お忙しいところ恐縮ですが下記、ご教示いただけますでしょうか。
H27年3月に旦那様の一次相続、R3年1月に奥様の2次相続が発生した事例についてです。
今回、2次相続である奥様の相続税申告について、請負っているのですが、
財産が1億位以上あり、そのすべての財産は1次相続で相続した財産だそうです。
そのため、1次相続の相続税申告についてお聞きしたところ、
申告義務があると知らなかったとのことで申告していないそうです。
上記の相続日付の通り、現状は時効である5年は経過している状況です。
1次相続では同居していた長男が不動産(1700万円程度)のみ相続、
その他の全ての当時の財産1億2千万円程度は全て配偶者が相続したそうです。
1次相続の相続税申告義務があったことは最近知ったとのことです。
上記の状況で質問したいことは下記になります。
①現時点では1次相続税の納税義務が免除されたとして、申告できない(税務署が受け付けない)とういことになるのでしょうか?
②上記①の前提で1次相続は申告しないで、今回の2次相続についてのみ申告書を提出することで、
1次相続についての納税義務があることを知っていた(悪意)と判断され、
税務調査で重加算等とられる可能性はあると考えますでしょうか?
その他の情報としては、今回2次相続がおきた奥様に過去収入はなく、
1次相続である旦那様からの相続財産で今回の2次相続の財産が
構成されていることは通帳をみると一目でわかります。
そのため、今回2次相続の申告をすることで、1次相続の申告義務を知っていたと取られる可能性について
どう対処すべきかについて、ご教示頂けたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜国税徴収権の時効について
>①現時点では1次相続税の納税義務が免除されたとして、
>申告できない(税務署が受け付けない)とういことになるのでしょうか?
そうですね。徴収権の時効は、
絶対的効力を有することを理由として、
時効期間の経過により、期限後申告や修正申告は
できないものと一般的には解されています(DHCコンメンタール国税通則法3849頁等)。
裁判例も概ね同様の見解を採用しています(名古屋高裁平成 19 年 9 月 12 日判決等)。
なお、以下の拙著にも記載があります。
「民事・税務上の「時効」解釈と実務」
申告書を提出して、納付すれば
法的には誤納となります。
ただし、先生のご心配されている通り、
「偽りその他不正の行為」があったとされる
場合には、法定納期限の翌日から2年間は、
時効期間が進行しないとされますので、
そのように評価される場合には、修正申告が
できるということとなります(裏を返せば
しないと加算税が生じる)。
2 ご質問②〜1次相続の加算税等について
>上記①の前提で1次相続は申告しないで、今回の2次相続についてのみ申告書を
>提出することで、1次相続についての納税義務があることを知っていた(悪意)と
>判断され、
>税務調査で重加算等とられる可能性はあると考えますでしょうか?
>今回2次相続がおきた奥様に過去収入はなく、
>1次相続である旦那様からの相続財産で今回の2次相続の財産が
>構成されていることは通帳をみると一目でわかります。
>そのため、今回2次相続の申告をすることで、1次相続の申告義務を知っていたと
>取られる可能性についてどう対処すべきかについて、ご教示頂けたらと思います。
加算税等の賦課決定に基づく徴収権の時効も、
本税に依存しますので、つまるところ、
そもそも、「偽りその他不正の行為」がないのであれば、
重加算税等の賦課決定の問題とはなりません。
(なお、釈迦に説法ですが、「偽りその他不正の行為」
と重加算税の「隠蔽または仮装」は別の要件です。)
「偽りその他不正の行為」ですが、
いただいた事情を前提とすると、単に無申告でいたら
何も指摘されることなくそのまま期間が経過した
という事案であり、証明責任の観点も
踏まえても、「偽りその他不正の行為」
があったとは評価できるものではないとは思います。
ご不安であれば、例えば、誤納となるとしても、
一旦、1次相続の申告及び納付をした上で、
2次相続の申告及び納付。
1次相続の誤納として還付請求という方法で、
仮に「偽りその他不正の行為」があったとしても、
修正申告をしているので、加算税対象となる
リスクを軽減する方法(一応以下のとおり、国の
判断が入ったという意味で)も一応は想定できます。
この方法ですと、
国が還付に応じるか否かの場面で、
「偽りその他不正の行為」があったのか等が
争いとなります(国が争えばですが)。
なお、釈迦に説法で恐縮でうsが、
注意点としては、過去の事実については
特に本件はどうしようもない部分が残ります
ので、2次相続の申告の際に、以下の事情から
何か財産を調整する等はやめた方が良いでしょう。
(問題が大きくなる可能性があります。)
>その他の情報としては、今回2次相続がおきた奥様に過去収入はなく、
>1次相続である旦那様からの相続財産で今回の2次相続の財産が
>構成されていることは通帳をみると一目でわかります。
>そのため、今回2次相続の申告をすることで、1次相続の申告義務を知っていたと
>取られる可能性についてどう対処すべきかについて、ご教示頂けたらと思います。
よろしくお願い申し上げます。