税理士法 税理士賠償責任

顧問先の代表者が認知症になった場合

永吉先生

税理士の●●です。

表題の件につきご教示いただけますでしょうか。

前提
・顧問先(損害保険の代理店、法人)の代表者が認知症(と思われれる)で、意思疎通が困難。
・ご子息はいるが後継者ではなく、会社の業務にも携わっていない。
・従業員はおらず、実際の業務は外交員さんが行っている。
・年内に代理店業務を他社に移すので、外交員さんから2021年1月で顧問契約終了と言われている。

質問
・休眠ないし、解散清算を案内したのですが費用がかかるため、外交員さんから行いたくないと言われております。
このまま顧問契約終了して法律上は問題ありませんでしょうか。
・その他気を付ける事項があればアドバイスいただければと思います。

以上、宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>・年内に代理店業務を他社に移すので、外交員さんから2021年1月で顧問契約終了と言
>われている。
>・休眠ないし、解散清算を案内したのですが費用がかかるため、外交員さんから行いたくな
>いと言われております。
>このまま顧問契約終了して法律上は問題ありませんでしょうか。
>・その他気を付ける事項があればアドバイスいただければと思います。

2 回答

そうですね。外交員さんは、法人の権限を何も
有していませんし、法律を厳密に解釈すると、
代表者の方が、意思能力を有していないとすると
合意解約も、一方的な解約の通知も無効である(改正民法98条の2参照)
ということになります。

一方で、意思能力がなく意思疎通が困難となると、結局のところ
業務遂行ができないということで、履行不能による義務の消滅
という解釈もありえます。

この辺りは、実務上は認知症の程度等にもよってくるので、
厳密に判断できるわけではありません。

完全に有効な解約をしたいということですと、
代表者さんに成年後見人を選任してもらい
取締役の資格を喪失させた上で、
会社に仮取締役の選任の申立てを裁判所に行い、
選任された仮取締役と合意解除するか、仮取締役に解約通知を
送るという現実的ではない方法になってしまいます。
(あとは契約書に自動更新条項がなければ、期間満了で終了
という方法もあります。)

ただ、実務上は、このような状況であれば、
合意解約書を締結する(会社印は押してもらう)か、
会社に2021年1月で契約終了する旨の一方的な解約の通知を送って
(渡して)おけば問題ないと思います。

税理士の先生としても、代表者の方がそのような状態であれば、
なんともできないので、それで責任を問われることなどはないでしょう。

気になるようであれば、合意解約書または解約通知に、
「休眠ないし清算の旨を提案したが行わないということですので」
等の文言も入れておいて良いかとは思います。

よろしくお願い申し上げます。