不動産 民法

住宅メーカーの法的責任について

永吉先生

お世話になっております。

住宅展示場にもよく出ている某住宅メーカーの営業マンとの値引の
約束があったにも関わらず、その営業マンは逃げてしまって連絡が取れず
会社側も個人間で勝手にしたことだからと対応に応じないのですが、

このような場合に会社としての責任を追及して、値引に応じさせることは
法的に可能でしょうか
(打合せ記録や 契約書など書類はあります)

経緯を本人の原文のまま下記に記載します

住宅会社で、マイホームを契約して、建ててもらいました。

建築工事請負金額 32100000円

追加変更工事 1131000円

契約した会社の営業マンと何度も打合せして記録もありますが、
営業値引きで、200万位引く。
キャンペーンサービスのキッチンもサービスになっておらず、
引き渡し5月31日に先に振込して、後で、値引き分は、返金するとの事,
工事も完全に終わってないのに引き渡し日に全額振込したのに。

最後に280万円を返金すると言っていたのに営業マンは、逃げちゃって
連絡取れない。住宅会社は、営業マンの個人の勝手なやり取りで、会社は、知らない。

返金できないとの事。第三者を交えてくれとの事。

住宅会社の社員が、住宅会社の看板背負って営業して、契約してるのに
営業マンが、勝手にやっていることと会社は、知らないは、ひどい。
→ここまで

以上いかがなものでしょうか?

よろしくお願いいたします

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>住宅展示場にもよく出ている某住宅メーカーの営業マンとの値引の
>約束があったにも関わらず、その営業マンは逃げてしまって連絡が取れず
>会社側も個人間で勝手にしたことだからと対応に応じないのですが、

>このような場合に会社としての責任を追及して、値引に応じさせることは
>法的に可能でしょうか
>(打合せ記録や 契約書など書類はあります)

2 回答
(1)回答の結論

>契約書など書類はあります
とありますが、280万円の値引きについての記載はない、
ということだと思いますので、その前提で回答します。
(仮に記載があれば、契約書に基づいて請求をしてください。)

結論としては、

>打合せ記録

等、その他の証拠でどのようなものがあるか
により証拠として十分かどうか
という問題もありますが、

実際に約束があったことを証明できれば、
請求できる可能性が高いでしょう。

(2)回答の理由

280万円の請求の根拠を大きく分けると

①契約に基づく責任追及
②不法行為に基づく損害賠償請求
の2つがあり得ます。

ア ①契約上に基づく責任追及

契約上の責任として、会社に対して280万円の返金を求めるには、
会社との間で、280万円を返金する(工事代金から値引きする)旨の
合意が成立していることが必要です。

そして、会社との間での合意の成立を主張するには、
営業マンに、会社を代理して契約を締結する(値引きの合意をする)
代理権限が与えられていたことが必要となります。

営業マンの会社における立場にもよるところですが、
一般には、いち営業マンは、通常は営業(勧誘)をするのみで、
最終的な契約の権限まで与えられているとされるケースは
少ないと思います。

また、代理権限は与えられていなくても、
権限があると信じた場合に保護される
「表見代理」という制度もあり、
(今回でいえば、民法109条の適用が問題になるでしょう)

その場合には、会社が代理権限を与えているように
誤解させる状況にあったかや

そのように誤解したことがやむをえないという
状況にあったといえる必要があります。

このような制度における保護を
受けられるかどうかは、具体的な事情や
こちらに残っている資料をお伺いしてみないと
分からない部分もありますが、
一般的には、なかなか難しいと思われます。

イ ②不法行為に基づく損害賠償請求

もっとも、代理権限がなく、
契約上の責任が問えないからといって、
会社が全く責任を負わなくてよいという
わけではありません。

従業員が行った行為により、取引相手に損害を与え、
従業員の行為が不法行為に該当する場合には、
会社も、同様にその責任を負うという制度があります。

具体的には、民法715条1項(使用者責任に基づく損害賠償請求)
により、返還の請求ができる可能性があります。

今回のケースでは、
打合せ記録やその他の証拠から、

営業マンが280万円を返金すると約束していたことが
どこまで立証できるかという問題は残り、

裁判までいった際には、最終的に責任が問えるかは
不確かなところがありますが、
この点が立証できるだけの資料があるならば、
責任追及が可能な事案かと思います。

使用者責任に基づく損害賠償では、
こちらにも多少の落ち度があるとされ、
過失に割合によって、一定程度減額される
ことが多いですが、

まずは、このような根拠を示して、
「従業員が勝手にやったことなので責任は負わない」という
論理は通用しないことを説明し、

返金するよう強く交渉することになると
思います。

なお、ご自身で行うことが難しいという
場合には、泣き寝入する事案でもないと
思いますので、

まずは、
弊社の無料相談からご利用いただく形でも
良いですし、

弁護士に依頼することも検討して良い事案だと
思います。

よろしくお願い申し上げます。