お世話になります。
●●です。
自筆証書遺言に記載されている財産の判断についてご教示ください。
≪事例≫
・遺言者Aは平成26年4月に自筆証書遺言を作成した。
・Aの法定相続人は長女Bと次女Cの二人。
・長女Bは遠方に居住しており、次女CはAの近くに居住していた。
・自筆証書遺言作成後、Aの口座の一部が徐々に解約されて現金で引き
出され、その現金を次女Cが保管している状態となっていた。
・Aが今年死亡。
・自筆証書遺言の検認手続きが行われ遺言書が開示された。
・遺言書の内容は次の通り(記載されている表現のまま)
第1条
A名義の預貯金全額を次女Cが相続する
第2条
A名義の土地建物(所在***)は長女Bと次女Cで2分の1ずつ
相続する
第3条
その他残余の財産も長女Bと次女Cで2分の1ずつ相続する
≪相談≫
①Aの生前に解約されたり引き出された預貯金を現金として次女Cが保管
していることは長女Bも知っています。そして、次女Cからは「Aから
贈与されたもの」という発言は出ていないとのことです。
今後、遺言に従ってAの財産を分割する場合、Cが保管している現金は
第3条の「その他残余の財産」に該当すると思われますが、その考えで
宜しいでしょうか。
②長女Bは、遺言書作成日の頃のAははっきりとした意思表示ができる状
態ではなく、次女Cが書いた原稿をAに清書させたものだろうと考えて
います。
仮に、Aの預貯金がAの認識がないところで次女Cが引き出していた場
合には、不当利得になるのではないかと考えますが、その場合には相続
財産と認識して相続税の申告を行う以外に、何かやるべきことはあるで
しょうか。
なお、この場合も遺言書においては第3条の「その他残余の財産」で考え
れば宜しいでしょうか。
③最悪のケースとして、長女Bが遺言書の無効を主張するとなった場合、
長女Bは具体的にどのような準備や手続きが必要になるでしょうか。
以上、どうぞ宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜Cが保管している現金
>Aの生前に解約されたり引き出された預貯金を現金として次女Cが保管
>していることは長女Bも知っています。そして、次女Cからは「Aから
>贈与されたもの」という発言は出ていないとのことです。
>今後、遺言に従ってAの財産を分割する場合、Cが保管している現金は
>第3条の「その他残余の財産」に該当すると思われますが、その考えで
>宜しいでしょうか。
そうですね。不当利得と整理するか、準委任に基づく財産管理として
整理するかは別として、形式的に考えると、
AのCに対する金銭の返還請求権が、相続財産ということに
なりますので、生前贈与がない前提であれば、
そのような解釈されることになる可能性が極めて高いです。
ただ、争いになった場合、最終的には遺言の合理的意思解釈の問題として、
>第1条
>A名義の預貯金全額を次女Cが相続する
の趣旨が、預貯金を解約した現金を含む趣旨という
主張はあり得るところかとは思います。
このあたりは、具体的な個別事情や遺言作成の意図や経緯
により、認定することになりますが、
いただいた情報のみからすると、先生のお考えとなる可能性が
高いと存じます。
2 ご質問②
>長女Bは、遺言書作成日の頃のAははっきりとした意思表示ができる状
>態ではなく、次女Cが書いた原稿をAに清書させたものだろうと考えて
>います。
>仮に、Aの預貯金がAの認識がないところで次女Cが引き出していた場
>合には、不当利得になるのではないかと考えますが、その場合には相続
>財産と認識して相続税の申告を行う以外に、何かやるべきことはあるで
>しょうか。
>なお、この場合も遺言書においては第3条の「その他残余の財産」で考え
>れば宜しいでしょうか。
仮に、意思能力がないということを前提にした場合、
遺言全体が無効となります。
ただし、AのCに対する不当利得返還請求という金銭債権のみに
着目すると、遺言が無効とだとしても、相続分で、当然分割されるため、
1/2の金銭について返還請求できるという結論自体は遺言を前提としても、
異ならないかと思います。
(なお、この場合、預貯金は1/2ずつの共有財産として認識することとなります。)
>財産と認識して相続税の申告を行う以外に、何かやるべきことはあるで
>しょうか。
ご質問の趣旨について的を得ていないかもしれませんが、
金銭の回収をするというためには、BはCにCが管理している金銭の1/2について
返還請求をしていくこととなるかと思います。
また、遺言無効を前提にするのであれば、預貯金についても、
遺産分割協議を求めることとなるでしょう。
>なお、この場合も遺言書においては第3条の「その他残余の財産」で考え
>れば宜しいでしょうか。
一旦は、遺言が有効という前提として考えるのであれば、ご質問①と同様に解して
いくこととなります。
3 ご質問③〜Bが無効を主張する場合
>最悪のケースとして、長女Bが遺言書の無効を主張するとなった場合、
>長女Bは具体的にどのような準備や手続きが必要になるでしょうか。
Cが遺言無効を争う場合には、
Bとしては、遺言無効の確認やそれを前提とした金銭請求及び遺産分割請求について
調停・訴訟手続きに向かって準備をすることとなります。
実際の訴訟手続きを見越すと意思能力がないことが認め
られるためには、意思能力がなかったことを主張するB
側が立証しなければなりません。
現状でやれることとすると、
それについての医師の診断書やカルテ等客観的に
意思能力のないことを基礎付ける資料を集めることが
必要かと思います。
よろしくお願い申し上げます。