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受益者連続型信託契約の破棄

永吉先生

いつも大変お世話になっております。

(前提条件)
祖母からの相談を受け、下記受益者連続型信託(家族信託)の契約を考えています。
祖母は自身の財産を娘の配偶者に渡したくないと思っています。

祖母

娘=配偶者

(質問)
祖母が亡くなった後に、娘と孫が当該信託契約を破棄することは可能でしょうか。

お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問
>(前提条件)
>祖母からの相談を受け、下記受益者連続型信託(家族信託)の契約を考えています。
>祖母は自身の財産を娘の配偶者に渡したくないと思っています。
>祖母
>↓
>娘=配偶者
>↓
>孫
>(質問)
>祖母が亡くなった後に、娘と孫が当該信託契約を破棄することは可能でしょうか。

2 回答

(1)受益権の放棄について

まず、信託法99条により受益者は受益権を放棄するという
ことが可能です。すべての受益者が放棄した場合でも、
信託契約が無効となるわけではなく、信託は清算手続きに
入ります。そういう意味では信託契約の破棄自体はできません。

(なお、この放棄は、受託者が受益者となっている場合には、
できません。なお、今回は、受託者兼100%受益者が
同一の場合は1年で信託契約が終了して清算に入ってしまいます。)

(2)清算手続きをするとどうなるか

清算手続きになると信託契約で定めた
「帰属権利者」または「残余財産受益者」に
財産を帰属させることとなります。

ただし、これらも放棄することが可能(信託法182条)で、
娘や孫を帰属権利者または残余財産受益者にした場合、
それすら放棄した場合には、

「信託行為に委託者又はその相続人その他の一般承継人を
帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなす。」

とされており、祖母の相続人に財産が帰属することとなります。
つまりは、財産の帰属は普通に相続が起こった場合と同じになります。

(3)事実上不可能になる方法

上記のとおり、理論上は完全には、防げませんが、

例えば、受益者が放棄した場合には、第三者に受益権がうつる
または、帰属権利者等を第三者にしておくと、
娘や孫も知らない人に財産がいってしまうならという
ことで、放棄は事実上しないということは可能かと思います。

ただし、本当に放棄したら第三者に移ってしまうこととなります。

その他、個別事情によってはより希望がかなう設計が
可能かもしれませんが、受託者は誰か(及びその関係性)や
対象財産が何か等より詳細なコンサルティング及び設計が必要になると思います。

信託は、自由度が高い分、一般論として申し上げれるのは
上述程度かと存じます。

死後のことなので、配偶者に財産が渡る理論上の可能性を
完全に0にすることは難しいですが、配偶者に財産がわたる可能性が
低くなるものという認識が良いかと存じます。

例えば、信託財産が収益不動産で、収益が受益者に
分配されるとして、その分配された金銭は娘の相続財産
になり得ますし、そのお金を娘が配偶者のために使うのは
拘束できないからです。

状況によりますが、個人的には、死後のことは完全にコントロール
することはできないので、かなりの特殊な事情が
ない限り、コスト面等踏まえると、あまりお勧めできるわけではないです。

例えば、相続により娘に財産が帰属して、娘の相続時に
配偶者にいってしまうのが嫌だということでしたら、
直接孫に遺贈するという方法も考えても良いのかも
しれません。もちろん税額等その他の事情も加味した上での
検討になるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。