所得税

所得税の生計一の判断について

永吉先生
お世話になっております。

商店を営む個人事業者です。
申告名義は父ですが、実態は別居の息子夫婦(店舗兼自宅居住)が経営しています。
(おそらく、父親隠居後もそのままの内容で申告を続けているものと思います。)
現金出納帳に息子夫婦には給与(申告上は青色専従者給与)の支払い
及び父には生活費として事業主勘定に記帳があります。

今後、申告単位を息子に移す予定です。
現状及び申告単位を変更したあとについて生計一として取り扱うことは問題ないで
しょうか。

よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>今後、申告単位を息子に移す予定です。
>現状及び申告単位を変更したあとについて生計一として取り扱うことは問題ないで
>しょうか。

2 回答

(1)現状について
現状について
>申告名義は父ですが、実態は別居の息子夫婦(店舗兼自宅居住)が経営しています。
>(おそらく、父親隠居後もそのままの内容で申告を続けているものと思います。)

ということで、

対価の支払者との契約が、誰(父親か息子か)
とのものだったかによるところですが、

個人事業者が自己の事業の
実務を途中から部下等に任せて、
実務を行わないということは禁止される
ものではないので、現状に問題があるとは
なかなか言えないのではないかと思います。

仮に生計を一ではないとしても、
普通の経費になるので、特段問題が
ないように思います。

なお、今回の事業収入の帰属主体を
変更するという関係から(3)の対応は
しておいた方が良いと思います。

(2)申告単位の変更後について

申告単位を変更後について、
父が息子と「生計を一にする」親族か否かは、
一般的には、
同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていることをいいます。
要は、親族間に財布を共通とする関係があるかどうかということです。

通達上、
親族同士が同一の家屋に居住することが不可欠なものではなく、
別居している場合でも、
①勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合や
②親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、
「生計を一にする」親族であるとされています(所得税法基本通達2-47)。

ですので、申告単位を息子に変更後
父が息子から生活費をもらい続けるということですと
「生計を一にする」親族となるでしょう。

なお、ご質問のご趣旨が、
申告単位変更後、所得税法57条により
息子の青色専従者給与としたいというご趣旨ですと、

給与が実際に労務の対価であること、
専従者の実体があること、給与の金額が妥当であることの
青色事業専従者としての実質条件を備える必要がありますので、
これまで通り、何もしないということですと青色専従者給与として
扱うことはできないでしょう。

(3)その他

仮に、申告単位を変更するとすると
どの時点から個人事業主(売上の帰属主体が変わるのか)
なのかが明確ではありませんので、

法的には事業譲渡になるのでしょうから、
この辺りの父親と息子の契約書等を作成
しておいた方が良いかと思います。
(実態に一切変更がなく、突然変更したということで、
変更前の状態も、本来は息子の事業収入であり、
父親が得ていた生活費は、所得税法56条で、
必要経費とならないとされるおそれを考えると
この点は明確にしておいた方が良いでしょう。)

つまり、(1)との関係で、
明確な合意があったため、事業収入主体が
変わったとするためです。

よろしくお願い申し上げます。