いつもお世話になります。
準確定申告における相続発生日後に支払われた公的年金(未支給年金?)と公的年金等の源泉徴収票の取扱いについて、ご教示いただければ幸いです。
1.事実関係
(1)相続発生日:令和2年11月25日
(2)最後の公的年金の振込日:令和2年12月15日(令和2年10月分及び11月分)
(3)受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」:
年金受給者死亡届の提出が遅れたため、令和2年12月末において被相続人が生存していた場合の金額が記載されている(公的年金の支払金額、源泉徴収税額及び社会保険料)
(4)令和2年分公的年金等の源泉徴収票(準確定申告用):
公的年金の支払者(国家公務員共済組合連合会)へ令和2年分公的年金等の源泉徴収票(準確定申告用)の発行を依頼したところ、相続発生日が11月25日のため、既に送付した「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票((3))」を使用するように言われたとのこと
2.質問事項
(1)未支給年金の取扱いについて
相続発生日後に振り込まれた公的年金は、いわゆる未支給年金となるため、被相続人の準確定申告において雑所得には含まれず、受取人の一時所得となるという理解で正しいか?
(2)準確定申告における雑所得の計算について
受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」には未支給年金が含まれているため、準確定申告においては、受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」に記載されている数値をそのまま用いずに、納税者自身で公的年金等の額、社会保険料の額(過誤納金の還付額を控除する?)を別途計算する必要があるのか?
それとも、受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」に記載されている数値をそのまま準確定申告書に転記することになるのか?
(3)令和2年分公的年金等の源泉徴収票(準確定申告用)の交付義務について
「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている数値を準確定申告に用いることができなければ、「公的年金等の源泉徴収票」の記載内容自体が正しくないと言えるため、納税者(相続人)は、公的年金等の支払者に対して令和2年分公的年金等の源泉徴収票(準確定申告用)を発行を要求することができるのか?
それとも、公的年金等の支払者は、未支給年金を含めた令和2年分公的年金等の源泉徴収票を発行すれば、所得税法上の義務は満たしており、準確定申告用の公的年金等の源泉徴収票を発行するという納税者からの要求を拒否することができるのか?
今回の確定申告では同じようなケースがもう一件あり、こちらも公的年金等の支払者(年金機構)から準確定申告用の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」は別途発行しないと言われました。
もう一件は相続発生日が12月20日であったため、公的年金等の源泉徴収票に未支給年金が計上されることはなかったのですが、社会保険料(後期高齢者医療保険料や介護保険料)の金額には異動が生じるはずなので、腑に落ちていません。
どうぞよろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜公的年金の未支給年金請求権の取り扱い
>(1)未支給年金の取扱いについて
>相続発生日後に振り込まれた公的年金は、いわゆる未支給年金となるため、
>被相続人の準確定申告において雑所得には含まれず、受取人の一時所得と
>なるという理解で正しいか?
はい。現状の最高裁を前提にすると、先生のご理解で正しいです。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/09.htm
上記のU R Lは、最高裁平成7年11月7日が、
国民年金法の未支給年金請求権の相続性を否定し、
遺族(受取人)の固有財産であるとしたことから、
このように解されています。
この最高裁は、
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国民年金法19条1項は、「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」
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と定めていることを根拠としていますが、
ご質問の国家公務員共済組合等の根拠法である
国家公務員共済組合法も、第44条に同趣旨の規定が
ありますので、判例の射程の範囲内でしょう。
2 ご質問②〜準確定申告について
>(2)準確定申告における雑所得の計算について
>受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」には未支給年金が含まれ
>ているため、準確定申告においては、
>受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」に記載されている数値
>をそのまま用いずに、納税者自身で公的年金等の額、社会保険料の額
>(過誤納金の還付額を控除する?)を別途計算する必要があるのか?
>それとも、受領済の「令和2年分 公的年金等の源泉徴収票」に記載され
>ている数値をそのまま準確定申告書に転記することになるのか?
上記最高裁を前提にすると、厳密には先生のおっしゃる
とおり、別途計算する必要があるということになるでしょう。
3 ご質問③〜公的年金等の源泉徴収票(準確定申告用)の交付義務について
>「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている数値を準確定申告に用いる
>ことができなければ、「公的年金等の源泉徴収票」の記載内容自体が正し
>くないと言えるため、納税者(相続人)は、公的年金等の支払者に対して
>令和2年分公的年金等の源泉徴収票(準確定申告用)を発行を要求すること
>ができるのか?
>それとも、公的年金等の支払者は、未支給年金を含めた令和2年分公的
>年金等の源泉徴収票を発行すれば、所得税法上の義務は満たしており、
>準確定申告用の公的年金等の源泉徴収票を発行するという納税者からの
>要求を拒否することができるのか?
これは非常に悩ましい問題ですね。
まず、源泉徴収票の交付義務自体は当然あります(所得税法226条3項)。
今回の問題は、
>年金受給者死亡届の提出が遅れた
という被徴収者の側の事情で、
通常の「公的年金等の源泉徴収票」を既に発行しているにも
かかわらず、それと内容の矛盾する準確定申告用の源泉徴収票を発行する
義務があるのかという点ですね。
正直なところ、これが組合側が源泉徴収をやり直すという問題なのか、
被徴収者と国側で調整する問題なのかというところですが、
どちらにも一理あり、裁判等になると、
おそらく源泉徴収制度の趣旨などからの枠の広い判断
になると思われるため、少々見込みがつかない(やっていないと分からない)
というところです。
ご質問いただいたのにすみません。
所得税法226条3項は、「支払の確定した公的年金等」と
されており、この確定について、誰に帰属するかまで問題と
なるのか、支払さえ確定すれば良いのか等いろいろと根拠に
なる点はないか検討しましたが、どちらという決定的な根拠
となるものは見つけることができませんでした。
対応として、支払者に対して、相続人に未支給年金請求権が発生
しており、記載に誤りがあることを指摘した上で、再発行を
しっかり理由をつけて、請求してみるということもありかと思います。
担当者レベルの場合、記載が異なってくることを
理解してない場合もありますので。
よろしくお願い申し上げます。