会社法

会計限定監査役とみなし取締役会決議

永吉先生

お世話になっております。

1.業務の範囲が会計に関するものに限定されている監査役(会社法389条。「会計限定監査役」)は、会社法第370条のみなし取締役会決議において、異議を述べる義務及び権利はないため、会計限定監査役にみなし取締役会の決議の目的である事項について提案内容を通知する必要はないという理解で正しいでしょうか?

2.上記理解が正しいという場合ですが、当該理解の法的根拠は、「会社法389条7項により383条の適用がないことから、みなし取締役会決議においても会計限定監査役の関与は不要のため」ということになりますでしょうか?

3.上記2と同様の理由から、会計限定監査役については、会社法368条の取締役会の招集通知及び372条の取締役会に報告すべき事項の通知をする必要はないという理解でよろしいでしょうか?

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①
>1.業務の範囲が会計に関するものに限定されている監査役(会社法389条。
>「会計限定監査役」)は、
>会社法第370条のみなし取締役会決議において、異議を述べる義務及び権利はな
>いため、会計限定監査役にみなし取締役会の決議の目的である事項について
>提案内容を通知する必要はないという理解で正しいでしょうか?

会計限定監査役は立法時における政治的な問題もあり、
整備されたもので、会社法の条文の作り込みは
いまいちなところが多いですが、
結論としては、その理解で問題ないでしょう。

2 ご質問②
>2.上記理解が正しいという場合ですが、当該理解の法的根拠は、
>「会社法389条7項により383条の適用がないことから、みなし取締役会決議において>も会計限定監査役の関与は不要のため」ということになりますでしょうか?

根拠ですが、
会社法上は直接の規定はありません。
先生が挙げられている条文は、出席義務の
話であり、「直接的には」会社法370条の書面決議の
について根拠となるものではありません。

根拠は会社法370条の解釈となるかと存じます。

監査役に提案内容の通知が求めらるのは、
会社法370条括弧書きの異議を述べる機会を与える必要
あるためと解されています。

会計限定監査役のみがいる会社は、
「監査役設置会社」(会社法2条9号)には当たらない
ので、異議を述べる機会を与えられる、
「監査役設置会社」の監査役(会社法370条の括弧書き)
ではないため、提案内容を(会計限定)監査役に提案内容を
通知する必要がありません。

一方で、通常の監査役もいる等の監査役設置会社においては、
会計限定監査役も「監査役」ではある以上、形式的には
会社法370条の括弧書きには当たるということに
なってしまうかと思います。

ただし、先生のおっしゃる通り、
そもそも取締役会へ参加する権利・義務のない会計限定監査役
に異議を求める実質的意味はないことから、
会計限定監査役には、370条の提案内容を通知をしなくても良い
という実質解釈により不要と解されているものと思います。

あくまでも不要であるという直接の条文上の根拠はありませんが。

3 ご質問③
>3.上記2と同様の理由から、会計限定監査役については、
>会社法368条の取締役会の招集通知及び
>372条の取締役会に報告すべき事項の通知をする必要はないという理解で
>よろしいでしょうか?

そうですね。こちらも直接の条文はありませんが、
上記と同様その理解で問題ありません。