お世話になります。下記についてお教え下さい。
昨年12月に相続が発生し、法定相続人が2名(子、兄弟)で本年3月24日に準確
定申告書を 提出、確定申告書付表には未分割のため、法定相続分を記入して納税も完了。
実際は相続人代表 として届け出た兄が支払っています。
最近になって、弟が相続放棄の熟慮期間の延長を申請して
おり(コロナの影響で)相続放棄をしたいと申し出てきた。
確定申告提出時には、未分割のため上記の処理をしたが、相続放棄の申立、受理後に
準確定申告の記載にあることで、債権者等(現時点ではおりませんが)が請求出来る可能性は
ありますか。
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>最近になって、弟が相続放棄の熟慮期間の延長を申請して
>おり(コロナの影響で)相続放棄をしたいと申し出てきた。
>確定申告提出時には、未分割のため上記の処理をしたが、相続放棄の申立、受理後に
>準確定申告の記載にあることで、債権者等(現時点ではおりませんが)が請求出来る可能性>はありますか。
2 回答
>法定相続人が2名(子、兄弟)
前提として、子が法定相続人の場合には、兄弟は
法定相続人にはなりませんが、
子である2名が兄弟という趣旨かと思いましたので、
その前提で回答します。
今回は、弟が相続放棄の熟慮期間の延長申請をしている
ということですが、
準確定申告行為が法定単純承認事由である
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分した」(民法921条1号)
に該当するかという問題になります。
準確定申告は、相続人自身の納税義務を確定
させる行為ではなく、遺産に含まれる被相続人の納税義務を
確定させる行為であることから、「相続財産~処分」として
法定単純承認になり、相続放棄等はできなくなる
(家庭で受理されていても無効)という見解が書籍等には記載されています。
ただ、論理的にはそのとおりなのですが、
実務上、準確定申告を理由に相続放棄を否定して
債権者から請求を受けているというものはみた
ことがありません。
また、論理的にも、
法定単純承認制度の趣旨は、
究極的には債権者の保護(既に相続財産を処分した者が
債務を免れることの防止)にあるところ、
準確定申告による納税自体は、いずれにしろ
必要となるものであることからすると、
民法921条1号の例外である「保存行為」に該当する
という判断もあり得るところではないかと、
個人的には思います。
特に今回は、兄が支払いをしているということからも、
このような判断を補強する事情にもなると思われます。
>債権者等(現時点ではおりませんが)が請求出来る可能性はあり
>ますか。
可能性自体は否定できませんが、
実務上問題になる可能性が低いという点と別の解釈が
あり得るというところになります。
よろしくお願い申し上げます