いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。
知人の税理士が独立することになり、話題に
なったのですが、税理士事務所から独立する場合の
顧問先の契約変更について質問をさせて頂きます。
(前提)
○ 甲税理士事務所(代表甲)にて税理士Aは15年勤務(役職は部長)
○ 令和2年9月末、税理士Aは甲税理士事務所を退所し、独立する
○ 税理士Aは退職するまでに、Aが担当していたクライアントと
内々で話し合い、Aが独立した時に甲税理士事務所と契約を解除し、
A税理士事務所と顧問契約を締結する予定
○ 甲税理士事務所とクライアントの顧問契約では、契約解除時の
条項はなく、なにも規定されていません。
※一番最初の契約時から1年間の契約期間が満了し、
双方にて継続の意思があれば継続するという文言だけが入っており、
何年継続するなどの記載はありません。
○ 甲税理士事務所と税理士Aとの間においても、退職後何年間は
担当先への営業や顧問契約の変更を中止するなどの取り決めも
ありません。
(質問)
○ 一般的に税理士が独立したときに顧問先を引っ張っていくことが
あるかと思いますが、前提のような場合においては、顧問先の判断、
そして、相互の自由契約となり、特にAが甲から訴えられたり、損害を
請求されることはないと思っていますが、注意点やリスクはございます
でしょうか。
○ 仮に退職後の営業や顧問契約のAへの変更を制限するなど、甲とAにて合意が
あった場合、クライアントからの要望があっても契約をすると損害賠償の
論点は発生してしまうのでしょうか。
宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>一般的に税理士が独立したときに顧問先を引っ張っていくことが
>あるかと思いますが、前提のような場合においては、顧問先の判断、
>そして、相互の自由契約となり、特にAが甲から訴えられたり、損害を
>請求されることはないと思っていますが、注意点やリスクはございます
>でしょうか
上記前提において、税理士Aが独立した「後」に、
お客様が、甲税理士事務所か税理士Aを選ぶかは、
お客様の自由ということになります。
>税理士Aは退職するまでに、Aが担当していたクライアントと
>内々で話し合い、Aが独立した時に甲税理士事務所と契約を解除し、
>A税理士事務所と顧問契約を締結する予定
しかし、もちろん、どの程度の話をするのかというところは
あるとは思いますが、
退職「前」に内々に話し合いをして、顧問契約を
自身に移そうと働きかける行為自体は、
労働契約上の義務違反行為に該当すると思います。
(雇用主に損害を与える行為になりますので。)
実際に、損害賠償が認められるかというと、
証拠があるかなどの判断にはなるので、何とも言えない
ところになりますが、
その行為自体は、違法性を有するものですので、
おすすめはできません。
2 ご質問②
>仮に退職後の営業や顧問契約のAへの変更を制限するなど、甲とAにて合意が
>あった場合、クライアントからの要望があっても契約をすると損害賠償の
>論点は発生してしまうのでしょうか。
そうですね。規定の仕方で有効・無効はありますが、
例えば、既存のお客様と契約することを1年間禁止する等の内容ですと、
契約違反行為にはなると思います。
それと損害賠償が認められるかという点は、契約に違約金の
定めがあればそれに従うことになるでしょうし、
ない場合には、実際にAがいなくなっても、甲事務所との
契約が継続していたのか等の行為と損害の因果関係があるのか
なども議論になります。
なお、それとは別に甲側が、Aとクライアントが契約をしたことが
証明できるのかという点が残るのはご質問①と同様です。
よろしくお願い申し上げます。