下記の事実関係を元にご教示頂きたいことがあります。
・A社(当社の顧問先ではない、少し先になるかもしれませんが、将来の上場も視野に入れている)
代表取締役:第三者
取締役:甲(使用人としての肩書きなし)
・B社(当社の顧問先、民泊その他の事業、甲のプライベーカンパニー的な要素もある)
代表取締役:甲
この状況の中、下記の金銭の支払いがあります。
・A社は甲が取締役会に出席している対価として、役員報酬を支払っている
・甲がA社の業務を行う対価として、A社はB社に業務委託費を支払っている
・A社における業務委託費が給与認定される税務上のリスクは説明済み
・今回、甲がA社の取締役を外れ、B社が全額を業務委託費でもらうことを検討中
ただし、甲はA社の一定の肩書きで表に出る必要があるため、
契約関係としては、A社とB社は業務委託の関係だが、
甲はA社におけるなんらかの肩書きがあった方がいい。
そこで、全額を業務委託費で支払いますが、
名刺、商品発表会、展示会など、
対外的には、取締役、執行役員などの名称を使うことを検討しています。
できえるだけ上に見える肩書きがいいという意向があります。
この場合、単なる外注先であるにも関わらず、
対外的に取締役、執行役員などの肩書を用いることは問題になるでしょうか?
よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>全額を業務委託費で支払いますが、
>名刺、商品発表会、展示会など、
>対外的には、取締役、執行役員などの名称を使うことを検討しています。
>この場合、単なる外注先であるにも関わらず、
>対外的に取締役、執行役員などの肩書を用いることは問題になるでしょ
>うか?
2 回答
(1)法的に意味がある取締役等の肩書について
現実に問題となるかは別にして、
「取締役」等の法律上の役職は法的に会社に対して、
責任や権限を有する地位であることを表す表示です。
この場合、取締役ではないのに取締役と名乗ることは
明確に虚偽となります。
理論上は、私文書偽造などでは、
「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」も
対象となるところ、その肩書きで契約書等でなくても、
署名等してしまうと罪になる可能性はあります。
ここにいう「偽造」とは、文書の作成名義を偽る
ことをいいますが、
「A社取締役甲」という実際には存在しない人物の肩書きを
「甲」が利用した場合も、その文書は、甲のA社の取締役であることに
文書の信用が置かれているということでこのケースも
「偽造」として扱われる可能性が高いです。
また、これもケースバイケースですが、例えば、
A取締役である甲との商談で契約したにも
かかわらず、甲が取締役でなかったことが、
詐欺などにあたる等は可能性としてはあるかと思います。
契約書に捺印する等ではないと
現実的にはあまり起こらないと思いますが、
潜在的にはというところです。
(2)執行役員等法律上の役職ではない場合
「執行役員」という言葉などは、法律上の役職等
ではないため、上記のような問題は起こりにくいかと
考えられます。
理論上、報酬0で、「執行役員」もあり得えますし、
法的な肩書ではなく、Aが許諾している以上、虚偽とは評価することは
難しいからです。
(3)その他
上記は、法的な話(紛争化する場合のリスク)になりますが、
今回の措置が、
>・A社(当社の顧問先ではない、少し先になるかもしれませんが、将来の
>上場も視野に入れている)
ということで、A社の上場審査等を見据えてのもの
であるという前提ですと、
取締役でない者が「取締役」と名乗っている会社
というのはかなり厳しいです。
一方で、「執行役員」という肩書の者が、
どのような労務管理体制の下、存在しているのか等も
説明する必要があるかと思いますので、
そういう意味では望ましいことではないと考えます。
(少なくとも、見直しを求められる可能性が高い)
場合によっては、労働基準法違反の疑いなどを
かけられる場合もありえますね。
これらはA社から見たリスクということにはなります。
よろしくお願い申し上げます。