょうか?
土地は相続税評価額÷0.8を時価とすることも多いでしょうか?
家屋の時価は査定困難なので固定資産税評価額または相続税評価額のまま
が多いでしょうか?
仮に不動産鑑定士を入れるとした場合、
調停前の不動産鑑定士は、依頼した人が負担すべきでしょうか?
調停時は裁判所の指定の不動産鑑定士を入れて、折半して負担するのでしょうか?
あるDVDですと
不動産鑑定士はお金がかかるため
不動産価額は不動産屋に査定をとってもらったりすると
言っているところもありました。
相続税評価額は低いため、時価と言われたらごもっともでありますが、
何か土地の価額を相続税評価額が妥当であるということなどいえる武器は
ありませんでしょうか?

確認2

次女は、被相続人の賃貸アパートの1室に無償で住んでいます。
使用貸借契約書は未作成で、口頭契約になっています。
ネットで見る限り、支払をしなくて済んだ賃貸料累計を特別受益に該当しない
というのが多いですが、特別受益には該当しないでしょうか?
ある弁護士さんのサイトでは、別生計で賃貸アパートだと本来は賃料をもらえる
ところをもらっていないため特別受益に該当するということを記載している人が
いましたが、特別受益になることは、実務上は難しいでしょうか?

確認3

今回は父の相続で、母は以前死亡で、母の相続後に、
司法書士さんが、遺留分放棄の書類を作成し、長女は次女押印したものはあります
が、
裁判所には申し立てしていないとのことでした。
法律的には、申し立てをしていない、遺留分放棄の書類があっても法律的には
まったく効力はないものなのでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜遺留分における不動産の評価

>長女の子供が弁護士みたいです。
>遺言書は開示はしています。
>相続税評価上でも遺留部分は満たしていない遺言書の内容でした。
>すでに不動産は相続税評価額は安いので、修正が必要と言われています。
>一般的な話ですが、
>弁護士さんが入った場合や、調停時に、不動産の価額を相続税評価額
>以外ですることは多いのでしょうか?
>土地は相続税評価額÷0.8を時価とすることも多いでしょうか?
>家屋の時価は査定困難なので固定資産税評価額または相続税評価額のまま
>が多いでしょうか?

これはケースによるとしか言いようがないですね。
遺留分の問題であっても、当事者が評価方法に
合意するのであれば、このような算定方法もあります。

例えば、メインの争いが不動産ではなく
株式等の場合や金額に大差がでなそうな物件の
場合には、上記の方法のこともありますね。

ただ、不動産の評価が争いがメインの場合には、
各ステージで適切なタイミングで鑑定士評価を
利用することが多いです。

>仮に不動産鑑定士を入れるとした場合、
>調停前の不動産鑑定士は、依頼した人が負担すべきでしょうか?
>調停時は裁判所の指定の不動産鑑定士を入れて、折半して負担するのでしょうか?
>あるDVDですと
>不動産鑑定士はお金がかかるため
>不動産価額は不動産屋に査定をとってもらったりすると
>言っているところもありました。
>相続税評価額は低いため、時価と言われたらごもっともでありますが、
>何か土地の価額を相続税評価額が妥当であるということなどいえる武器は
>ありませんでしょうか?

遺留分の場合、任意交渉→調停→訴訟という流れで
一般的には進みます。

任意交渉の場面では鑑定士評価よりも
自己に有利な不動産業者の査定などを根拠に
主張するケースが多いかと思います。
(この段階ではそこまでコストは
かけないかと思います。こちらも特殊事情が
あれば行うことがありますが。)

調停の場面では、行った方が有利に進められる
という状況下であれば、鑑定士評価を利用する
こともあります。ただ、遺留分の場合、最終的に
調停で折り合いがつなかなければ、訴訟手続を
行うことになりますので、この段階でするのか
というと微妙なところですね。本当にケースや
訴訟移行することへの依頼者の希望等によりますね。

結局訴訟になるのであれば訴訟段階で行う
ケースの方が多いかと思います。

訴訟になった場合ですが、こちらも
訴訟追行に依存します。

原告が自己に有利な鑑定評価を証拠として、
提出し、その後、被告が有利な鑑定評価を
証拠として提出するということもあります。

これで調整がつけば良いですが、和解には
ならず、裁判所に判決を求める場合、これも
ケースによりますが、裁判所が選任の鑑定士さんが
評価をするというケースも多いです。

この場合の鑑定費用の負担についても、
当事者で折半とする合意があれば良いですが、

全面的な敗訴の場合、
訴訟費用の負担として、負けた方が鑑定費用を
負担させられることもあります。

この辺りは訴訟戦略やコスト含めた話
(どこまで厳密に評価してもらうのかなどにも
依存します。)になるので、一概にどうということは申し上げられません。

2 ご質問②〜使用貸借と遺留分における特別受益

>ネットで見る限り、支払をしなくて済んだ賃貸料累計を特別受益に該当しない
>というのが多いですが、特別受益には該当しないでしょうか?
>ある弁護士さんのサイトでは、別生計で賃貸アパートだと本来は賃料をもらえる
>ところをもらっていないため特別受益に該当するということを記載している人が
>いましたが、特別受益になることは、実務上は難しいでしょうか?

建物の使用貸借は、一般論として特別受益に
該当しないということが言われているところはあります。

しかし、根拠とされる裁判例(大阪家審平成6年11月2日)
は、相続人は、マンションの一室に無償で居住していたものの
、当該建物の管理業務をしていたことや被相続人の自宅に
無償で住んでいる相続人はただの占有補助者であるから
家賃の支払いを免れた点は特別受益に当たらないとされているものです。

先生のご指摘の場面では、このよう裁判例が述べている
状況とは異なりますので、その弁護士さんが主張していることに
一定の合理性があると考えます。
あとは、特別受益の評価対象を
賃料相当額とするのか、建物使用借権の評価とするのか
という問題は残るかとは思いますが。

このあたりは、私が代理人で、有利となるのであれば、当然
主張するかと思います。

現実論としては、判決まではいかずとも、それらの主張も考慮して
和解金額の調整をするということが比較的多いです。

3 ご質問③〜遺留分放棄について

>今回は父の相続で、母は以前死亡で、母の相続後に、
>司法書士さんが、遺留分放棄の書類を作成し、長女は次女押印したものはあります
>が、裁判所には申し立てしていないとのことでした。
>法律的には、申し立てをしていない、遺留分放棄の書類があっても法律的には
>まったく効力はないものなのでしょうか?

この遺留分放棄の対象は、父の相続についてという
意味でよろしいでしょうか。

父の生前における遺留分放棄の意思表示は、家庭裁判所の許可が
なければ法的な効果は発生しません。

よろしくお願い申し上げます。